第七話 第二試験
前回の話に1000字程度追加しているのでそちらから見てください
部屋に入り眼に飛び込んできたものは、戦場を再現したような空間に一人の男が立っている光景であった。壊れた柱や武器が転がっており、地面には残り火のようなものがあるが視覚齟齬系の魔法の気配は感じない。となれば、これはビーネの言っていた「科学」という技だろう。詳しい説明はされなかったが、空間そのものを変革させているのであれば、少なくともこの分野では魔術より優れているだろう。
目の前の光景に対して考えを巡らせていると、正面にいた男が話しかけてきた。
「貴様がカリファル学園に編入したいと言う阿呆か!。俺は王国第七部隊副団長兼、この学園の編入試験特別監督を任されているジャンク・ユリスキーだ。言っておくが、俺が試験に携わっている時点で合格は無いと思え!」
筋肉隆々、身長は2mを超えている男がこちらに話しかけてきた。王国第七部隊と言うのはビーネと同じ騎士団であり、この男が編入試験においてのみ試験官となることは聞いていた。曰く、山をも裂くような剣を携え、魔法と科学が主流のこの時代に己の肉体のみで王国直轄の騎士団で副団長を任されるような筋肉馬鹿、らしい。
「カリファル学園編入希望のシャルシスと言います。この様子ですと、第二試験も実戦試験ということで間違えないでしょうか。」
「然り!当試験は試験官との模擬試験で発揮された力を評価とする。本来ならば戦闘中に使用された魔法や立ち回り、戦術などを総合的にまとめたものを点数へと置換するのだが、俺が試験官ならばそんなまどろっこしいものは無しだ。俺の鎧に一撃当てろ。単純明快なことだろう?たった一撃当てればお前は晴れてカリファル学園の生徒となり、一切の攻撃を俺に当てれないようなら合格する権利など無い。」
このような話も当然聞いていた。ジャンクという男は強い者しか認めることは無く、この試験は鎧に一撃当てることが出来れば満点、当てられなければ評価点無しという極端なものであった。たった一撃といえども相手は王国騎士団。そのハードルは学園に入る者にとって不可能に等しく、編入希望者はこの試験を聞くだけで辞退するという。
「この学校はエリートを育成するための学園。入学時ならまだしも、私のような編入生に対して難易度を上げるのは当然かと。それに戦闘に使う技術は度外視され結果が全てであれば、変に工夫を凝らさなくて良い分わかりやすくて気が楽です。」
俺は返答しながら剣を取り出す。剣身は約80cm。特筆すべき性能も無く、好む長さより少々短いが繋ぎとしては充分だろう。
「…笑わせる気か少年?俺が魔法を使わないからフェアにいこうと考えようが結構だが、舐めてもらっては困る。そんな軟な剣では話にならんし、そも俺に魔法を捨て接近戦を挑むなどバカにしているのか?」
「愚弄する気は有りませんし、こちらは大真面目です。深読みさせる気も一切無く、単純に貴方相手であれば剣術による戦いが最も有効と考えただけです。」
「吼えるでは無いか!その思い違い、その蛮勇、その全てをこの剣で叩き伏せてやろう。」
大男が背中に背負っている大剣に手を掛ける。その長さは男の身長と等しいほどの長さであり、並の戦士であれば持つのも困難だろう。
「せめて一撃耐えて見せろ。わざわざ試験として俺を呼んだのであればそれ位は義務だろう。」
思考を眼前の戦闘に傾ける。いくら頑張ろうとも敵との筋力差は埋められない。ならばそれ以外の部分で勝るのみ。
ーー戦場を再現したホログラムの中、二人の剣士が戦闘を始めようとしていた。