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第4話:日常 

「…で、お前らか」

「やいお前!昨日はよくもやってくれたな!」

 僕の家へ向かおうとした道中。彼女と楽しくおしゃべりをしていたところに、急に昨日のガキどもが僕らの目の前に現れた。まるでポケモンみたいだなあ、なんてのんきに考えていたのだが、彼ら、どうやら機能の事をまだ疎ましく思っていたらしく、仕返しに来たらしい。至極どうでもいいことに精を出すんだなあ、と、子どもらしい行動におもわず生暖かい目を向けてしまう。

 さて。

 ここはいったいどうするべきなのだろうか。昨日のように撃退してもいいのだが、今回は生憎セルフィもいる。できれば穏便に済ませたいところである。

「まあまあ。昨日は僕が悪かったって。な?一緒にお母さんに謝ってあげるから」

「ガキ扱いするなガキ!」

「いや、お前ガキだろうに」

 もしかしてとは思ったが、頭悪いのか?こいつは。いや、年相応なだけか。

「そう言えば、昨日はどうしてセルフィを?」

「そいつの事が気に入らないと俺の子分が言ったからだ!」

 子分…と、言うと後ろにいるちっさいのとでっかいのか。

 なんていうか、お前らマトリョシカみたいだな。と言っても恐らく伝わらないので言うのはやめておいた。

「まあ、昨日のことは謝るからさ今日は帰ってくれないか?」

「は!誰が――「おいアレン!!」――っい!?パパ!?」

 不意に、僕らの背後からダンディーな声が聞こえたと思ったら、その声を聴いた彼は驚いた様子で言った。

 パパ?

 後ろを振り向くと、そこには声に似合わずいかつい外見をしているおっさんがいた。

「いや、すまないね。アリオン家のお坊ちゃん――シキ君だったかな?」

「あ、は、はい」

「事情は聞いているよ。それと君がセルフィちゃんかい?」

「うぇっ?あ、は、はい」

「本当にすまなかった…何とお詫びすればいいか…」

「い、いえ!もう大丈夫…です」

 そこで大丈夫と言えるか。どんだけ出来た子なんだ。

「またあとでそこのバカ息子と一緒に謝りに行くから…ほら!もう帰るぞ!カイエルとミルも帰りなさい!」

「「は、はははははい!」」

 あの男の子…アレン君だったか?彼の父親が真面目な人でよかった。

「すまなかったね。二人とも。デートの邪魔をしちゃって」

「デ、デデデデート!?」

「あれ?違ったのか?まあ、何位白、邪魔をしてしまってすまなかった…。アレン!帰るぞ!」

「え!?ちょっと待ってくれよパパ!」

「早く!帰ったらママにたくさん叱ってもらうからな!!!」

 アレン君のお父さんは、そのままアレン君の耳を引っ張って去って言ってしまった。…子分の彼女らも、その二人について行ってしまい、この場には、ただひたすら唖然としていた僕と、顔を真っ赤に染めているセルフィのみとなった。

 なんというか、嵐のような人たちだったなあ。

「…まあその、なんだ」

「ふえっ!?」

「いや、その…行くか」

 無言で僕の手を握る。おいやめろよこっちすげえドキドキするから。

 そのまま、僕らは終始無言のままアリオン家へと向かうのだった。




「かーわーいーいー!」

「あ、あわわわわ///」

 10分ほど歩いて着いた、アリオン家。

行くときは考え事をしていて気が付かなかったのだが、案外ご近所さんだったったことに気付く。これならいつでも遊べるな。うん。

 まず最初に始めたのは、4人で住むには広すぎるこの家の案内である。遊び場になりそうな場所を探すというのも忘れずに、最初に僕御用達の書物室に来たのだが。

「んふふー!頬ずりしちゃおー!」

「ふ、あああ…あうう…////」

 書物の整理をしていたのであろう母さんとばったり出くわしてしまったのだ。所謂かわいいもの好きである母さまは、案の定というべきか容姿やら諸々が妖精のようなセルフィを見つけた途端、こんな風になってしまったというわけである。

 母さんから過度な愛情を受けている当の本人、セルフィは目をぐるぐると回して顔を赤くしながらおどおどしていた。

「母さんいい加減にしなさいな」

「…っは!?…いけない!私ったらまた…」

「はぁ…はぁ…」

 僕が子供ながらのソプラノボイスで重低音を出して、母さまに注意するとようやくセルフィから手をぱっと離した。

 この溺愛を毎日のように受けている身としては、慣れたものである。

「大丈夫か?セルフィ」

「う、うん…何とか…」

 はあはあと言いながら、顔を真っ赤に染めている。白い肌はほんのり赤くなっており、少し扇情的である。

「あ、あはは。ごめんね?セルフィちゃん。私かわいいものに目がなくって…」

「い、いえ。お気になさらず…」

 差し出した僕の手を握りながら、肩で息をしつつ、そう答える。

 そういえば、昨日は結局紹介ができていなかった。それを思い出し、彼女の紹介をした。

「セルフィ、行こう」

「え?でもお母様が…」

「お母様って…今ここにいたら面倒だぞ。…見て見ろあの顔」

 僕ら二人を見ながら、母さんはト○ロのように笑っていた。あれは、極度に興味を示している証拠である。こわい。

「行こう」

 母の顔を見た後は早押しのように即答であった。

 一人にやにやしている、掃除のおばちゃんみたいな格好の母さんを放っておき、今度はボードゲーム等がおいてある部屋へと足を運んだ。




「わー!すごーい!」

「だろ?…んまあ、僕が買ったわけじゃないから、真にすごいのは僕の両親だけど」

 ボードゲームの置いてある部屋。通称ボードゲームルーム。ここで日々リリィさんと対決をしてきたものだ。

 なぜ、対決したのがリリィさんだけなのかというと友達がいないというのが最大の理由だが、もう一つ理由がある。

 それは、両親ともどもボードゲームの存在を知らなかったのだ。それを聞いた時にはあきれたものだけれど、この世界。ボードゲームはあまり一般的ではないらしく、知る人ぞ知る、という遊びなのだという。因みに、この部屋にあるボードゲームはすべて、就任初期にリリィさんが給料代わりにもらったものらしい。

 おそるべきリリィさんである。

「セルフィは、なんかやったことある?」

「えーっと…むかし、おじいちゃんの家でオセロなら」

「ん。じゃあ、オセロだな」

 えーっと…オセロオセロ…。

「あった。あった…ってこれ、ダイヤモンドゲームじゃねーか!」

 何でこんなのがあるんだよ。マイナーすぎるわ。

 えっと、ほかほか…っと。

「この辺にあるはずなんだけどなあ…お。これこれ…って今度は将棋…しかも大局将棋って」

 今度リリィさんとやってみよう。いい暇つぶしになりそうだ。

 くっそ…なんで、珍しいのばっか出てくるのにメジャーなオセロは出てこないんだ。

「おかしいなあ…仕方がない。リリィさーん!」

 某ネコ型ロボットのド○えもんを呼ぶテンションで、僕はリリィさんに助けを乞うた。

「はい。お呼びですか?シキくん」

 すっかりお仕事モードのリリィさんは、瞬歩をほうふつとさせるスピードで、僕の目の前に現れた。もう、すっかり慣れてしまったので特に突っ込みはしない。

 この人は基本チートなのだ。

 初めて見たセルフィは若干固まっている。

「オセロってどこにあったっけ?」

「ああ…あれですか?…なるほど。セルフィ様と一緒にやるんですね?シキくんが人並みに遊んでくれることを大変うれしく思います。お姉さんは悲しいです」

「おい。それじゃあ、まるで僕が普通じゃないみたいじゃないか」

 そういうと、わざとらしく驚いた顔をしたリリィ。

 うわ。思った以上にむかつく。

「…なんだよ?」

「いえ。普通の子は生まれて数ヶ月で言葉を発するのかと感心しまして…いえ。戯言はいいですね。…はい。オセロです」

 余計な御世話だこの野郎。

 そういう前に、彼女はぴゅーっとどこかに消え去っていた。

 逃げ足の早いメイドだ。

「…んじゃ、やるか」

 そういって僕は後ろを振り返る。

 未だセルフィは、フリーズしたままである。スペックの低いPCのようだ。

 …まあ、リリィさんを見たら、みんなそんな反応をするはずだろう。今の僕でもちゃんと対応できているか不安なくらいなのだし。

「おーい。セルフィ―?」

「…………っは!?」

「…えっと…」

「あ!オセロやっと見つかったんだ!はやくやろー!」

 どうやら、こいつの思考停止はリリィさん参上の瞬間に始まったらしく、思い切りさっきのことをなかったことにしているらしかった。いや。あれは知らなければ知らない方がいい世界だ。うん。そのはずだ。

 …その後1時間ほどオセロをやる。その結果、わかったことがあった。

 彼女どうやら、オセロが神的に上手いらしい。

 頭の良さが垣間見えた瞬間であった。


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