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第十九話




 蒼汰がルートゲインへと到着した頃。

 ほぼ同時期に、勇者達――蒼汰のクラスメイトであった者達は、魔族の攻勢により押し上げられた戦線を押し戻す戦いの最中にあった。


「――ハッ!」

 剣を振るい、魔族に斬り掛かる少女。蒼汰の幼馴染である、斎藤遥は、鬼気迫る表情で戦っていた。

「ヒイッ!?」

 魔族は悲鳴を漏らしながら、遥の太刀筋から逃れられず、首をあっさりと刎ね飛ばされる。


 同様の状況が、あちらこちらで繰り広げられていた。

 遥のように、一人で複数の魔族を撃退する者の数は少ない。だが、数名で一人の魔族を取り囲み、連携をしながら仕留める。そんな少年少女の姿がちらほら見られた。

 全員に共通するのは、恨みでもあるかのような、悪鬼羅刹の如き表情だけだった。


 元より、魔族とは人間よりも優れた身体能力を誇る。故に、戦場では人間ほどの数が一度に集まることはない。

 これに対し、人間は数で勝り、さらには能力的にも魔族に劣らない、召喚された勇者という存在を投入してあるのだ。

 さらには、一度戦線を押し上げたことによる緩みもあった。故に、戦は勇者側の一方的な勝利という形で決着が付いた。


「……これで、全部かな」

 手当り次第に魔族を殺し続けていた遥は呟く。そして剣にこびり付いた血を振るって落としながら、周囲を見回した。

 既に殆どの魔族は殺されるか、撤退するかのどちらかの状況に追い込まれていた。生き残る魔族も、他の戦闘を片付けた勇者が合流することで、絶望的な戦力差に囲まれるという状況にあった。


 自身の周囲に敵が残っていないことを確認すると、遥は息を吐く。

「ふぅ、これでなんとか、とりもどせるかな」

 その一言を呟くと同時に、一人の少女が近づいてくる。

「お疲れ様、遥。治癒魔法は必要?」

 そう言ったのは、クラス委員長でもあった少女、四之宮輪廻である。


「ううん。怪我はしてないから、いいよ。それより、他の皆を回復してあげて」

「うん、分かったわ」

 頷くと、輪廻は遥と別れ、他の勇者達を治癒するために向かう。

「……蒼汰のためにも、こんなところで立ち止まれないしね」

 そんな遥の呟きを背中側から受けながらも、輪廻は聞かなかったことにした。


 ――勇者達の敗北後。撤退先の基地にて傷を癒やした後、勇者達は結局、戦場に向かう選択を取らざるを得なかった。

 まず、これ以上戦いたくない、と弱音を吐く者達が現れた。だが、そうした者達は少数派であった。


 勇者達の考えは、大きく分けて三つ。一つ目が、最早逃げられないことを悟っている者達。およそ半数がこのグループであった。自分達が異国に拉致され、戦う以外に選択肢を持てない状況にあるのだと、ようやく悟ったのである。


 次に、魔族に対する怒りから戦うことを選んだ者達。友人が傷つき、中には命を落とした者も居た為、その怒りは激しいものとなった。

 また、魔族の外見が、不気味につきでた腹部と紫色の皮膚から、化け物にしか見えなかったことも少なからず影響していた。


 そして最後の一つが反戦派。戦いたくない、死にたくないという思いを抱いた者達であり、派閥の中では最小派閥であった。


 この他、特殊な考えで行動をする物も居た。佐々木幸次郎は正義感と責任感から。剣城拓海は闘争本能から。そして四之宮輪廻は――蒼汰の安否確認、そして復讐に駆られるクラスメイトのコントロール。


 怒り、恨みに支配された勇者達は、ある種自分の命すら軽視する無謀な行動に出る場合がある。そうした者達が暴走し、これ以上の犠牲が出ないようにと奔走しているのが輪廻の現状であった。

 そうした理由から前線で戦うよりも、後衛で指揮を取り、味方の援護や治癒を担当する姿から、一般の騎士や兵士達からは『聖女様』などと称されるようにもなった。

 当の本人は、肝心な時に大切な人を守れなかった、という意識から、不服に思っているのだが。こうした味方の突出した存在は軍の士気にも関わる為、否定することも出来ずに居た。


 同様に、最前線で鬼気迫る戦いを繰り広げ、魔族を積極的に屠る遥が『勇者様』。高い剣の実力にて難敵を屠る拓海が『剣聖様』。困難な戦況、危険な作戦を率先して行い、味方の為に戦い結果を残し続ける幸次郎が『英雄様』と呼ばれている状況にある。


 そして――そんな二つ名付きの勇者が何人も現れ始めた状況だからこそ、決行されたのが今回の作戦。

 奪われた防衛拠点の奪還であった。

スマブラのセフィロスが楽しすぎて投稿が遅れました、申し訳有りません。

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