第一話 初遭遇
タイトルが思いつかねぇ・・・
―――――――――ふと、悲鳴が聞こえた。それは生易しいものでは無く、地獄を想起させるような阿鼻叫喚であった。
「俺は―――」
永く眠っていた様な頭を再起動する。思考を拒絶する脳を無理に動かし現状を把握する。
「俺は転生したのか。魔王を討つ為に未来へと来た筈だ。」
徐々に視力が回復していく。未だぼやけた視界に入ったものは燃え盛る家屋と荒らされた畑であった。
「ここは襲撃された村なのか。やはり、時が経っても争いは絶えないか。」
現状を把握する為に脳を動かしていると、自身の記憶以外のものが紛れ込んでくる。どうやら、この肉体の元の所有者は他にいたらしい。
「先ずは安全を確認しなければ。」
家屋が燃えている事から、襲撃されて間もないのは明白である。敵の戦力が不明である以上、ここは逃走が無難な選択であった。
「おいおい、あそこの人間生きてるぞ」
声の方を確認する。そこには角と尻尾の生えた人型の生物が三体立っていた。・・・どうやら、無血で村を離れるのは難しいようだ。
「そこの担当はギエルだったよなぁ?うんちく野郎は人すら殺せねぇのか?」
「……うるさいセパル。お前と違って俺は人間が一匹づつ苦しみながら死ぬ姿を見る趣味は無いんだ。効率的に、能率的に事を進めただけ。其処に誤差が生じようとも大した失態ではない。」
「それが誤差だろうが無かろうが事実人間が生き残ってんじゃねぇか。これは相応の罰が必要だよなァ?」
二体の魔族は俺が生きていることに対して話しているようだ。セパルと呼ばれる魔族は大量に血を浴びており、身長は低いがかなり鍛えられた筋肉の持ち主だった。対してギエルはセパルと対照的に血の気は一見感じられず、黒いスーツと眼鏡を着用していた。
「黙れ。騒々しいぞセパル、ギエル。」
その言い争いをリーダーと思われる男が静止させる。
「申し訳御座いませんガミジズ様。ギエルには後で厳しく言いつけておきます。」
「あぁ?うるせぇのはオメェだろうが伊達メガネ。なんならここで永遠に喋れない様にしてやろうか?」
「…………」
ガミジズと呼ばれる魔族が二人の静止を諦め、言い争いを無視し俺を始末しに向かって来る。当然ここで死ぬ訳には行かないので、俺は立ち上がり近くに落ちてあった剣を構える。
こちらに抵抗の意志があると気付いたセパルは言い争いを止め、新しい玩具を見るようにこちらへ話しかけて来た。
「なんだなんだぁ? そんな貧相な物でこっちを殺そうとしてんのか? ギャハハハハハハ!!!!! 知ってるかガキ。それは剣って言ってなァ、杖とは違って魔法を出すことは出来ねェんだぜ!?」
セパルと呼ばれる魔族はこちらが剣を構えている事に対してとても愉快そうに笑う。その蔑み様は俺を驚異と全くみなしていない、魔族特有の不快さが籠もったものだった。
「もう我慢できねェ。ナァナァ、アイツは俺が殺ってもいいよな?」
「……好きにしろ。」
ガミジズの一言でセパルはおぞましい程の笑顔を浮かべる。
「ハハハハハハハハハハハハ!!! ガミジズ様の許可は貰ったんだ。ギエルは邪魔すんじゃねぇぞ。」
「先も言った通り、俺は殺す事に興味はない。其処の人間がどう死のうが私には一切関係無い。」
話は終わったようで、セパルがこちらへ歩いてくる。その姿は殺気を全く隠しておらず、話し合いが意味を成さないのは明白であった。
……現状を理解しきれていない状況では悪手だが、仕方ない。私は歩んでくる敵に剣を構え直し、この生で初の戦いを始めようとした。
次話も明日の20時投稿です