第二話 初戦
絶望的なタイトルセンスっすな
血で濡れた魔族が殺意を剥き出しにこちらへ向かって来る。俺は敵を凝視し、転生した自身の体と敵の戦闘能力への推測を開始した。
―――転生前と比べ身長、筋肉量、反射神経、瞬発力、何れも大幅に低下。魔力量も低下しているが戦闘には支障が無い程度。対して相手の魔力は魔族の中では一般的な量、特殊な武器は一見持っておらず、戦闘をするには余りにも無防備に距離を詰めてきている。
…ざっとこんな物か。戦闘面に関しては特に筋肉量の減少が足を引っ張っており、転生前と比べ40%程しか出力できない状態である。その程度の力では、下級の魔族にすら傷一つ付かないだろう。まぁ、そこにブーストするモノが無ければの話だが。
「流石に、魔力消費無く勝利は難しいか。」
元々、[魔剣士]という職は己の体のみでは限界を感じた剣士が作った戦闘スタイルという特性上、この状況を打破するには丁度いいと言えるだろう。
――――自身の魔力を呼び起こす。敵が複数いるのであれば、先ずは敵が反応できない速度で頭数を減らすのが常套手段である。この状況において最善の魔法の組み合わせを思考する。
「征くぞ」
瞬間、自身と敵の付近に魔法陣を8つ生成する。自身には『筋力強化』,『視覚補助』,『速度上昇』の自己強化の魔法と『斬鉄』,『硬度強化』の剣を強化する魔法を。敵の付近には『束縛』,『重力上昇』,『炎弾』を後ろの二体を巻き込みながら発動するように魔法陣を組み合わせた。
「……!離れろセパル!」
リーダーであるガミジズが叫ぶ。
セパルと俺の距離は40m、セパルは叫ばれた事により咄嗟に距離を取ろうとしている。
……遅いな。
魔法陣に魔力を込める。魔法陣が正しく描かれている事を確認し、起動と同時に地面を蹴った。
時が僅かに進み魔法陣の効果が発現する。俺は魔法の効果によって加速し、眼前の敵を神速の一太刀で以て斬り伏せるだろう。流石に残った二体に無傷とはいかないだろうが、魔法を複数掛けたこの肉体が相手に劣ることは有り得ない。
――――だが、完璧に描かれた魔法陣はなにも無かったかのように本来の効果を十全に発揮せず、この剣が敵を捉えることは無かった。
次話も明日の20時投稿です