第34話:「さあ立ちあがれ!」
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お知らせ:モチベーションが上がらないため、1週間ほど間あけます。1週間後には必ず投稿するんで。
許してください!なんでもしますから!
ミカド君とグレンのもとへと行く前にレンに前もって言われた場所へと、ミカド君とグレンを連れてやってきた。そこは、女子禁制のとある場所で、1年生の男子全員は余裕で入れるこの場所を、かつて研修旅行に来た先人たちは代々『聖地』と呼んでいたという。グレンが言うにはどうやらこの『聖地』、先人たちは僕らと同じくして覗きの作戦とかを考えていたらしく、ペンやら大判用紙やらがそろっており、覗きに対してとてつもないやる気を感じられた。
彼らが果たして無事ですんだのかは分からないけれど、僕らも成功させないといけないな、という妙な義務感が生まれている。
『おい。マジかよ……あのミカドとグレンを連れてきやがったぞ……』
『ああ……なかなかやるなあの落ちこぼれ』
部屋に入った僕らを見て皆がそんなつぶやきを発する。やるな、と思ったなら落ちこぼれとかいうな。しまいには泣くぞ。
「なんだこれだけか?」
「あ、ああ。EクラスとDクラスのほぼ全員の男子がそろっているだけだ」
レンも相当驚いているのか、少し冷や汗をかきつつそう答える。
「(おいシキ!マジで連れてくるとは思わなかったぜ!)」
瞬歩を彷彿とさせる速さで、僕に肩を組んでくる。
「(いったいどんな手品だよ!)」
「(な、内緒かな)」
さすがに片方はエサで釣った、もう片方は脅した、とは言えなかったので、そう言葉を濁しておく。
「ふむ……これだけだと少ないな。どれ。私が行ってきて探そう」
どうやら、予想通りに進んでくれたようだ。……というよりグレンやる気満々だな。いや、僕に例の話が握られているから手を緩めるわけにもいかないと、そういうことか。
まあ、理由はどうでもいい。皆を連れてきてくれればそれでいいのだ。
「すこしでてくる。貴様らは作戦を考えておけ」
そう言って、部屋を出て行く。
中心には机が設置されており、グレンは僕らを一望した後、そこまで歩いていき、大判用紙を手に取り、思い切り広げた。
大判用紙には、既にここから浴場までの地図のようなものが印刷をされている。量産をしたんだろうか?謎の気合の入り方だ。
「さてお前ら。俺の前に来い。そして聞け」
大声を発しつつ、全員を自分の前に集める。
忘れていたけれど、ミカド君もそれなりには人望はあるんだったな。みんなもすでに真剣そのものな目をしていた。
「お前ら!女子の裸を見たいんだろう?俺も見たい(主にセルフィさんのが)!そのためなら何でもやれ(俺のために)!(お前らの)屍なしになしえない栄光をつかみ取れ!停学がなんだ!先生がなんだ!女子の(主にセルフィの)裸という名の宝を(俺の)その眼に然りと焼き付け(させ)ろ!」
『うおおおおおお!やるぞ!やってやるんだ!』
『ミカド!感動したぜ!ただのセルフィさん狂いじゃなかったんだな!』
『お前も今日から俺らの仲間だ!うおおおおお!』
男泣きをしている人や、すごいテンションの人と、みんな大熱狂のところ悪いけれど、僕には彼の()内野言葉が何故か聞こえてきていたため、どうしようなく彼らを悲しみの目線で見てしまう。
ま、まあ、彼らも盛り上がっているので、そんな無粋なことは言わないけれど。……ああ。レンもつられてるよ。
暫くしてから、ノックが外から聞こえてきた。一瞬先生かと皆身構えるが、入って来たのは金髪で少し疲れたような表情をしたグレンである。「おい。他のクラスの奴らも連れて来たぞ」と、そう言って、グレンが『聖域』へと入ると、その後ろからはぞろぞろと部屋着を着込んだ少年たちが入って来た。おそらく、D〜Aの男子がほとんど集まっているんじゃないんだろうか?
全員が、ミカドを先頭としてぞろぞろ座っていく。
『おいミカド。覗きってマジか?』
「ああマジだ」
『グレンからある程度聞いてはいたが、本当にやるとはな…』
『停学は免れないぜ』
『でも覗きたいよなあ』
『ああ!』
皆馬鹿だなあ…だがそれがいい。
『おい。なぜか落ちこぼれいんぞ』
『邪魔でしかねえよ』
何で僕をそんな的確に見つけたんだよ。
……ま、まあ、クラスは違えど男子は男子ということか。さっきのような演説をミカドがしている中、腕を組みつつどういうふうに行くのか、と思考していると、演説がちょうど一区切りしたあたりで、急にグレンが僕の腕をつかみぐいと持ち上げた。
彼よりも身長が低く、体重も軽い僕はいとも簡単に持ち上げられる。なぜ僕を立ち上がらせたのかわからないままグレンに「ど、どうした?」と質問をすると、
「ちょっと前でろよ、お前」
グレンが答える代りに、ミカド君が前の方でそう大声でそんなことを言い始めた
「はあ!?僕が?」
何を言っているんだこいつは。今ので一気にみんなテンションが下がり始めちゃったじゃないか。
「いいから。お前が俺とグレンを連れてきたんだろ?」
「そ、そうだけれど……」
計画そのものを作ったのは、僕じゃないんだけれど。
困惑しつつ、ミカド君とグレンを交互に見ていく。
『なんだよこいつかよ』
『ミカドとグレン連れてきた時点でこいつの出番は終わりじゃんか』
『Eクラスのしかも落ちこぼれに何ができるんだよ』
EクラスやらDクラスとか、全てのクラスの男子が口々に文句をこぼしていく。言いたい放題な彼らに、僕も頭に来た。
言ってやろう。言い放ってやろうじゃないか。
未だ僕をまっすぐ見続けるミカドにクスリとほほ笑みかけ、そして、そのままグレンにアイコンタクトをしてて腕から手を放してもらった。人の間を抜けつつ、彼の隣に立った。訝しげに皆が僕を見ている中、レンだけは心配そうに見ている。安心しろ、という意味を込めて、彼にも同じように笑いかけると、僕は口をゆっくりと開いた。
「皆聞いてくれ」
その一言で、少しざわめきが収まる静かになる。
「僕は確かに落ちこぼれだ。英雄の息子なのにEクラスだ。優秀な妹だっている。釣り合わない幼馴染もいる。こんな僕と友人になってくれたレンや、ミカド、グレンには感謝してもしきれない」
ミカド君が横で小さく「友達じゃなくて恋敵だ」と文句を言っているが気にしないでおく。
「僕の事が嫌いな人だってこの中にはたくさんいるんだと思う。けれど、今回だけは、どうしても、どうやってでも、何をしてでも勝ち取りたいんだ。きっと皆同じ気持ちだろうと信じてる」
だから、と僕はそこで息を大きく吸って、一層大きな声を引き出す。
「今だけは僕を信じてくれ!みんなで一致団結をしてくれ!きっとこの戦いは、それだけでもきっと大きく違うはずだ!」
なんか、だんだんテンションが上がってきてしまっている。内心冷汗をかきつつ、続けることにした。
「さあ立ちあがれ!」
なんだかもう収拾がつかないので、内心涙を流しつつ、大げさに両手を広げる。
「両手を掲げろ!」
皆の眼がだんだんと輝いていくのがわかる。
「そして叫べ!」
最後にもう一度息を大きく吸って、叫ぶように言った。
「僕は、僕達は、得るんだ!欲望という名の宝物を!!」
『う』
『うおおおおおお!!』
皆が次々と立ち上がり、片手やらを大きく掲げつつ、最終的には感性があふれた。男だけなので、暑苦しいだけなんだけれど。
『そうだ!やるんだ俺たちは!』
『すまない落ちこぼれ、いや、アリオン!』
『お前も男だ。俺たちと同じ夢を持つ者だ!』
『やろう!お前も見届けよう!桃源郷を!!』
涙を流す人や、鼻水を垂れ流す人、皆が皆そんな状態であった。レンもその中の一人で、グレンやミカド君もそのテンションにやられたのか、鼻水をすすりながらも、満面の笑顔であった。
心の片隅では、僕らこれから覗きするんだよな、と、やるせない気持ちがありつつも、僕もそんな皆に有り難う!とか感謝の弁を述べていく。
「それじゃあ、どう潜入していくかを考えよう」
ミカド君が机の上に、旅館内が記された大判用紙を広げた。どうやらミカド君とグレンが中心核としてやるようで、Aクラスの他の人は、サポートのようなものを取り持つらしい。
このテーブルのほかに、3つテーブルが設置されていて、他のテーブルのリーダー的人がメモをしながら、他の人にも伝えるという形のようだ。どうしても一つのテーブルだと限界があるということでこういう形をとったという。
闘技会にてレンと戦っていたメガネの男の子――ハイド君もてきぱきと自分の仕事をこなしている。口もとがにやついているのと、あの仕事のこなしようを見ると、彼も同じくして楽しみにしているようだ。所詮彼も男子ということだろう。
「此処から女子の風呂まではおおよそ五十メートル。ここを素早く、そして誰にも見つからず移動する必要がある」
「誰が測ったんだよ……」
「ミカドだ」
「ああ……」
確かに彼なら違和感なくそこまで行けそうだ……寧ろ女子に歓迎さえされそうである。
「女子風呂に行くまでの道は主に三つ存在する」
グレンが指を四本立て、その三つのルートを見せていく。
「まずは、中心の廊下。ここが一番近道だ。だが、道が広く、さらに危険度も高い」
ここを見ろと、とある部屋を指差した。
「此処には先生が寝泊まりしている場所がある」
そうか。そんなに大人数で通ったら、絶対に先生にばれる。精々通れるのは二、三人といったところか。ああ、成程。今納得した。裏庭に行くために僕の通った階段はかなり近くに存在している。だからあの時先生に見つかったのか。
「そこで、第二の道。この先生が寝泊まりをしている、部屋の裏からまわっていく」
グレンが二つ目に示したのは、『聖域』からでて少し遠回りをし、食堂の前を通っていくという道。渡り廊下を1つわたるものの、大通りを通る道よりはだいぶましだろう。
「で、だ。これが最後の道」
そう言って示したのは、なぜかこの部屋の右側だった。見てみると、そこには何もないように見えるんだけれど……。
「あそこには何もないように見えるだろう?シキ」
僕が、あちらを見ていたのに気付いたのか、僕の方を向いてそう言う。
「あ、ああ」
「実は、あそこには誰もが気付かないような仕掛けがしてあるんだ」
「仕掛け?」
そう問いかけると同時に、彼は右側の脳へと歩いていく。彼の後姿を、僕やその机にいた皆がその背の行方を見送る。
彼は、壁から少し離れたバス世に立ち、何か言い始めた。
「《壁よ 見えざる壁よ 今その時来たれり》 解壁」
呪文と、その詠唱だろう。そのセリフを言い終わった瞬間、壁が大きく光り輝き始めた。僕の光よよりもずっと大きい輝きだ。
目を腕で伏せつつ、おさまるのを待つ。
「もう大丈夫だぞ」
グレンがそう言ったので、腕をほどき、先ほどグレンがいた場所を見やる。
そこには大きなドアが存在していた。その装飾はとてつもなく、それこそAクラスの寝室など目ではない、と思える程だ。
『な、なんだよこれ…』
誰かのつぶやきが聞こえた。
「これは、かなり昔の一年生の手に作られた、教師は誰一人として知らない、まさに秘密の女子風呂を除くための道だ」
グレンは、今までにない程のドヤ顔で、まるで秘密道具を取り出した青狸のような笑顔を若干殴りたくなったのは内緒である。
シキ:テンションが上がると有る事無い事が口から出てくるタイプ
レン:レンの霊圧が消えた…
ミカド:女子風呂の前を通るだけでも女子からキャーキャー言われる存在。若干怖い
グレン:「ここまでやったら最後までやってしまおう」というやけくそ
モブ男子:EクラスからAクラスまでいろんなクラスがあっていろんな個性があるけれど、総じてモブ。それ以上でもそれ以下でもない
解壁:シキよりだいぶ前の代の1年生が作り上げた魔法。高額迷彩のように、あたかも壁があるように見せていた。応用すれば透明人間になれそう