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第十五話




 アリアス廃坑道、と呼ばれる場所がある。

 蒼汰の活動拠点、ルートゲインから馬車で三日ほど進んだ位置にあるアリアス山。その中腹ほどに、かつて資源豊かな坑道があった。

 アリアス坑道と呼ばれたその場所は、当時多量の金属資源を算出していた。また、多量の化石金属も採掘されることから、鉱夫達は燃料として化石金属を扱っていたとも記録に残っている。


 だが――そんな資源豊かな坑道は、ある日突然終わりを迎えた。

 人々が欲望のままに坑道を掘り進めた結果。凶悪な魔獣、魔物が生息する大空洞と、直接繋がってしまったのだ。

 結果、坑道は魔獣、魔物が闊歩する危険地帯へと変貌。当然、安定した大量採掘など不可能。廃坑となるまで時間は掛からなかった。


 坑道を通って魔獣、魔物が周辺に溢れたこともあり、当時栄えていた街も放棄。以来、アリアス山周辺は危険地帯として扱われ、冒険者すら滅多に近づかない場所となった。


 そして――そんなアリアス廃坑道を目指し、歩みを進める者が二人。

「――見えてきたな」

 一人は、日影蒼汰。そしてもう一人が。

「楽しみだね、ソータっ♪」

 やたらと機嫌の良さそうな、エリス・コニファーであった。

「……俺は不安で一杯だよ」

 呆れたような口調で、蒼汰はボヤく。


 この場にエリスが居る理由。それは単純に、化石金属の採集の為である。

 最初、蒼汰は一人でアリアス廃坑道へ向かうつもりであった。だが、エリスに指摘されて問題点が発覚。

 そう、蒼汰は化石金属を見たことが無い。故に、採集はもちろん発見すら困難であった。


 そこでエリスが一肌脱いだ。蒼汰の代わりに、現地で化石金属を見極め、採集すると言うのだ。

 当然、蒼汰は反対。アリアス廃坑道は危険度が高い地域である。かつて倒した魔族ほどでは無いだろうが、強敵がいるのは間違いない。

 さらに言えば、廃坑道には化石金属が無数に点在している。つまり、引火を警戒して蒼炎魔法の殆どが使えないのだ。

 このような状況下で。エリスを連れて探索するのは、リスクが大きすぎる。


 しかし一方で。エリスの言う通り、蒼汰だけでは採集がままならないのも事実。

 結果――折衷案として、危険を感じたら即撤退。僅かでも化石金属を採集出来たなら、それを見本に以降は蒼汰だけで向かう。

 と、いう話になったのだが。


「――はぁ。心配でしょうがない」

 それでも、エリスが危険に晒されることには変わりない。蒼汰の心は憂鬱なままだった。

「もう、ソータってば! そんな顔してちゃ、せっかくの二人旅が台無しだぞ~っ?」

 うりうり、と言いながら。エリスは蒼汰の脇腹を肘で突っつく。

「もっと安全な場所でなら、二人旅も素直に楽しめたんだけどな」

 ルートゲイン周辺の草原とか。と、蒼汰はボヤく。なお、その草原も一般人が街道以外に踏み入るのは禁止されている一応の危険地帯ではある。


 感覚のズレている蒼汰に呆れつつも。エリスは蒼汰と二人、歩みを止めることなくアリアス廃坑道へと向かう。

 危険地帯に向かうとあっては、馬車も借りられない。故に、二人は徒歩で一週間ほどの時間をかけてここまで歩いてきた。

 その間に出現した魔獣や魔物、野盗の類は全て蒼汰が撃退した。その実力を見たのもあって。尚の事、エリスに不安は無い。


「アタシは、それでもソータなら大丈夫だって思ってるけどね?」

「まあ、今んところは、なッ」

 蒼汰はエリスに答えながら、拾った石を投擲する。フレイムエンチャントさえ使わない、素の身体能力での行動。

 だが――石は矢のような速さで飛翔。遠く離れた茂みに隠れた魔獣の頭部に直撃。


「――ギャウッ!?」

 悲鳴だけを残し、まだ見ぬ魔獣は絶命。そして――蒼汰が脅威的な存在である、と魔獣の群れは理解した。群れの仲間一匹の犠牲と引き換えに。

 結果、蒼汰が感じていた何らかの魔獣の気配は遠ざかっていく。密かに近づいていた危機は去った。


 この旅の間――蒼汰はあえて、蒼炎を使わない戦い方をしていた。坑道内での戦いを想定した、予行演習の為である。

 強力な魔獣、魔物相手ではフレイムエンチャントによる身体強化も必要となる。が、群れでコソコソと獲物を狙う程度の魔獣には不要。

 蒼汰の実力は――ステータスは、それほどまでに高まっていた。


――――――――


Name:緋影蒼汰

Class:ノービス


HP:1328/1328

SP:234310/234582

ST:825/996


STR:1214 DEF:1005

MST:758  MDF:793

SPD:1397 DEX:815

LUK:1855 INT:983


Skill

『火傷耐性』『魔力過敏症』



――――――――


 最早、人外とも言うべき魔力量。他も、常人から見て英雄と呼ぶにふさわしい数値に達していた。

 だが、それでも蒼汰は満足していない。未だに――蒼汰は『フレイムエンチャントのみで』かつて戦った魔族に勝てる気がしていない。

 少なくとも、身体強化して同格。可能なら、身体強化無しで同格。そこまで強くなりたい、というのが蒼汰の願いだった。

 それこそ――突然降って湧いたような力、蒼炎魔法が使えない時でも十分戦えるように。


 つまり今回の、アリアス廃坑道での探索は、蒼汰にとって好条件であった。予行演習、という意味で。

 無論、エリスが同行するという点を除けば、であるのだが。

事前に告知しておきます。


8/28から、Narrative Worksの初コミカライズを記念して一挙連続投稿が始まります。

当作品と、私のもう一方の連載中の作品も対象となっております。

期間は9/5までの9日間。毎日、両方の作品を一日一話ずつ投稿していきます。


他にもNarrative Works内の他著者による三作品が一挙連続投稿の対象となる予定です。

期間中はページ下部にて対象作品へのリンクが貼られますので、そちらからぜひ他の作品の方もお読み頂けると幸いです。

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