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東方白妖狐  作者: 火之迦具土
山と都
38/41

参拾伍話 貴族の少女


ー白詠siedー


蓬莱山さんとの邂逅から一晩たって、私は前世では本の中の世界だった平安京を見て回っていた


やはり、私の知る史実の中の世界とは違うらしい


まず、茶屋などの看板娘などがいわゆる平安美人とは違う、前世の美人と同じ感覚だ


次が大きい違いだ、大通などを幻覚て隠れながら歩いていると、腰に刀を差した武士以外にも、袖や手の中に霊力を込めた札を持った陰陽師などが歩いていた


史実の風水関係の人も多そうだが、妖怪退治を生業にしてるものも多いだろう


そんな風に周りの観察をしながら歩いていると美味しそうな茶屋を見つける


姿を黒髪で、耳と尻尾を隠した状態にして茶屋に入る


やはり人気の店なのか席が空いていないため外にある席に座っていた黒髪の少女に声をかける


「……となり良い?」

黒髪の少女はこちらを振り向くと、少し端の方へ動いて長いすを一人分空けてくれる


「……ありがとう」

お礼を言って座っていると串に刺さった三色団子が五本運ばれてくる、それに対して銭を払い、団子を受け取る


それを一つ一つ味わって食べる

時折隣の少女が此方をチラチラと横目でみている


「…………ッン」

団子を一本持って差し出す


「いいの?」

少女が聞いてくるので串を彼女の方へ寄せる

「ありがとう。ねぇ、あなた名前は?」

黒髪の少女が意を決したように聞いてくる


「……桜雫白詠」

簡潔に自分の名前を答える


「…桜雫白詠……ねぇ、白詠…もしよかったら何だけど私の家で話でもしない? 今日暇で困ってるの」


少女は急に元気に話し始める、きっと先程までの静かな雰囲気ではなく、こちらの元気な姿が彼女の素なのだろう


「……いいよ」


私がそう答えると彼女は嬉しそうに笑う


「ほんと!? 私は藤原妺紅、さっ、行こう!」


腕を引かれて椅子から立ち上がる、その際残りの団子を他の者にバレないように袖の中の術式空間にしまう


「こっちが私のいえだよ!!」

元気に腕を引く彼女は最初の雰囲気などは無く、話をするのが楽しみで仕方ない様子だった


私は手の引かれるまま藤原さんについて行った




ー妹紅siedー


最近、父上がかぐや姫とやらに求婚を迫り、土台無理な難題をふっかけられて、悩んでいるため、暇になった私は通りの茶屋で時間を潰していた


自分でいうのもあれだが、私の産まれた藤原家はこの都で大きな権力をもつ家系の一つだった


そこで育った私は何不自由なく育てられた、しかし、ただ一点『寂しさだけが』いつも付きまとっていた


お家柄、同年代のものは私に話し掛けず、正妻の子でないために父上以外からは冷たくあたられた


そんな父上も最近はかぐや姫にご執着で私の相手をしてくれない


『寂しい』


いつも以上にこみ上げてきた感情を感じていると


「……となり良いですか?」

不意に声がかかる


驚いて無言で席を差し出すことしかできなかったが、そこに居たのは私よりも小さい少女だった


真っ黒な髪の中に隠された顔は、一部を見るだけできれいといえる程整っていて、最も目を引いたのは瞳だった


年に合っていない、まさに死んでいるかのような、光を失った瞳に思わず見惚れて、吸い込まれるような錯覚さえかんじた


「……ありがとう」


彼女のお礼の言葉で、現実に引き戻されて、急いで前を向く


しかし、どうにも彼女のことが気になってしまい、はしたないながらも彼女を横目で何度か見る


そうしている内に、いつの間に頼んだのか彼女の団子串が幾つか運ばれてくる


「……ンッ」


彼女は私が横目で見ていたのを、物欲しさと勘違いしたのか、団子を一本こちらに差し出してくる


「…いいの?」

見ていた物は違うとはいえ、同年代、しかも下心のない贈り物など久しく貰っていなかったため、緊張しつつ言葉を返す


その言葉に返すように、更にこちらに団子を寄せる


「ありがとう。ねぇ、あなた名前は?」


私は気になって彼女の名前を尋ねる


「……桜雫白詠」

と、簡潔に教えてくれる


「…桜雫白詠……ねぇ、白詠…もしよかったら何だけど私の家で話でもしない? 今日暇で困ってるの」


教えてもらった名前を反復して、思い切って名前を呼び、彼女なら私と何の隔たりもなく話してくれるだろう、という希望を込めて話を切り出す


「……いいよ」

彼女の返事に嬉しくなる、と同時に名前を教えて無かったことを思い出して、名を名乗る

「ほんと!? 私は藤原妺紅、さっ、行こう!」


名前を聞いても何の驚きもしないことに嬉しくなり、彼女の手を引き家に向かって歩き出す


私は彼女なら私の寂しさを埋めてくれる友人になってくれるのではないか、という期待に胸を膨らませて、通りを駆けていく


楽しくて、嬉しくて、仕方がなかった















私はこの日、友人が出来たと思って舞い上がっていた…………









毎度のことながら短くて申し訳ありません。

リアルの方もてんてこ舞いになる程忙しく時間がとれなかったのです。


来年はもっと早くしていきたいですね


誤字脱字の指摘、感想お待ちしてます。

読んでくださりありがとうございました。




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