表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
62/79

第十二話




「――ただいま」

 蒼汰は帰宅した。今の己が帰るべき場所、エリスの切り盛りする鍛冶屋に。

「おかえり、ソータ」

 入ってきた蒼汰を見て、ちょうど店番をしていたエリスが笑顔で迎え入れる。


「今日は嬉しい報告がある」

 蒼汰が言うと、エリスは瞳に期待の色を浮かべて見つめる。

「ランクリーズに昇格した」

「やったっ! おめでとう、ソータ!」


 蒼汰が内容を口にした途端、エリスはカウンターから飛び出して蒼汰に飛び付いた。

 蒼汰はエリスを受け止め、しっかりと抱き締める。互いに恥ずかしくなる程に抱き合った後、自然と離れてからエリスが口を開く。

「早かったね、ソータ」

「ああ。頑張ったから」

「嬉しい」

「まあ、俺の為にもなるし」

「またまたぁ、照れちゃってもうっ」


 照れ隠しのように言った蒼汰の頬を、エリスはつんつん、と指で突いてからかう。

「でも。これでアタシたちの目標にまた一つ近づいたね」

「そうだな」

 そう語り合う二人の瞳には、どこか仄暗い炎が灯っていた。


 だが、そんな様子もすぐに鳴りを潜める。

「それじゃあ、今日は早速お祝いだね♪」

「いや、そこまでしなくても……」

「いいのっ! アタシがソータをお祝いしたいんだから!」

 楽しげに言って、エリスは奥へと姿を消していく。


「お店、閉めといてぇ~っ!」

 店の奥――居住スペースの方から、エリスの声が響く。

「はぁ。分かったよ」

 ため息を零しながらも、笑みを浮かべて。蒼汰は鍛冶屋の閉店作業を代わりに行う。


 外に出て、営業中という文字の書かれた看板を裏返して準備中に。店の中に戻ると、展示している商品を片付ける。動かせないほど大きいものには布を掛ける。主に鎧や大剣等の類である。

 エリスの経営するこの鍛冶屋は、武器だけでなく生活用品も販売している。武器は基本的に受注生産。安上がりな数打物もあるが、多くは注文を受けてから作る。

 一方で生活用品の金物は殆どが数打物。受注生産をすることはほぼ無く、店に展示してあるものと同じ商品を販売している。


 割合で言えば、店には武器三割、生活用品七割といった具合で展示されてある。が、一方で売上になると逆。武器は単価が高く、蒼汰が冒険者相手に宣伝していることもあり、よく売れている。

 そんな店の様子を眺めながら閉店作業を済ませたところ。店の奥から、誰かが歩いてくる音が聞こえた。


「なんだ、爺さんか?」

 蒼汰は、すぐにその正体に感づいた。

「なんで分かるんだよ、気持ちわりぃな」

「そりゃ分かるだろ。エリスはアンタほど静かじゃないからな」

 言い合いながら、エリスの親であろう老人は店へと入ってくる。


「騒がしくて、目が覚めちまったじゃねぇかよ。どうしてくれるんだ?」

「まあ待ってろよ。エリスがお祝いに、良いもの食わせてくれるはずだぞ」

「あぁん? そりゃあどういう」

 老人が疑うような声を上げると同時に。蒼汰は自身の冒険者証――ランクリーズと表記されたカードを掲げる。


「昇格祝いだよ」

「はぁん、そういうことか。あのエリスがなぁ、色気づきやがって」

「そういうんじゃないだろ。単に祝ってくれるだけだ」

「何の気もねぇ男をわざわざ祝ってやるような奴じゃねぇだろ」

 老人に言われて、蒼汰は言葉に詰まる。


「……俺とエリスは、協力関係にあるだけだ」

「はっ、そうかよ」

 老人は鼻で笑うと、また奥へと歩いて行く。

「いつまでそうやって、誤魔化していられるか観物だな」

 そう言い残して、また居住スペースの方へと姿を消した。


 そんな老人を見送った後。店仕舞いを終えた蒼汰は、店内で一人呟く。

「――そういうんじゃ、なかったんだけどな」

 想定外だ、と言いたげな声は、やたらうるさく店に響いた。

追記:ポケモンユナイトが来たので投稿遅れます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ