第十四話
スマブラの新DLCキャラ、スティーブが楽しすぎたので更新が止まっておりました、申し訳ありません。
思う存分楽しんだので、更新再開致します。
キャラバンの護衛当日まで、蒼汰は無難に過ごした。適当な魔物、魔獣を狩り、ギルドに素材と討伐証明部位を提出。ごく普通の冒険者らしい生活を心がけた。
何故かマリスが気安く話しかけてくるようになったのだが、蒼汰はこれを不思議に思いながら、一方でさほど気にしてはいなかった。どうせあと数日の関係だから、ときっぱり割り切る。
やがて護衛依頼の当日になり、蒼汰は集合場所に指定されている広場へと向かった。
そこには既に十数名の冒険者が集まっており、それぞれがキャラバンを構成する商人、御者達と会話をして情報交換に勤しんでいた。
長期間の護衛依頼である以上、依頼主となるキャラバンの構成メンバーとのコミュニケーションは欠かせない。当然、蒼汰も最低限の対話はするつもりで居た。
ひとまず、最も偉そうな面構えの商人の方へと向かう。
「なああんた。キャラバンの護衛依頼の集合場所ってのはここで会ってるか?」
「うむ? 冒険者かね?」
「ああ、これを見てくれりゃあ分かる」
言って、蒼汰はマリスから渡された一枚の紙を商人に渡す。
「なるほど、ランクリーズの。その若さで素晴らしいですな」
「それほどでもないさ。で、これで信用してもらえたか?」
「もちろん。これからよろしく頼むよ。私は今回のキャラバンを纏めさせてもらっているバンドルという者だ」
「ソウタだ、よろしく」
両者は互いに手を差し出し、握手を交わした。
その後、蒼汰も他の冒険者に倣い、情報収集の為に商人や他の冒険者に話しかける。
主な会話内容はこれからの仕事に関わる話であった。だが、会話の流れから自分の欲しい情報も聞き出していく。
先ず、昨今の国境付近、特に魔族領とヒルヴェイン王国の情勢について。
大規模な戦闘があったらしく、その影響で死者も多数発生。追加で傭兵や冒険者から義勇兵や、新兵の募集が相次いでいるとのこと。その為、近々戦闘区域が広がってゆく可能性も高いと誰もが考えていた。
そういった理由から、戦争を稼ぎ時と考える者は前線へ。危機回避志向の強い者は逆に遠ざかるといった現象が各地で相次いでいる。
今回の大規模なキャラバンの結成も、そうした動きの中の一つであった。戦時特需による稼ぎを狙う商会側。そして前線から遠ざかりたい冒険者側の意図が一致した結果、ルートゲインへ向かう形となった。
ルートゲインの立地上、物流の重要拠点にもなっている。商会側としては、ルートゲインで仕入れをして、前線に折り返して高値で売り捌くのが目的である。
一方、冒険者はルートゲイン経由で好きな国へ簡単に逃げられる。冒険者の仕事も豊富な為、懐事情にも優しい。戦争から逃げるには最適の選択と言える。
そうして冒険者と別れた後、商会側はルートゲインにて前線へ向かいたい冒険者を集める。再びキャラバンを組んで帰路に着く、という寸法である。
以上のような情報を集め、蒼汰は尚更確信する。ルートゲインへと向かうのは都合が良い。冒険者の中に紛れ、姿を隠してヒルヴェインから遠ざかるには最も自然。かつ、人の移動も激しい為、足跡を追うにも苦労するだろう。
そうした思考を纏めながら、一方で冒険者同士での対話、交流にも余念を欠かさなかった。同じ仕事をする仲間である以上、最低限の情報交換は連携を取る上で必要である。
その為、蒼汰も他の冒険者と積極的に会話を交わした。
「俺はソウタ。ランクリーズの冒険者だ。身体強化魔法を使える斥候だから、何か用があれば気軽に声をかけてくれ」
無論、他人を完全に信用するわけではない為、こうして重要な情報は隠す形での自己紹介にはなったのだが。
冒険者が己の手の内を隠す、というのは当然の選択でもある。実力第一である為、技を盗まれないようにするのは当然の戦略である。
当然、蒼汰もまたそうした冒険者の一人であるだろう、と多くの同業者、そして商人に推測されていた。ランクリーズでありながら、身体強化魔法しか使えない平凡な斥候の少年、等という存在はあり得ない為である。
無論、蒼汰もその不自然さは分かっており、ある程度の詮索、疑いは許容範囲にあった。
だが――当然ながら、蒼炎魔法については教えるつもりも、また見せるつもりも無かった。
己の切り札でもある為、可能な限り誰にも見せたくはない。どこから情報が漏れ、どのように対策されるかも無限の可能性がある以上、当然の対策である。
そうして自己紹介も終わり、十分な情報収集も終えた後――ようやく、キャラバンは出発。
向かうは、冒険者の街ルートゲイン。