第十三話
ポケモンユナイトが来たので投稿が遅れてしまいました。申し訳ありません。
鍛冶屋の収入と、蒼汰の冒険者としての収入。そのどちらも順調に伸びているお陰で、三人の生活は多少裕福になっていた。
その影響もあってか。夕食にエリスが準備したのは、高級食材を惜しみなく使ったものであった。
「これは、気合が入ってるな」
夕食の席に付き、蒼汰が声を漏らす。地球で経験したことのある、パーティ料理のような豪勢さ。
「最近、お料理にハマってるんだよねぇ。ちょっと前まで、こうやって凝ったものは作れなかったから」
そう語り、得意げにエリスは微笑む。
「ほら、早く食べようよ!」
「そうだな。……爺さんは呼ばなくていいのか?」
「ジジイは冷や飯で十分」
「――誰が冷や飯で十分だって?」
ちょうど話題に上げた所で。ジジイ、と呼ばれた老人が食卓に姿を見せる。
「ちっ、寝てりゃあ良かったのに」
「はっ。あんだけ騒いでりゃあ目も覚めらぁ」
「喧嘩してないで、早く飯にしようぜ」
呆れ顔で、蒼汰が促す。エリスと老人の言い合いは、飽きるほど見てきた。対処法も確立されつつある。
「そうだね。せっかくのソータの昇格祝いなんだし。明るく行こうっ!」
「俺は上等な飯が食えれば十分だ」
老人も席に付き、ようやく夕食が始まる。
「いただきます」
「はい、どうぞ」
食前の挨拶は蒼汰だけが言って、食事が始まる。
蒼汰が最初に手を付けたのは、ビーフシチューに似た肉の煮込み料理。ただ、匂いはカレーにも似た、スパイシーさもある。
独特の香りのする煮物をスプーンで掬い、小皿に写してから口に運ぶ。
「――これは美味いな!」
蒼汰の予想とは異なり、カレーのような辛さは無かった。独特の香りとスープのとろみが合わさり、肉の旨味を引き立てている。
「良かった。これ、ソータの世界から来た人が考案した料理が元になってるんだだよね。ソータが好きかもって思って作ったんだけど」
「うん。これ、かなり好きだよ俺」
言ってから、蒼汰はすぐに小皿に取り分けた分を平らげてしまう。それだけ、この料理は蒼汰の好みに合っていた。
「俺の為に、わざわざ勉強してくれたんだな」
「へへ。まあね?」
「ありがとう、エリス」
「どういたしまして!」
エリスの思いやりに、蒼汰は感謝の言葉を述べる。エリスは嬉しそうに、蒼汰の喜びようを受け止める。
「仲が宜しいこって」
そんな二人を茶化すように。老人は言って、ローストビーフに似た料理を口にする。
「とっとと結婚しちまえ」
「おい爺さん、茶化すなよ」
「なっ! け、けっ、結婚とか! 何言ってんだよクソジジイっ!!」
蒼汰は余裕の表情で受け流す。が、エリスは恥ずかしさからか、過剰に反応してしまう。
「そりゃそうだろ。エリス、てめぇもいい歳してんだ。いい加減、身を固めちまえよ」
「ジジイには関係無いだろっ! アタシは、ただソータにはいろいろ協力してもらってるから、そのお礼に!」
「はいはい、分かった分かった。ったく、ごちゃごちゃとうるせぇなぁ」
からかっておきながら、老人は面倒そうにエリスをあしらう。
そんな二人の様子を見て。蒼汰は話題を変える為に口を開く。
「そういや爺さん。言ってなかったと思うけど、保管庫に良い酒を置いてあるぞ」
「ああん?」
「前に依頼で知り合った人に教えてもらってな。家賃代わりに買って来てやったんだよ」
「そういうことは早く言え!」
そう言うと、老人は席を立ち、酒を取りに食材の保管庫へと向かって行く。
「ありがと、ソータ」
「さあ、何のことかな」
エリスは蒼汰が話を変えてくれたと気付き、礼を言う。蒼汰は、それを何でもない、といった様子でとぼけて見せた。