3話〜勇者の呪い(8/11)
「なぁ少年。あいつぁなんなんだ? この島にはあのくらいの強さをした魔獣はいねぇはずだったんだが」
ラインさんと歩いていると、そんな質問をされた。それは、僕もわからない。
「その、僕もこの島にはそんなに詳しくなくて……来たばかりなんです」
「おいおい来たばっかで追われてるのかぁ? ほんと何したのよ少年。危ねぇぜ?」
呆れられた。いや、というより心配されたみたい。
しかし、元々ああいうのがいないってことは、やっぱりあのグリフォンは僕が呼び寄せてしまったんだろう。エンジュさんたちに、あとでしっかり謝っておかないと。
それにしても、魔物を倒す勇者はわかるけど、冒険もする前からいるだけで魔物を呼び寄せてしまうなんて、非常に迷惑だな。事件現場にいる名探偵みたい。
……こう、勇者として、人を守る感じなことしたいのに、ほど遠いな。守られてるし。
「あ、あの。その……はい。気を付けます」
それ以外に何と云えば良いのか、ピンと来なかった。でも、たぶん返事としては間違っているのだろうなぁと思っていた。
そんな会話をしながら、ほどなくして、僕らは倒れているグリフォンのところまで来た。
倒れている。だけど、それを見て、急に起き上がり襲ってくるんじゃないかと、顔や背中を冷や汗が伝うのを感じた。体中に震えも来る。
……ラインさんに会えて良かった。
そう思い、深く深く呼吸をした。どうにか運よく、生きていられた。
「あ……頭を」
「ん。大丈夫そうだな。一応トドメを刺しとくか」
グリフォンは頭を撃ち抜かれ、ぴくりともしていなかった。死んでいるのだと思う。僕が落ちた穴は広がっていて、この広がり方なら、奥までグリフォンが顔を入れられそうになっていた。
ふと気がつくと、グリフォンは穴から少し離れたところに居る。
……僕が穴を出たことに気付いて、こいつは穴から顔を引き抜いて居たんだ。
そう思ったら、また酷い震えが来た。
「そう怯えなさんな。もう死んでる」
そう言って、僕の頭をぽんぽんと叩きました。それからラインさんは腰に差していた短刀を抜いて、グリフォンに構える。
「何を、するんですか?」
「いやまぁ、死んでるとは言ったがな。魔獣っていうのは回復が早いんだわ。仮死状態で回復に努めてる場合もあるしな。だから、死んでる様に見えても、油断すると危ねぇわけ」
「へ、へぇ」
そう聞いたら、僕は無意識に一歩下がった。怖かった。
ラインさんはグリフォンの周囲を回り、よしっと口にすると、トンと胸の辺りを刺した。
「たぶん、この辺りが心臓だろう。念の為内臓は抜いておくか、都合の良い穴もあるし。あと一応首を切っておくか」
念には念を入れた対処。鶏や牛や豚の解体さえ見たことない僕には、そこそこハードな光景が広がりました。
つい見ちゃったけど夢に出そう……
「はぁ……焼ければ簡単なんだけどなぁ、そういうのも覚えねぇとかなぁ」
銃をあんな風に使いこなせる上で魔法まで会得しようとしている欲張りっぷりに、つい僕は耳を疑ってしまった。
この人が勇者でもいいんじゃないかなと少し思ってしまう。
……ちゃ、ちゃんと勇者をできるのだろうか。
ラインさんは内臓を綺麗に抜き取ると、それを穴に入れて埋めた。
「さて、と。肉は食えるかな?」
「えっ!?」
食うの!?
「いやぁ、だってよ? これ顔は鳥みたいだし胴体は普通の獣っぽいじゃん? 俺だってなんかドロドロしたのはやだけどよ。これならなんとかいけねぇかなぁって」
「た、食べて良い物なんですか、そもそも?」
「ダメってこたぁないだろうけど……いや、俺もねぇの。どうなんだろうなぁってな」
僕が訊ねると、ラインさんはケラケラ笑いながら返してきた。
頼もしいなぁこの人。
「たぶん、エンジュかネルティに聞きゃあわかるだろうその辺りも」
「えっ!?」
二人の知り合いなの!?
「どうした。二人のこと知ってんのか? ってまぁ、この島にいるならあの教会の関係者だろうしな」
その反応から、この島はたぶん狭いのだと知る。
安全で狭い島……あ。僕を匿うのにうってつけだからここで蘇生されたのかな……そんな感じ、すごくするな。




