2.5話〜夕暮れの魔王
日か沈みかけ、大きく開いた窓からは眩しくない日が差す。
魔王城の周囲には1日の8割ほどの間、黒い霧が立ち昇り日を遮る。だか、大抵はこの夕暮れの時と夜に霧が僅かに晴れる。
昨日振りに見えた外は、黄昏色の荒野と山。何も変わらぬ景色。
「魔王様」
窓から目を離し向き直ると、眼前に部下のノーリアが立つ。人間の女に見えるが、生粋の魔族であり、一夜も与えれば一つ国くらい滅ぼすであろう力を持つ。
「どうした」
「本日、只今をもちまして、復活よりご生誕3年目となりましたので、ケーキなどを」
「そうか」
そしてその部下数人が数人前という大皿にケーキを乗せ運んで来た。飾りもクリームも、丁寧に盛り付けたことが見て取れる。更に切って添えられた新鮮な果実が美しい。
「皆で材料を集め、作りました」
言うと、ノーリアはケーキを切り、小皿に取ると、手渡してくる。
食べる。
「うむ。皆に感謝しよう。あとは皆で食べると良い」
「ありがとうございます」
ケーキを運んで来た部下はそのまま退室したが、ノーリアは残った。
「一つお話が」
「なんだ」
問われると、少し逡巡してから、重く口を開く。
「勇者の復活を確認しました」
「ほう」
勇者の復活。あれも人にしては異端であったが、黄泉返ったのか。
思わず、口が笑う。
すると、ノーリアはいささか苦い顔を見せた。
「既に一体差し向けておりますが、如何致しましょう」
僅かに目を伏せてから、こちらを向く。
「任せる。好きにするが良い。万一お前が奴を殺せたのなら、それはそれで、愉快なものだ」
「はっ」
そう言うと、ノーリアは去った。
窓を向くと、外の夕闇は、また黒い霧に隠されようとしていた。




