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ミーセリーのクリスマス

初出:2017.12.24 web拍手お礼ページ

 

 十二月はクリスマス。兄と住んでいた時は小さいクリスマスケーキやチキンを用意したけれど、サンタさんは来なくなって久しい。

 さらに社会人になってからのこの時期は、見事に繁忙期。プラスして自社の冬のキャンペーンや年末年始のシフト組みで、毎年いっぱいいっぱいだった。


 そして、ここミーセリーには、当然だがクリスマスはない。

 十二月が一年最後の月なのは同じで、年越しの行事的なものはある。とはいえ王宮や神殿の方々がメインの神事が中心で、一般的ではないそうだ。夏の宵祭りや春秋のお祝いのほうが、国民的行事らしい。

 でも、そんなことは置いておいて。

 私は少し前から、せっせと小さいプレゼントをいくつか用意していた……だって。アデレイド様やダニエル先生やマークがなにもしていないからって、彼らの誕生日を知らなかったなんて、いくらなんでもうっかりしすぎじゃないか。

 それに気付いて慌てて聞いてみれば、みんな誕生日は過ぎた後だった。


 いや確かにね、レイチェル様やマリールイズさんにも確認したけれど、こっちでは「誕生日」をさほど重要視していないそう。

 昔の日本の「お正月にみんな一斉に年を取ります」とは違うけれども、誕生日そのものは目安であって、その日限定で特別に祝うこともないのだという。

 当然、ろうそくを立てたバースデーケーキもプレゼントもない。また一つ、軽くカルチャーギャップを感じた。


 さすがに生まれた時には「お誕生」のお祝いはするけれど、その後は毎年するということはなく、軽くお祝いを言う程度。あ、成人のお祝いはするらしい。

 そもそも「特別な日」にプレゼントを贈り合うより、日常的にもっと気軽に贈るそうで……うん、マークもなんでもない時にこちらが慌てるくらいの物をくれるね。

 しかし私ってば、そんな「小さな贈り物」すらできていないのですが。ああ、もう。


 誕生日を訊いた時、すごく不思議そうにされたから――ダニエル先生なんて月は覚えているけれどすっかり日にちを忘れていて、アデレイド様に教えてもらうくらいだった――習慣や感覚の違いがあるのは分かるし、彼らが全く気にしていないのも知っているけれども。

 私としては、仲良くしている人の誕生日くらい祝いたかったと思ってしまう。


 まあ、過ぎたことは仕方ない。来年の皆の誕生日は忘れないようにしっかりチェックして、今年の分はまとめてクリスマスでお茶を濁そうという算段だ。

 キリスト教徒でもないし、クリスマスもない世界なのにこじつけもいいところというのは分かっている。

 けれど「一年間の感謝をこめて」という意味では年末がいいだろうし、西洋寄りのこの国では、お歳暮やお年玉よりは合う気がするんだ。別に広めようという気はないから、今年限りになるかもだけど。

 で、ついでにサプライズにしてみようと思い立った。

 いや別に、驚かされてばかりだから、お返しをしようとかそんなことじゃないよ? なんとなくね、なんとなく。


 ケーキを焼いて、すこし豪華なメニューにして。森の端から常緑樹の枝を貰ってきてそれっぽく飾って。

 用意しているプレゼントはドライフラワーで作ったサシェとか、バディの寝床の新しいクッションとかそんなものだけれど。

 歌えない代わりにクリスマスの曲を思い出していくつかピアノで練習もした。

 消音装置なんてないから、私がこそこそやっていることはバレているけれど、アデレイド様は気付かないふりでにこにこ見守ってくれている。


 そんなこんなで迎えた今日。先月から舞い始めた雪がまた朝から降って、森の樹々に軽く積もるそれは見事なホワイトクリスマス。

 このまま根雪になりそうな降り具合に変わり始めた空の下、マークも診療所から戻ってきた。

 さあ、準備も整ってようやくみんなにクリスマスを言える。

 サプライズにしようと決めたのは自分なのに、内緒にしているのが難しくて仕方がなかった。やっぱり隠し事は向かないわ、私。

 驚いて、喜んでくれるといいな。


 ――Merry Christmas & Happy Holidays !




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