第33話:「乗った」
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次の日の夜。
三日目を過ごした僕たちは、夕飯を食べていた。因みに夕飯はバイキング形式となっており、年齢も年齢な王都生は皆はしゃぎまわっていて、かく言う僕も年甲斐もなくハイテンションになってしまう。年甲斐にとは言ったが一応は僕も彼らと同年代なんだけれど。
まあ、そんな高いテンションがずっと続くはずもなく皆ががやがやと楽しんでいる間、僕は一人で白米とから揚げをもそもそとする羽目になるのだった。
今日はいろんなことがあったなあ、と感慨にふけりつつ、ミックスジュースをストローでちょびちょび飲んでいく。
繁華街の見学だったり、後は歴史記念館のような場所に回ったんだが、どこに行っても人が多く、さすが観光地といった感じでなかなか落ち着けなかったのだ。自由時間は今日もあり、その時には裏繁華街というところに行こうと思ったのだがセルフィの邪魔され行くことはかなわなかった。
明日もあるのだし行きたいのだけれど、まだ邪魔されそうだなあ……。
あとは、霊の小っちゃい女の子――メイとの再会も果たした。セルフィたちに紹介しようと思ったのだが、いつの間にか消えてしまったんだけれど。人の居ないところで見つけたので明日チャンスがあれば、あの辺りを探すのもいいかもしれない。
と、そこで突然アンカー先生の怒声が走る。どうやら、食事終了時間が過ぎてしまったようで中断させられてしまい、その日の夕食は終了となった。
が、大騒ぎだった生徒たちの余韻は覚めるはずもなく、やはりそこも年相応というべきか、部屋に戻った後も、生徒たちは騒いでるようで、レンもそれに漏れず、相部屋である僕が軽い被害を受けていた。
うざったらしいことこの上ない。
「でさー!?んでさーっ!?」
「はー。ふうん。なるほどなー」
こんな感じで、僕は本を寝転がりながら読みつつ、彼の話を聞き流す。本をもうそろそろ読み終わるかなーというところで、レン今まで話していた話を切り上げ、こんなことを話し出した。
「あ!そういえばさー。今日E組の男子とで話してたんだけどさ!」
「おいなんだそれ。僕そんなイベント起きなかったぞ」
「イベント?なんだそれ。まあいいや!話してたんだけどさあ」
「よくねえよ」
「うるせえなあ。まあ聞けよ」
この野郎。と、殴りかかろうと拳を握るが我慢しておく。
「でさでさ?今日この後、女子が風呂に入るじゃん?」
何を言っているのか、こいつは。そりゃ入るに決まっているだろ。
「あ?ああ、まあ入るな。それがどうしたんだ?」
「風呂、のぞこうぜ」
レンは、さっきのままのテンションで、朗らかに、当たり間sのように、そう言い放った。
バカじゃないの?と心の中でそう思ったはずで、先生にばれたら停学は回避不能だし、きっと親にも連絡が入る。それだけは避けたい。そんな犯罪まがいのことを、と、そんな話に乗るはずないだろ、と、レンに断りを言おうと思っていた。
はずなのだが。
「乗った」
思っていたこととは裏腹のことを言っていた。僕も所詮男ということか。自分で自分に心の中で毒づくのだった。
「で?一体誰が行くんだ?」
「ああ。E組と、D組は確実らしい。その上はまだ分かってない。乗るかどうかも分からないからな」
「なるほど」
女子一人を除くとして、それは、イコール女子全員を相手するとなる。それだけではきっと足りないはず……もう少し人員がほしいところだ。
と、なると勧誘をしたいところだが。
「その勧誘だが、誰も上のクラスに繋がりがある奴いなくてよ」
「ふむ……で、僕らにお鉢が回ってきたのか」
「お鉢…?」
「僕らが頼まれたってこと」
「まあ大体そうだな。無言の圧力だった」
テンションが高かったとはいえ、あれには勝てねえわ。と、思い出すように語る。いざとなった時の男子はすごいからな。
獲物を狩るような目をしていただろう。
なんだかこういう話をしていると中学3年の修学旅行を思い出す。あの時もクラス全員の男子諸君で先生群を突破しながら風呂を見に行ったものだ。異性の裸を見たのはあれが最初で最後だったかもしれない。あれは最高の思い出といわざるを得ない。
しかしまあ、こうして再び肌色の桃源郷を目指す日が来るとは思わなかった。あの時の経験を存分に生かさせてもらおう。
……それに相手は僕的には年下。それだけで難易度はぐんと下がる。
せるふぃという存在はいるものの、逆に言えば、やつを崩せばそれでもう終わりなのだ。ククク…上の見せ所だぜ。
うまくないな。
「さて。じゃあ、次に巻き込む奴は決まっているな」
「……あいつら、乗るのか?」
「さあ?やってみねえとわかんねえよ」
そう言って、僕は本を閉じ、ゆっくりと立ち上がった。……さて。人員集め、頑張るとしよう。
と、そうしてやってきたのはミカド君とグレンの部屋である。ちなみにレンは置いてきた。
事前に聞いた話では、ここであってると思うんだけれど……しかし、やはり部屋の格差がすごい。ドアの時点で既にそれを感じる。武骨なEクラスのドアとは違い、いうなればスウィートルームのようなドアだ。
豪華な装飾が目に優しくない。
さて。そろそろ周りの目もきついので、中に入れてもらうことにしよう。
「おーい。ミカド君、グレン?居るかー?」
『え!?あれ?シキか!?』
反応があったが、なぜか、その声は慌てている。やだ……中で何やってたの…。
……ナニやってたのかな。
失礼なことを考えていると、豪華な装飾のドアが内側に開いた。中からグレンが少し乱れた状態で出てくる。おい。ちょっと待て。お前ら本当になかで何やってたんだ。
「ど、どうしたんだ?シキ?」
「いや、ちょっとしたお誘いを…」
「そ、そうか。まあそこだと目立つ。中に入れ」
「お、おう。し、失礼します」
まあ、一昨日のあれはちょっとしたネタだ。まさか本当にそんなことがあるはず……うん。これは友人として失礼な妄想だ。
さっさと入って事の概要を話そうじゃないかとまず感じたのは中に入れば、芳香剤の匂いだ。さわやかな香りが鼻をくすぐる。そして、外の度にも負けない、さらに豪華な装飾。全体的に白と黒が多い、西洋っぽいクラシックな部屋だ。
内装はグレンの口振りやら、容姿やらとやけにマッチしている気がした。
しかしながら、
「へ、変態だああああああ!!!」
乱れた服で、ベッドに寝転がるミカドの姿だけが、妙に浮いていた。いや、おいやべえって二人でナニやってたのかよ。
「え?…………あっ…。まて、おい。誤解だ。誤解だってば!シキ!おい。マジでこれ誤解だからああああ!!」
あまりの衝撃に口調が乱れるグレン。キャラ崩壊も甚だしかった。
しかし二人がマジでそんな関係だったとは……。
「誤解じゃねえじゃん!ふ、二人でベッドで何やってたんだ!ナニやってたんだろ!?」
「ナニってなんだよ!?」
「ナニは何だぁぁぁぁ!」
閑話休題
「落ち着いたか?」
「……未だ疑いつつあるがな」
「いい加減にしないと殴るぞ」
「ごめんなさい」
「よし。……んで?何の用だよ。アリオン」
なぜかあったちゃぶ台に三角形の形で並ぶ僕とグレンとミカド君。出された魔力水でのどを潤しつつ、とりあえずは彼らに覗き作戦の概要を話すことにした。
しかしながら、こいつらはノリがいいとはいえまじめだ。変に話したらきっと断れれる。いざとなったら、ミカドは大丈夫だが、グレンはいけるだろうか?難しそうだが、まあとりあえずは話してみるとしよう。
「いや、実は男子全員で女風呂覗こうと思って」
さっきのことは忘れようと、全力の笑顔でそういってみる。
「「死ね!!」」
「へぶぅ!」
ストレートでグレンとミカドに殴られ、変な声を挙げながら吹っ飛ぶ。まあ、こうなるとは思ったけれど。笑顔で言ったのがまずかったんだろうか。
「きゅ、治療」
「お前何言ってんの!?馬鹿じゃないの!?」
「ば、馬鹿だとぅ!」
なんてことを言いやがる。こいつは。
「馬鹿だよ。正真正銘のな!犯罪に走るとは見損なったぞシキ!」
グレンが青筋を立てながら言う。
だが、だがな。グレンよ。
「犯罪だ、しかしな、覗きという行為には男の夢が詰まってるんだよ!」
「やっぱバカか!」
「くそっ…一理あるな…」
「ここにもバカがいた!」
ミカド君よ。わかってくれるか。さすが女の子にだけ優しいフェミニストだぜ。それに比べてグレンは……と、ため息をつく。
「まあ、やらないけどな」
「そういえばそろそろセルフィが入る時間だなー」
「おら!行くぞグレン!」
セルフィの名前を出した途端、鼻血を一滴たらしつつ、グレンにぐいと顔を近付かせる。簡単に扱えるなあミカド君。そういうところ好きだぜ。うん。……まあ、お前なんざにセルフィの体は見させないけれど。
グレンはいまだ渋い表情のままだ。
「しかしだな。それは犯罪であって、見つかれば停学は免れん。しかも私は生徒会の身だ。やるわけには……」
「さっきのアクシデントに尾ひれつけて噂流すぞ」
「やりますやらせろやらせてください」
うん。グレンが理解のある人でよかった。多少強引な感じになってしまったけれど、これで戦力は確保できたし、ほかのクラスは集まってくることにもなるだろう。
「……シキ…貴様これは貸しだぞ」
子供とは思えない重低音を発しながら、涙ながら僕に言うグレンが、今はちっとも怖く感じられなかった。
シキ:覗き計画犯。因みに涼香の裸は見れていない
レン:覗き初犯。テンションが上限突破
ミカド:セルフィのことになると何も関係なくなるのが玉に瑕。フェミニスト(笑)
グレン:比較的まとも。ミカドとは特別な関係ではないといっているが真相やいかに