弐拾弐話 洩矢の祟り神
ー黒姫saidー
咲耶姫がいなくたって数日が経った
あの日以来白詠は少し考え事をするようになった
そんなある日の朝
「鬼乱、私は信濃へ行くよ」
白詠が何かを決心したようにいってきた
「少し感傷に浸ってたけどもう大丈夫、私はすぐ行くけど鬼乱はどうする?」
涙で腫れた目で聞いてくる
「もちろん、行くよ」
私は白詠の髪を梳くように撫でる
しばらく撫でた後
「じゃあ、行こうか」
平和な『いつも』を過ごした社を後にした
社を出てから2日程歩いたが信濃がどこにあるかわからないため近くにあった小さな村に入った
「信濃への行き方を知らないかい?」
入って少しした所にいた婆さんにこえをかける
「あぁ・・・信濃かい?信濃は・・・・・」お婆さんの視線が止まる
お婆さんの視線を辿ると私たち二人の頭の上で止まっていた
そこには鬼の証である『角』と妖獣の証である『獣耳』があった
「ヒッ・・ヒィイイ!!」
お婆さんは腰が抜けたように地面に倒れてしまう、そしてよく見ると口から泡を吹いて気絶してしまっていた
「しょうがないねぇ、他を当たろう」
こんな事を繰り返して
時には人々に恐れられ
時には神々に追いかけられ
時には神々を殺すのを白詠に止められ
ついに、信濃という場所に着いた
ー白詠saidー
信濃に着いた
「鬼乱、此処ら一帯に幻覚を掛けて私の尻尾や鬼乱の角を見えなくするね」
「なんでそんな事をするんだい?」
「また、いままでのように人間に叫ばれたら面倒くさいからね」
(術式『幻』)
鬼乱に説明した後信濃の村一帯に術を掛ける「もう良いのかい?」
私はそれにうなずく
「じゃあいこうかね、白詠」
私たちが村に入って、人々にもバレずに進んでいると不意に声がかかる
「妖怪よ、此処がこの『洩矢 諏訪子』の治める地と知って侵入したのか?」
「白詠ばれてるじゃないか」
「まぁ、視覚は誤魔化せても妖力は誤魔化せないから」
声のした上空を見ると紫色の服に目玉の付いた奇妙な帽子を被った幼女が鎮座していた
「此処に素戔嗚尊という神は居るかい?」
鬼乱がそう聞くと
「素戔嗚尊は私の治める地とは違う場所にいると聞いたが・・・しかし、数日後お前らのいう素戔嗚尊達はこの地に侵略戦争を仕掛けてくるだろう」
そう言うと洩矢の神は一つため息をつき
「私はこの地を守るために今余分な力を使うわけには行かないのだ」
その言葉を聞いたときチャンスだと思った
「・・・なら、協力しますよ?」
「ふん、力も知らない妖怪と手を組む?冗談じゃない」
と鼻で笑われる
鼻で笑われた事に鬼乱の額に青筋が浮かんでいる
力にこだわりのある鬼だからだろう
「なんなら此処で力を見せてあげようか?」鬼乱は青筋を浮かべながらいう
「そんなに力に自信があるなら少しついてきな、少し離れたところに人間に害のある妖怪どもが集っているからそこで見せてもらうよ」
洩矢の神はそう言って飛び立った
「どうする?」
鬼乱に聞くと
「もちろん、行くよ!」
鬼乱も洩矢の神を追いかけて行ったのでため息を一つ吐き鬼乱達を追いかけて飛んだ
しばらく飛ぶと小さな森が見えた
洩矢の神が地面へ降り立ちそれに私達も続いた
ー諏訪子saidー
いきなり私の村に入ってきた妖怪二匹を試すために村から離れた小さな森にやってきた
「この中に妖怪どもが集っている、それを殲滅してくれれば力を認めよう」
「・・・鬼乱、村の結界解くね」
私よりもほんの少し大きい白髪の妖怪が隣の妖怪の袖を引きながら言う
「あぁ、もう大丈夫だからねぇ」
「『解』」
次の瞬間、鬼乱と呼ばれていた妖怪には鬼の証である角が、白詠と呼ばれていた妖怪には狐の尻尾と耳そして腰には真っ黒な太刀が現れた
「じゃあ、私達は妖怪を殲滅してくるよ、行くよ白詠」
「うん」
二匹は森へは行っていった
少し経ったあと森の中には血なまぐさい臭いが充満し、そこら中に肉片が飛び散っていた
そんな空間に、立っている二匹の強さは先程の戦闘・・・いや、殲滅でイヤと言うほど分かった、少なくとも私より強い
「どうだい、私達の強さは?」
鬼乱は自身の角を撫でながら言う
その態度が癪にさわるがこの二匹が味方なら勝率もかなり上がるだろう
「分かった、協力を受け入れよう・・・だが、条件がある」
「・・・どんな条件?」
「まず、これは私の民を守るための戦争だということを忘れるな
次に、戦争だから私か相手が降参したら途中であっても戦闘を止めること・・・いい?」
「あぁ、いいとも、なっ白詠?」
鬼乱が承認して白詠にたずねると
『コクッ』
と頷いた
「・・・少しの間、よろしくお願い」
白詠から差し出された手を私は握り返した
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