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きっとあなたはそこにいる

作者: 二条丈

メランコリーな感情になって、大切な何かを再認識した今日この頃

 君はいなくなってしまった、何も告げずにある日突然姿を消した。


 僕は何も言えずにその事実を受け入れることしかできなかった、いくら待っても探しても君と再び逢う事は出来なかったのだから。


 同じ日常を繰り返すものだと思っていたのに。

 同じ時間を共有してかけがえない価値を築いていったはずだった。


 それなのに君は僕との出会いが幻だったかのように、君の存在は僕の心に大きな穴を空け酷く蝕む。


 どんなに後悔しても過ぎ去ってしまったものは過去の記憶になり風化してしまう。

 わかっていても、重要な欠落を認識した心は思い出の感傷に浸り疼痛によって覚めた夢を見る。

 

 虚空を見つめ君の存在に騒めく鼓動に苛まれながら記憶に縋って侘しい想いを鎮める。


 君は僕の前から消えてしまう事を悟っていた時何を想っていたのだろうか、消えてしまうその時まで僕のことを考えていたのだろうか。


 いくら思案しても答えは出ない、あるのはいない君と崩れゆく僕だ。


 吐き出したい想いも、浸りたい思い出も何もかも混ざり合って早鐘を打つ鼓動に溶け合う。

 全身を巡った末に広がる慟哭の叫びと淡くなりゆく視界。


 想いの果てを棄て去り一時明瞭になった思考で夜空を眺める先の月に告げた。


 ”ただ一度でいい、最後に君に抱いた感情に会いたい”と 


 瞳を閉じ、瓦解した感情を少しづつ拾い上げ君がいた感情を組み上げる。さよならを言うために。


 何気ない普通の日常、彩る感情は鮮やかで暖かな色で形どられる君の笑顔。


 その時、ぐちゃぐちゃになった僕の心は笑顔に絆され涙を流し続けた。

 雫が僕を君に繋ぎ留め、精彩を取り戻した感情がそれを覆った。


 君はいなくなってしまった。

 もう二度と会う事はできない。


 その意味を深く心に刻み、まだ温もりを放つ感情に手の平を合わせる。


 君から受けっとったもの、伝えたかったこと。

 同じ時間を共有した全ての財産に蓋をする。

 何よりも価値のあった記憶は今は錆びついてしまって抱えるだけ僕を縛る柵となり、君の坩堝に引き込んでしまう。


 ならば自らこの行き場のない感情に最期くらいは素直になっていよう。

 過ぎれば朧気になって霞んでしまうこの恋情に終止符を打つ。

 

 まるで感情の標本を作っているような気分にもなる。

 いつまでも、崩れない綺麗な形を保った素敵な気持ちでいるために。


 僕の心の事はいつまでもその想いを留め続ける。結局思う事は一つなんだろう?

 皮肉を込めながら僕は僕自身の心に蓋をする。


 ”やっぱり君の事が好きだ”


短いですが読んでくださりありがとうございました

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