3.5話〜毒を食らう魔王
日は沈み、窓の外、霧の向こうに夜空が見える。
再び生を受けてからというもの、食事も睡眠も必要としないものだから、時間を持て余していた。
何かをしたいわけでもない。何かをするわけでもない。
ただ無為に、時間の過ぎるのに身を任せていた。
勇者は果たして、いつここに辿り着くのだろうか。
「魔王様」
窓から目を離し向き直ると、いつもと変わらず、部下のノーリアが立つ。
しかし、今日はどこか、緊張を浮かべている。
「どうした」
「恐れながら、本日は変わった食事を用意致しました」
声にも僅かな震えが聞いて取れる。
そして2種類の料理が運ばれてくる。見た目、匂い……極めて甘そうなものと、恐らくは、毒物の二品。
「なるほど……なかなか勇ましいな」
「……はっ」
その顔には怯えが見える。
「甘いものと、毒、か」
「苦いもの、という意味で用意致しました」
なかなか離れた位置にあるが、それでも鼻につく刺激臭。
私が食い終えた後、それを残した場合に、自分たちが食べることも覚悟の上、ということであろう。
「ふむ、いつも通りなら、これはお前たちに回るが、良いのか?」
「……勿論でございます」
覚悟を決めた声を聞く。
それを見届けると、運ばれてきた料理に手を付けた。何の味もしなかった。
「うむ。あとは皆で食べると良い」
「ひっ!」
普段とはかけ離れたか弱い悲鳴を上げる。
それほど、この料理に使った毒物とは激しいものなのだろう。
「あ、ありがとうございます」
少しばかり気の毒とは思うが、死にはしまい。
退室しようとするノーリアに、ふと、思い浮かんだことがあり、声を掛けた。
「ノーリア」
「は、はい?」
振り返る表情は暗かったが、すぐに晴れやかなものに変わる。
「一つ頼みがある。聞いてくれるか」
「は、はい! 一体何事でしょうか」
私の願いを聞き、ノーリアはまた少し、表情を暗くした。
勇者の復活。それが唯一、私の心を動かし始めていた。




