私にとってのふつう
第1章 ~私にとってのふつう~ 一花side
少し明るくなりかけた空の光で目が覚める。
目覚まし時計の音で家族を起こさないように、早めに目覚ましを鳴らさず起きる。
私はいつも5時くらいから起き、自分の弁当と朝ごはんを作り洗濯を済ませ、身支度をゆっくりとする。
母や父から甘えられるような人間はうちにはいらないと教えられ、自分でできるようにと家事全般は幼い頃から教えられてきたので大抵のことは自分でできる。
今日は母が久しぶりにかえってくるので、家の掃除もしておく。
しっかりと全てこなして、家を出る。
私が早いのか、それとも登校する人がゆっくりなのかは知らないが、いつも私が通る通学路には人がいない。
30分ほどで学校に着く。
誰もいない教室で教科書を開き、予習を始める。
すると、いつもは誰もいないこの時間に
「あーあ、あんな顔だけ男と付き合うんじゃなかった」
遠めに、でも鮮明にそんな凛とした声が聞こえた。
すこし、自分の事を言われているように感じてしまい、自分の机に足をぶつけてしまった。
でも、勿論女だから自分の事ではない。
声の主も今、自分が話していることに夢中で気づいてないようで安心した。
しかもその声の主に聞こえてしまったことがばれていたら平穏な私の生活が狂ってしまっていたかもしれない。
なぜなら、声の主はクラスの中心的な女の子の葵さんだったから。
葵さんって気が強いとはおもっていたけど、そういう感じなんだ、と思った。
まぁ地味だし目立たない私には関係ないけど。
そうやって私が、考えている間にも葵さんは顔だけ男へとの罵倒を吐き出していく。
「やっぱり碧斗なんかと付き合うんじゃなかったわぁ」
あ、葵さんって碧斗くんって人と付き合ってたんだ。
誰かしらないけど、顔も可愛いし、社交的な葵さんと付き合えるくらいならよっぽどなんだなくらいに思った。
予習も終わったので、図書室に借りた本を返しに行こうとすると、葵さんが喋ってる方向と近い廊下の辺りで立っている生徒がいた。
そんなところで立っていると葵さんに聞いてることばれちゃうよっと思ったけど、私なんかに話しかけられるその子が災難すぎると思ったからやめておいた。