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第十一話




 適当な屋台で串焼きと包み焼き――ホイルで包んで焼く調理法ではなく、野菜と肉を炒めたものを、ソースと一緒に生地に包んだ屋台料理の名称である――を食した蒼汰は、再び冒険者ギルドに向かった。

 そして向かうべき場所、試験会場であるギルド裏の訓練場には、ギルド内から廊下を進み、裏口らしき場所から出ることで到着した。


 訓練場には、既に他の冒険者も集まっていた。試験を受けるのはベテランばかりらしく、全員が使い込まれた、しかしよく手入れの行き届いた綺麗な装備を身にまとっており、年齢も二十歳程は超えているように見え、顔つきも険しい者が多く、相応の実力があるのだろうと見受けられた。

 しかし、蒼汰は緊張も気負いもしなかった。そもそも、試験に落ちれば勝手にルートゲインに向かえば良い。気にする必要自体が皆無である。


 次に蒼汰は、訓練場自体を見回した。実技試験で使うのか、様々な設置物が広い訓練場のあちこちに並べられていた。中央には陣地のような白線が引かれているだけだが、その周囲には所狭しと器具が並んでいる。

 中にはアスレチック的なものもあり、平均台やハードルなど、障害物競走でもするのかといいたくなる様相であった。


 そして十数分ほど待った頃になって、試験官らしき男が一人、訓練場に入ってくる。体格が良く、装備を身にまとっている。その男の後ろについて、数名の女性。試験の補助でもするのか、いくつかの小道具を抱えている。その中には、蒼汰の知識試験を担当した女性、マリスの姿もあった。


「――さて。これから実技試験を始める! 遅れたやつはいるか? ……って、遅れてたら返事はできねえな! ハハハ!」

 男の冗談に、集まった冒険者はまばらに笑い声を上げる。蒼汰は、苦笑いを浮かべるだけだった。


「実技試験の内容は身体能力測定と、障害物競走だ。全て一定の記録を超えていれば合格。最終試験の戦闘力試験に入る。戦闘力試験は俺相手に十分な実力を見せてくれりゃあ合格だ。質問はあるか?」

 誰も質問はしない。その様子を見てから、蒼汰は静かに手を上げた。


「なんだ少年、言ってみろ」

「あんたは誰だ? ちゃんと実力を測れるんだろうな?」

 その言葉に、場がざわつく。どうやら、蒼汰の質問は論外であるらしかった。


「ハハハ、俺を知らないか、そうかそうか。まあ、自己紹介ぐらいはしとくべきだったな。俺はベイル。ランクエルの冒険者をやらせてもらってるよ」

 ランクエルとは、つまり8に相当する。今回の試験、ランクトーズ、つまり3に相当する冒険者とは5つもランクが離れている。

 試験官をするには十分な実力差であると言える。蒼汰は頷き、納得する。


「まあ、そんなに固くなる必要はねえぞ。冒険者ランクなんぞ、ランクリズからは強さじゃなく実績を積んだ量で上がっていくからな。数字ほど隔絶しちゃあいない。ランクオズ、ナンバレスの化物共の足元にも及ばねえよ」

 思わぬところで、蒼汰は冒険者ランクについての知識を得ることとなった。詳細こそ分からないが、要するに冒険者の実力を試験で測るのはランクリズまでで、そこからは依頼や討伐の実績の積み重ねで上がっていくのだろう。そして、実力がランクリズから隔絶している冒険者はランクオズ――つまりゼロを冠するようになる。


 いつかは自分もそのランクオズになれればいいな、などと考えつつ、蒼汰は意識を試験の方に戻し、試験官ベイルの話に耳を傾ける。

「そんじゃあ、順番に身体能力の測定から始めていくぞ。ギルドの職員さん達がグループ分けをしていくから、グループ毎にそれぞれ開始してくれ」

 その言葉で、いよいよ実技試験は開始した。蒼汰を含むグループは、今日初めて会う女性であった。年配の女性で、物腰の柔らかい人であった。


 そして最初の身体能力測定は、柔軟性。前屈、開脚などの数値を測定する。意外と冒険者は身体が柔らかく、余裕の合格者ばかりであった。蒼汰はギリギリ合格ラインを超えた。

「はは、ボウズ。もうちょっと柔らかくしとかねえと、そのうち怪我するぞ」

 グループ内の冒険者に言われ、素直に反省する蒼汰であった。騎士団でも柔軟運動はするように言われていたが、そこまで重視はしていなかった。様々なフィールドで活動する冒険者は、時に足場が悪い環境下でも行動しなければならない。それを考えれば、確かに柔軟性はあるに越したことは無い。

 日課に柔軟運動でもやろうかな、と蒼汰は考えた。身体強化では柔軟性はほぼ変わらない。身体が丈夫で力も増えるため、多少は記録を伸ばせるのだが、それでも曲がらないものは曲がらない。訓練をするなら筋力トレーニングよりも柔軟だろうな、と蒼汰は思ったのであった。


 続く測定は立ち幅跳びや垂直跳びなど、シンプルな運動能力の測定。ここでは蒼汰も他の冒険者同様、十分に合格ラインを超えた。身体強化を使うことは禁止されていたが、それでも騎士団で鍛えた身体は嘘を吐かない。また、身体能力にはステータスも影響するため、この世界の人間としては破格のステータスを持つ蒼汰にとっては難しい試験では無かった。


 そして最後に障害物競走。一定のタイムを超えれば合格。身体強化でも何でも使って駆け抜けろ、という試験。多くの冒険者が三十秒程度のタイムに収まる中、蒼汰は遠慮せずにフレイムエンチャントを強めに発動。常識的な身体強化よりもさらに倍以上の強化値のお陰で、十数秒という桁外れの記録を叩き出す。

「まあ。二十秒切りなんて、何年ぶりかしら」

 嬉しそうに驚くギルド職員の女性。その様子を見て、どうやらもっと思い切りやってもいいのだろうな、と蒼汰は推測した。

先週から、もう一方の作品である『吸血鬼な悪役令嬢に転生した私がSSS級国際指名手配犯となり最強チートスキルで婚約破棄王子や元クラスメイトの勇者などを倒していくお話』の更新も再開しております。

二つの作品を交互に更新していく予定となっております。宜しくお願い致します。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ランクの一覧表とかを作って欲しい。わかりにくい。
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