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第十三話




 試験終了後。合格者はその日のうちに冒険者証の更新をされ、正式にランクトーズの冒険者として認められた。

 最終的にランクトーズとなった冒険者は全体の二割強程度であった。


 その冒険者達の中に蒼汰は――含まれなかった。

 それは不合格とは逆の理由。蒼汰の実力が高すぎたことによる。


 ランクトーズとは、冒険者として一人前であることを示す。そしてそれ以上のランクは達成した依頼、討伐した魔物、魔獣の内容から冒険者ギルドが判断し、昇格を告げていくことになる。

 つまり、実力さえ足りているとギルド側が判断すれば、即座に昇格していくシステムとなっている。


 蒼汰の場合、遥かに格上であるはずの冒険者ベイルとの模擬戦に勝利し、実力が十分にあることを証明した。

 そして知識、実技面でも問題は無かったため、ランクトーズには無論合格。そしてランクトーズに合格すれば実力次第で昇格するのだから、ベイルとの模擬戦の内容からそのまま一つ昇格。一つ飛び級して、ランクシーズの冒険者となったのであった。


 当然、受け取った冒険者証もまた、ランクシーズの冒険者であることを証明している。

 蒼汰はそんな試験を受けた冒険者の中でもひと味違う冒険者証を――件の受付嬢、マリスから受け取っていた。


「……悪かったわ。貴方のこと、見下してかかって」

 マリスは思いの外、素直に謝罪の言葉を口にした。

「もういいよ。俺もやり返したわけだから、これでチャラってことでさ」

「ふふ、何よそれ。――っていうか、そもそも貴方が最初から元傭兵ですって言ってればこっちだってあんな態度取らなかったんですけど?」

 どこか気安い態度で文句を言うマリス。その口調に嫌味がないお陰か、蒼汰は不快感は感じなかった。むしろ話しやすいぐらいで助かる、とさえ思った。


「まあ、そこはさ。俺はどこぞの某様に世話になった傭兵なんだぞ、って威張るのは格好悪すぎるだろ?」

「格好つけてどうすんのよ、そんなところで」

「そりゃあ、あんたが美人だからだろ。悪いのはそっちだ」

「なっ!」

 突然の、蒼汰の口説くような言葉にマリスは顔を赤くした。


「バカなこと言ってんじゃないわよ、ガキのくせして!」

「はは、悪かったって!」

 笑いながら、蒼汰はマリスが投げつけてきた冒険者証を正確に受け取る。

 そして――ようやく当初の目的でもあった依頼票を早速剥がし、すぐにマリスの元へと向かう。


「で、早速だけどこの依頼を受けたいんだけどさ」

「はいはい。えっと……」

 その依頼票を見て、動きを止めるマリス。書かれている文字を読み、口ずさむ。

「ルートゲイン行きの、キャラバン護衛……」

 そして、蒼汰の顔を見つめる。


「……なによ、人のこと口説いといて。アンタ、うちに残る気なんか無いんじゃない」

「まあ、いちおう俺にも目的っていうか、理由があるからさ」

 頭を掻きながら、蒼汰は言う。

「ふん、まあ、珍しいことでもないけどね。立地のせいで、うちは有望な冒険者なんかどんどん向こうに行っちゃうし」

「だろうな」

 そうして、当たり障りのない言葉を交わしながら、マリスは依頼の受付処理を済ませていく。


 そして最後の書類に判を押し、これを蒼汰に渡す。

「はい、これを当日、集合場所に行って依頼主に渡しなさい。それでキャラバンの護衛に参加させてもらえるから」

「ああ、ありがとう」

 蒼汰はたった一枚の紙を受け取る。そして不満げなマリスの表情を見て、余計な一言を呟く。


「そんなに寂しいなら、追っかけてきてもいいんだぞ?」

「っ、うっさい! 死ねバカ、クソガキ!」

 マリスは怒りの声を上げながら、しかし笑みを浮かべて書類に押していた判子を投げつけてくる。蒼汰はこれを掴んで受け止め、マリスの方へと優しく投げて返す。

「そんじゃあ、キャラバンが出発するまでは世話になるからな! またよろしく!」

 言って、蒼汰は駆けるようにして冒険者ギルドを後にした。


 それを見送ったマリスは、椅子にどかっと座り込んで息を吐く。

「――はぁ、ほんとムカつくクソガキ」

 呟いた言葉とは裏腹に、口元に浮かぶ笑みは隠しきれてはいなかった。

マリスはメインヒロインではないです(重要)。


なお、今後もマリスのようなインスタントチョロインとすれちがい通信をしていく予定ですので、そういった面でもお楽しみいただければ、と思います。


※追記※

スマブラの新DLCキャラ、スティーブが楽しすぎたので更新が遅れております、申し訳ありません。

コンボが実践で安定してきたら更新再開致します。

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― 新着の感想 ―
[一言] 現地妻ですね
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