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GPSも道に迷う。

作者: 篠原 ひなた

 3年ぶりに携帯を変えてから1ヶ月が過ぎた。

 一気に多機能になった戸惑いからも、何とか抜けだせたように思う。娘のように着メロだのなんだのとのめりこむつもりはないが、アラームやナビ機能などを使いこなせるようになってからは何かと重宝している。

 ナビ機能と言えば、急性盲腸炎で緊急入院した同僚の代理として取引先の会社に向かわねばならない今日は、この携帯が頼りだ。何しろ公用車が出払っていて、電車で向かわねばならないのだから。

 予定では、最寄り駅から徒歩10分。

 念には念を、ということで1時間の猶予を見込んである。


 こんな機会でもなければ縁のない路線の駅を出て、空を見上げる。

 昨夜の雨の恩恵だろうか。黄砂やら排ガスやらのせいか薄い灰色だった昨日が嘘のように青い。

 これなら、今日のプレゼンもうまくいくかもしれない。根拠もない思い込みをそのままに、私は携帯を開いた。もうすっかり慣れたしぐさで、ナビ機能を起動する。

 取引先の電話番号を打ち込み、現在地から、を選択。


『300m先、右方向です』


 女性の合成音が私に言う。思ったより大きな音であったような気がして、きょろきょろ辺りを見回す。大丈夫だ、誰もこちらを見てはいない。

 その事実に安堵をおぼえながら、指示された通りに直進し、次の次の十字路を右に曲がる。

 同僚からあらかじめ聞いていた、目印のタコ形の時計を探してみたが、どうも見当たらない。しかし確認してみた携帯の地図の中では、ルートどおりだ。


『100m先、右方向です』


「うわっ」

 心構えを忘れていた私は、手元の携帯がいきなり喋りかけてきたことに驚いてもらしてしまった自分の声にさらに慌てるはめになった。イヤホンにでもしてくればよかったのだろうか。これでは完全に挙動不審だ。

 いちいち、『直進してください』だとか『50m先、右方向です』だとか言いつづける携帯に少々いらつきながら足を進める。細かすぎるのだ。いちいちそんなことを言われずともまっすぐ進むくらいのことができないはずはない。だが機械に言い返すとなれば、それこそ職務質問にあっても仕方がないほど挙動不審な者であることは確かだったので、私は言われるがまま小さな三叉路を右に曲がった。

 やはり目印は見当たらない。

 しかし、同僚を疑うわけではないが、私は内心で首をかしげずにはいられなかった。さきほどの、タコ形の時計にしてもそうだが、サメの形の看板などというものが日本に存在するのだろうか。いや、めったにないからこそ、目印になりうるのか。


『100m先、目的地付近です』

 

 やれやれ。やっとか。

 もはや疲れきったような気分で時計を見ると、歩きだしてから約15分が経過していた。

 早く着きすぎてしまったが、遅れるよりはいい。

 とりあえず場所だけ確認してから、いつものように喫茶店にでも入って時間をつぶそう。

 次からは、いつものように普通の地図を使って確認しよう、と肝に銘じながら私は歩く。こんな面倒な体験は、今回だけで十分だ。


『目的地です』


 やれやれ、と汗を拭いかけた私は、携帯の見づらい画面と、目の前の景色を見比べて愕然とした。

 目の前には、広大な墓地が広がっていたからだ。


『ルートから外れました』


 どういうことだ、と口に出しそうになった瞬間だった。

 唐突に、機械じみた女性の声が響いた。

 はじめて聞く言葉だ。 ルートとはどういうことだろう。私は一体、何の道から外れてしまったというのか。

 狐につままれた気分でナビを立ち上げ直す。

 もう一度、電話番号を打ち込んでOKボタンをぽち。

 さすが、最新機種。検索は直ぐに終わった。


 携帯がナビをする

『目的地まで、3キロです』



 はじめまして。もしくは、お久しぶりです。

 この物語を読もうと思って読んでくださったあなた、

 たまたま行き会って読んでくださったあなた、もう二度と読まないぞと思われたあなた。

 あなたがそこに居てくださることが嬉しいです。

 この物語を読んでくださってありがとうございます。


 ご感想・ご批評、誤字・脱字のご指摘などいただけると嬉しいです。

(明日への活力になります)

 どうぞよろしくお願いします。

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[一言] 初めまして、こんにちは! いきなりだめ押しで申し訳ないのですが、所々、補足不足に感じる部分や文章や文章のテンポ(?)がおかしいと思うところがありました。でもストーリーは…というよりオチですね…
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