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第一話




「――ここがルートゲインかぁ」

 蒼汰は、街並みをきょろきょろと見回しながら独り呟いた。

 冒険者の街と呼ばれるだけあって、人の往来の中に冒険者らしい姿をした人々がどこでも見られる。また、そうした冒険者を対象にした商売も盛んなのだろう。随分と賑わっており、蒼汰にはヒルヴェイン王国の王都と同等かそれ以上に思えた。


 そうして周囲を観察しながら、キャラバンで同行した冒険者から聞いたギルドの場所を目指し歩く。他の冒険者達は先に向かった。蒼汰が一人なのは、自ら望んだ為である。他人と不必要に関わるつもりは無い。という蒼汰の考えを、キャラバンの冒険者達は汲んだ。蒼汰が裏切りに遭い、傷心していると思っていた為だ。


 ゆっくりと、半分は観光気分で歩いてゆく蒼汰。一方で、地理についても頭に入れてゆく。大通りから繋がる、細かい路地に目を向ける。そういった場所まで、人の往来が見える。それだけこの街が賑わっているのだろう、と蒼汰は考えた。


 実際、ルートゲインはヒルヴェイン王国の王都にも匹敵する大都市である。主要三国――ヒルヴェイン王国、パスハット共和国、ラインスタッド帝国。これら三カ国から人々が流入する為、経済規模も非常に大きい。そこらの小国の首都等よりもよほど栄えていると言える。


 やがて蒼汰は冒険者ギルドに到達。中に入り、依頼完了報告を済ませる。特に問題が起こるようなこともなかった。

 そのまま蒼汰はギルドを後にする。この日はもう夕刻も近づいてきている為、魔物狩りも依頼もこなすのは難しい。また翌日受けることにして、適当に近場の安宿に泊まった。



 ――翌日。蒼汰はルートゲイン周辺の平原にて、魔物狩りを行う。ついでに、周辺の地理も確認してゆく。

 ルートゲインは近くに山脈が連なっており、裾野の森には強力な魔物がうろついている。川や湖もあれば、逆側には平原も広がっている。様々な環境が都市周辺に広がっており、その分魔物の活動も活発になる。強力な魔物も多い。


 例えば、蒼汰がキャラバンの護衛依頼を受ける前。かの街のギルドに納めた魔物、クロウベア。その実力は極めて高く、あの一帯では最上位に位置する魔物であった。

 しかし、ルートゲイン周辺では良くて中堅上位。基本的には中堅下位の、比較的狩りやすい魔物として扱われる。


 とはいえ、それだけ強力な魔物の生息する地域とは言えども、蒼汰の敵ではなかった。そもそも、クロウベアでさえ蒼汰にとっては雑魚である。それも、蒼炎すら使う必要が無い程度の相手だ。

 となれば、雑魚でも中堅扱いを受けるこの一帯。蒼汰にとってはレベルが低い、ということにもなる。


 だが一方で、蒼汰は慢心はしないよう気をつけてもいた。この世界、どれだけ並外れた力を持つ存在が居るかも分からない。

 蒼汰に蒼炎魔法があるように――また他の誰かも、チートと呼べるような力を持っているかもしれない。

 故に周囲が雑魚ばかりの狩場であろうと、十全に注意を払っていた。これは、騎士団所属時代に斥候としての技術を叩き込まれたお陰でもある。


 そして――警戒は無駄とはならなかった。



 蒼汰が適当な、鹿に似た姿の魔物を仕留めた時であった。

 上空から『影』が迫ってくるのを感じた蒼汰は、咄嗟にその場を飛び退く。

 この直後、蒼汰の立っていた場所に巨体が舞い降りる。


 コウモリにも似た翼。蜥蜴のような頭。蛇にも似た鱗。

「まじか……ドラゴンは、さすがに初めて見るな」

 そう。目の前に降り立ったのは、見るからにドラゴンと呼ぶべき魔物であった。


「グオォォォオオンッ!!」

 ドラゴンは雄叫びを上げる。――これは、警戒の意味を持つ雄叫びであった。

 実は蒼汰が足を踏み入れた一帯が、このドラゴンの狩場、ある種の縄張りのようなものであったのだ。


 自分の狩場に乱入し、餌を奪う侵入者。しかもドラゴンは、蒼汰の実力が相当に高い事を察していた。

 故に通常の人が足を踏み入れた場合とは違い、無視が出来なかった。蒼汰というイレギュラーを排除するため、動いたのだ。


 しかし、そんな事情など知らぬ蒼汰。

「ちょうどいい、小遣い稼ぎさせてもらうぞ!」

 ニヤリ、と笑みを浮かべて。ファンタジーの醍醐味とも言える、ドラゴンとの戦闘に気分を昂ぶらせるのであった。

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― 新着の感想 ―
[一言] いよいよ第三章か。いやホントに長かったな!?
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