最悪の対面、上司はちびっこ魔王子
ちびっこは、真っ青になりながら・・物凄い勢いで唇を拭き続け、うがいを繰り返していた。
そのちびっこの姿とは裏腹に、シブメンさんはニコニコと楽しげな表情を浮かべながら、書類を手際よく分けていく。
私は、笑いをこらえながら書類を拾い簡単に室内のごみを片付けていく。
「てめ~何てことさせるんだ、おかげで最悪な目にあったぞ、ちび女」
いまだ青ざめた表情のままこちらを睨んでくるちびっこに、近づいて目線を合わせるようにかがむと、にこっと笑みを浮かべ
「自業自得です、仕事しないで寝ている人に同情する余地は一切ありません、嫌なら寝るなですよ、それにちび女ではありません」
きっぱりと言い放つゆかにちびっこは、それ以上は何も言い返せなかった。
シブメンさんはそんな二人の様子を笑いを堪えながら眺めていたが、さすがに言い返せないちびっこが憐れになったのか、このままでは仕事が進まないと思ったのか二人の間に立ち、フォローを始めた。
「ゆかさんもそれくらいにしてあげてください、殿下もあまりレディーをからかうのはお止め下さい」
ちびっこは渋々頷き、ドカッと音を立てながら椅子に腰かけた。
「では、改めまして紹介させて頂きます、今日から上司となるイリス殿下です、殿下、こちら本日より殿下付きの補佐をしていただく、宮原ゆかさんです」
「お初にお目にかかります、宮原ゆかと申します、本日より殿下のこもり・・補佐をさせて頂くことになりましたので、よろしくお願いします」
あぶないあぶない、つい子守りって言いそうになっちゃった、気を付けないとな・・にしても小さい王子様それでも、私より年上なんだよね、中身はともかく
「・・・イリスだ、よろしく頼むな、ちび女」
にやにや笑いながら言う、またちび女と言うちびっこについつい私は叫んでしまった・・
「アンタの方がちびだ~~~」
と
ええ、全力で逃げました、今までで一番早かった気がします・・ふふ、恐怖のあまり半泣きです、その上適当に走っていたので自分が何処に居るかもわかりません。
迷子になりました・・・
結局、半泣きになりながらさまよっている所を黒髪のこれまたシブメンさんに助けて頂き、ちびっこの執務室に案内してくれる事になりました。
「お手数をおかけして申し訳ありませんでした、どうやって戻って良いか判らなかったので・・」
何度も頭を下げてお礼を言うゆかに、シブメン紳士さんは柔和な笑みを浮かべ、軽くゆかの頭を撫でた。
「気にする事はないよ、ここに来るものは必ず最初は迷うからね、それにしてもどうして迷子になっていたんだい?」
シブメン紳士さんに案内してもらいながら執務室に戻るさなか、ゆかは何故迷子になったかの経緯をシブメン紳士さんは話し始めた、相槌を打ちながら聞いてくれるシブメン紳士さんについ自分の新しい上司の愚痴を話し始めた。
シブメン紳士さんは伊嫌な顔一つせずに聞いていてくれた。
「私もちびっこと言ったのは悪いと思いますけど、何度もちび女って言うのは酷いと思いませんか?」
「そうだね、レディーに対してその言い方は失礼だね」
さりげなく、レディーと言うシブメン紳士さんに照れながらアッと言うまに、ちびっこ達がいる執務室に着いた。
さすがにまだ怒っているよね・・上司怒らせてどうするだろ、私・・
でもこのままここに居ても埒があかないし、せっかく案内してくれたシブメン紳士さんにも悪いしと
そんな事を考えていたら、シブメン紳士さんが軽くノックをしてドアを開けていた。
ごめんなさい、心の準備をさせてください・・
そんな心の願いとは叶うことなく、シブメン紳士さんはそのまま中に入ってしまい、私も慌てて後追うと
ちびっことシブメンさんの驚きの表情を浮かべながら、シブメン紳士さんを見ていた。
「父上・・」
ちびっこ《イリス》は驚きの表情のまま目の前に立っている人物に声をかけた・・
えっ、父上?このシブメン紳士さんがちびっこのお父さん?
やばいです、全力でやばいです、おもいっきりちびっこの文句をシブメン紳士さんもとい
父親でもある、魔王陛下に話してしまいました。