第4話 焦り微笑み
「ん?お前何してんだ?」
小早川さんは、びっくりした顔で聞いてくる。
最悪だ。こんなときに、こんなビッチ野郎(想像)に捕まってしまうだなんて。なるべく冷静を保って、言い訳をしなきゃ。
「いやぁ、ちょっと先生に用があるけど、職員会議やってるから、終わるまで待ってるんだ。」
嘘です。
「何で鏡持ってんだ?」
「今日寝癖が激しくて…。放課後になっても、気になっていたんだ。」
嘘です。
「今することかよ」
「人生の中でかなり大事なことなんだ。」
割とマジ。
「あんま、変なことしてたら、センコーに目付けられっぞ。気をつけな。んじゃまた明日。」
そうして小早川さんと別れた。
「あっぶなかったーーーー!!!」
今のやりとりで相当疲れてしまい、僕はかなりの冷や汗をかいていた。その汗だけで、浴槽が…汚い話はやめておこう。
でも、これ以上は本当に危険かもしれないから、この行為はもうこれ限りにするか…。
なんて思ってるから僕は彼女いない歴=年齢なんだな。人生苦労しなきゃ幸せは掴めない。お父さんとパンツがそのことを若くして、僕に分からせた。ありがとう、お父さん。ありがとう、パンツ作った人。
「気をつけな……か……。」
ふと、さっきの言葉を思い出した。小早川さんはめんどくさいことが嫌いだと言ったから、てっきり他人のことはどうでもいい人かと思った。
だけど、さっきの言葉は、明らかに僕を気遣った言葉だ。
「小早川さんを見限るのは、まだ早いってことか。」
僕はいつの間にか、笑っていた。
第4話 焦り微笑み 完