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よくある異世界転生モノ  作者: 向ヶ丘こよみ
僕らの研修旅行とストーカー
28/37

第27話:「いらっしゃい」

「悪い。僕ちょっと行きたいところがあるんだ。3人は別の場所に行っててくれないか?」

 冒険者ギルドを出た僕達は次に行く場所を決めていたところだった。僕はそんなふうに持ちかける。

「え?じゃあ、そこに皆で行こうよ」

「いや。ちょっと一人になりたいんだ。悪い」

「「えー」」

 セルフィとアイちゃんが口をそろえてそう言った。

 大変可愛らしいんだが、その可愛らしさに負けるわけにはいかない。一人になりたいというのも事実だけれど、きっとあそこに行ったらテンションがおかしくなるだろうから、その姿を見せたくないというのが一番だ。

「一体どこに行くんだ?」

 レンが質問をする。

「え、えっと、内緒だ」

「「えー」」

 だから声をハモらせるな。かわいいだろうが。

「ま、まあいいじゃないか。俺たちはユノムールとグレンを探そうぜ」

 レンがその場をたしなめるように言う。

 ナイスフォロー、レン。

「むう。あしたは皆で行こうね!」

「おう。わかった」

 納得はしていない様子だが、レンのおかげか、理解はしてくれた様子のセルフィである。

「じゃあ、二人を頼んだぞ!レン」

「…あれ?これ俺ひょっとしたらかなり面倒な役回りをしたんじゃないか?」

 別れ際につぶやいたレンの一言は聞かなかったことにした。

 グッジョブレン。グッバイレン。




 さて、まあ彼らと別れたわけだが、僕の行きたかった場所というのは、この異世界に来ていきたかったところの一つでもある。

 王都学園にはそれがなく、まあ、村にはあったわけだが、行くことを禁じられていたんだ。まあ、多分安全面を考慮しての事なのだとおもうのだけれど。

 遠まわしになってしまったが、詰まる所、僕が行きたかったのは――。

「うっひょー!きたー!」

 ――武器屋だ。

 思わず奇声を上げて、道行く人々の視線を浴びてしまった。まあ、気にしていないがね!いまは、この武器屋の方が重要である。他人の目なんか気にしてられるか!なんか若干ひときわ強い視線を感じるけれどそれすらも気にしないよ!

 店の前にある看板には武器屋アーノルドと書いてある。店名でいいんだよな?

 ドアをゆっくりとあけると、中から、木のいい匂いが漂ってきた。若干鉄臭さも交じっているのは武器屋だからだろう。

 店の中は案外落ち着いていて壁には剣やバトルアックスのような近接武器から拳銃や弓などの遠距離武器まで置いてある。

 ドアの向かいに位置する受付には落ち着いた雰囲気を出すおっさん…もといおじさんが座っていた。

「いらっしゃい」

 そのおじさんは渋い非常にかっこいい声でそう言った。

「おや?その制服…ああ。もうそんな時期だったか」

 俺の制服を見て何かを思い出すように斜め上を向いた。

 そんなおじさんを放っておいて僕は壁にかかっている武器を見ていく。

 今の僕の目は多分冒険者カードを手に取っていたセルフィよりもキラキラしていると思う。うわ。超かっこいい。このショットガンとか最高じゃないっすか。…あれ?いや待て。何でショットガンとかおいてあるんだ?いや、まあいいか。

 生前に存在していた銃とかの名称はよく知らないからあてずっぽうだが。まあ、そんな表情をずっとしながら武器を見ていたからだろうおじさんが声をかけた。

「…少年。武器が好きなのか?」

 愚問ですよおじさん。

「はい。大好きです。むしろ好き超えて愛してます」

 テンションが上がって変態的な返しをしてしまった。

「…ほう。最近のガキは魔法を先行する奴ばかりだからな。少年のようなのは珍しいな」

 おお。このおじさんはわかってらっしゃる。

 ミカド君やレン、グレンはどうだかは知らないが、学園のほとんどの連中は武器を使用するということは少なく、僕のように木刀などをつかうのは非常に稀らしい。と、ミルとカイエルが言っていた。ちなみにあの二人はアレンが作った武器を使用してるらしい。クソリア充めが。

 それは置いておいて。

 魔法媒体として指輪や魔導具を使用するくらいでほとんどの場合魔法戦となってしまっているという傾向が広まっているため、2年生から武器を使った授業が導入された。と、シルク先生が言っていた。

ミカド君が言っていた剣技の授業とやらもこれに該当するのだろう。

「少年。どうだ?試しぎりするか」

「え?いいんですか?」

「おう。多分そこにある武器はほとんど初めて触るものばかりだろう?見て買うより実際にさわって買うほうがいいに決まってる」

 確かにその通りだ。見て買った結果扱いにくかったら意味がない。

 お金の無駄である。

「じゃあそこのドアから裏庭に出てくれ。武器持ってくるから少し待っててな」

 おじさんは背後にあるドアを指差しそう言った。

 ワクワクしながらドアノブにてをかけ言われた通り待つことにした。

 待つこと数分。

「お待たせ」

 ドアから出てきたおじさんが大きな箱を持ってやってきた。

 その大きな箱からはガッチャガッチャと武器独特の鉄と鉄のあたりあう音が聞こえる。

「そうだな…少年の体型だと…まずは剣かな」

 渡された剣は刃渡り50センチほどの西洋剣であった。

 ふむ。木刀や日本刀は触ったことがあるが、西洋剣は触ったことない。少し新鮮だ。……というか、普通は日本刀は異世界に来て触る物じゃないと思うだけれど。まあいいか。

 鞘から剣を取り出す。

 父様からきいたが、剣技は剣系統の武器が全て使えるっていうし、この機会に使ってみるのも良いかもしれない。

「ほう。その構えかた…剣技か」

「あっ。はい」

 剣技の構えはやはり見て分かる物なのか。ミカド君もそうだったけれど、そこまで独特なんだろうか。

「続けてくれ」

 おじさんはそう言うと俺の構えをみはじめる。

 というか、続けてくれってどうすれば…。

 取り敢えず、剣に魔力をながす。

「!!」

 む。この剣魔力を流し難いな。

 魔力の形が安定せず、魔力の形はゆらゆらと揺れるのみで一向に安定しない。

「ふむ。振ってみろ」

「はぁ…」

 言われ通り振ってみる。

 む。結構振りやすいな。西洋剣も。

「成る程な。次はバトルアックスだ」

 あれ?剣はもういいのか。

 まぁ試させてくれてるわけだし、言うことには従おう。

 僕は剣を鞘に戻し、バトルアックスを受け取った。

 結構重量があるな。柄の部分のみ剣と同じ部分を使って、刃までは鉄のようなものを使っていた。

「振ってみな」

 今度も言われた通り振ってみる。

どうやらこのバトルアックスは切るというより振りきるまでのスピードとその重量で叩き切るといった感じだ。バスターソードのようだ。

 パワーキャラじゃない僕は少し扱いにくい武器である。

「ふむ。じゃあ――」

 おじさんの武器検証は数時間にも及んだ。




「よしお疲れさま。全部の武器は試し終わった」

「あ。本当ですか?良かったぁ」

「ははは。すまんな。全部の武器を試さないとな作れない(・・・・)からな」

「へ?作る?」

「ああ。俺は武器屋兼鍛冶屋だ。とはいえ、鍛冶屋のほうは気に入ったやつにしか使わせないがな」

「へぇ…」

 気に入ったやつにってことは僕気に入られたのか。

 やったぜ。

「じゃ、少し待っててくれ」

 そう言ったおじさんはドアの奥へと消えた。

 再びドアが開いたのはおじさんが出ていってしばらくたったころで、腕時計をみるかぎりジャスト1時間が経過していた。

「いやーすまんな。頭の中の構造通り作るのは時間がかかってな」

 そう言ったおじさんが手に持っていたのはショットガンだった。

「ナイフ??」

「ナイフっていうよりはショートソードだな。ただ、普通のショートソードじゃねぇ。持ってみろ」

 おじさんはショートソードを僕に渡す。

「いつも通り魔力を流してみろ」

「はぁ…」

 言われた通り魔力を流す。

「うおお!?」

 何ということでしょう。僕の手の平より少し大きいくらいだったショートソードは、がガチャリと音を立て始めたではありませんか。その音が聞こえたのち、ショートソードは光に包まれ始め、光が消えた頃には手に持っていたのは全く別物ではありませんか。 

「こ、これは?」

「うむ。初めて作ったが上手くいったな。少年の場合、剣に対してあらゆる適性があった。使いやすいショートソードと比較的攻撃力の高いバスターソード。その二つを俺の魔法で合体させた」

 合体って。謎の技術にもほどがある。いや、まあ、中二臭くて好きだけどこういうのも。

 バスターソードの方を手に持ち、ぶんぶん振り回す。

 見た目よりも軽く、僕の木刀よりも少し重たいくらいである。結構振りやすい。というか、父さんからもらった刀よりも扱いやすいんじゃないんだろうか。

「見た目よりもずっと軽いですね」

「そりゃあそうさ。クレリアつう鉱石を使ってるからな」

「クレリア?」

「ああ。そういう風に加工して薄く延ばすと、普通の鉄や鉱石よりも頑丈でなおかつ軽くなるんだ。魔力も通しやすい、神の祝福を受けた金属だ」

 すごい鉱石じゃねえかよ。そういうのってミスリルとかオリハルコンの役割じゃないのか。

「ただし、注意しなくちゃいけないことがある」

「?」

 にんまりとしていたその顔を神妙な顔に変化させてこういった。

「その金属は持ち主の心に応じてその効果を発揮する。俺はお前の心を信じたからこそそいつを作った」

「あとはわかるな?」

「……はい」

 常に自分の心をしっかりともてとか、善だろうとも悪だろうとも、僕が自分を見失わうなとか、そういう類のことを言いたいのだろう。

 難い演出である。

 と、そこで、大事なことを思い出した。

「えっと…その…そういえば、お金なんですが」

「クレリアってのはな、高級鉱石でな、1g4Gもする金属だ」

「ファッ!?」

「この武器に使ったクレリアは534gだ。しめて、2136G加えて魔法陣の取り付けと改造費を合わせた2240G…払えるのか?」

 に、日本円で約2240万…。

 こ、これは借金をしないと10歳の身には買えないレベル…!いや…父様と母様に泣き付けば買える可能性が…。

「と、父様と母様にお金を借りてくるのでま、まっててください…グス」

 あっ…思いつめすぎて涙出てきた。

 …ふふふ…なんだかしょっぱいや…。

「ま、まあ…それでもいいんだが、俺はそんなに心の狭い人間じゃねえ」

「ほえ?」

 思わず間抜けな声が出てしまった。

 どういうことだろうか。もしや、「そのかわり俺の奴隷になってもらうぜウヘヘ」みたいなことを言われるのか!?エロ同人みたいに!

「いや、条件を出すとかそういう話しじゃねえ。ただ、その武器をずっと大切にしてやってくれ。武器っていうのは使えば使うほど感情って奴を持つものだ」

「感情…」

「ああ。クレリアに関して言えばさらにそうだ。この金属は心に呼応して強くも弱くもなる。……人間みてえだろ?」

 おじさんが僕の手元にあるソードを見ながらそう言う。」

「いえ…別に…」

「………いや、まあ、そうだろうとは思ったんだけれど、予想に沿ったら沿ったで…うん」

「……」

「……」

 沈黙が続いた。

 数分その沈黙が続いた後、ふと時間は大丈夫なのかと腕時計を見てみた。

「あ!」

「ん?どうした?」

「す、すいません!りょ、旅館に帰らないと!」

 腕時計は既に7時を回ろうとしていた。

 完全に遅刻である。

「す、すいませんお金は…」

「いや、金はいいって。それを大切に扱ってくれればいんだ。ってのをさっき言おうと思ったんだがな」

 ああ。なるほど。あそこで僕が嘘でも「はい」といっていれば会話はスムーズに進んだかもしれないということか…。

 まあ、希少な鉱石だっていうし大切に扱う。心に呼応するということは大切にすればするほど強くなるということだと思うし。

 …そう考えたら、確かに人間かもしれない。今ならさっきの質問に自信を持って「はい!」と言っていたな。

「あ、ありがとうございます…!」

 僕がそう言うと、さっきの何とも言えない表情からおじさんは打って変って再びにんまりとした無邪気な笑みへと変化する。

 お金は払わなくていいといっていた。2240Gものお金を払わなくていいというおじさんの器の広さは東京〇ームを超えてるんじゃないんだろうか。

 っと。こうしてる間にも時間は刻々と迫っている。入学してから間もないというのに先生に目をつけられたくはない。急ごう!

 おい。誰だ今手遅れだろっていた奴。表でろ

「じゃ、じゃあ、失礼しますね!」

「おう。またこいよ」

「はい!」

 後ろを振り向いておじさんに手を振りながら、ドアを抜け、道行く人々の視線を浴びながら旅館へと向かった。




「遅いです!」

「す、すいません!」

 旅館に着くころには7時半を回っており、旅館のドアをくぐると、玄関の前で待っていたのであろうシルク先生に怒鳴られる。

「全く…心配しましたよ?レン君たちに聞いても知らないといっていましたし、何か事件に巻き込まれたのかと心配しました」

「ごめんなさい」

 90度に腰を曲げた。

 社会人的平謝りである。

「はあ…まあ、いいです。傷も無いようでしたし」

 因みに、あのソードは現在ショートソードにしてバックの中に入っている。

 本当にどういう容量高はわからにけれど、おじさん曰く、時空魔法の類で、ショートソードをもとにしてバスターソードを封じ込めたという。

 この世界で質量保存の法則やらは完全に無視されているらしい。

「じゃあ、レン君たちのところに行ってくださいね。あの子たち心配してましたから」

「あ…はい」

「じゃあ、先生行きますね」

 最後には笑顔を見せてくれた。

 うん。怒るときには怒る。だけれど、生徒の気持ちを重んじる。いい先生だ。

 っと、そうだ。セルフィたちのところに行かないと。と、生徒たちが集まっているフロアの一角へ向かった。

 談笑している生徒たちの波をのけつつ、一際疲れ果てている、集団を見つけた。セルフィたちである。ゆっくりと彼らに近づくと、まるでセンサーのように反応したセルフィが、僕の方を向き普段からは考えられないほどの大声を発した。

「おそい!」

「はいぃ!」

 つい先ほど、こんなやり取りをした気がする。

「心配したんだからね!」

「ま、まあまあ。いいじゃんか。無事に帰ってきたんだし」

「そうだけどさあ…」

 レンがたしなめてくれた。ありがたい。

「明日も含めれば、あと6日も自由時間があるんだ。1日くらいいいだろう?」

「そういう問題じゃないぜ。グレン。乙女心が分からないとは…やれやれだぜ」

「無茶言うなミカド」

 ミカド君とグレンも輪の中にいた。どうやらレンたちは無事二人を見つけたようだ。いや、この旅館で落ち合っただけかもしれないが。

 それよりミカド君よ。それの発言は10歳とは思えない。いや、この世界の10歳は早熟なのかもしれないな。うん。

「ごめんな。セルフィ」

 頭をなでながらそう言うと顔を真っ赤にしながらさらに怒る。

 いや、うんまあ照れてるんだろうけど、鈍感系主人公とかってこんな感じなんだろうなと思って思ったんだけどこれは気付きますわ。

 みんながいる場所で頭なんか撫でられたら確かに恥ずかしいわな。

「うう…頭撫でられただけで許すと思わないでよね!」

「そのセリフはにやにやしながら言うセリフじゃないと思うよ。セルフィ」

「な…なにおう!?」

 こうして夕食までの時間は過ぎて行った。




シキ:テンションが上がると変態に変態する鈍感系主人公症候群

レン:シキが武器屋でテンション上がっている間二人の美少女に挟まれ昇天

セルフィ:昇天したレンを叩き起こした本人

アイ:レンに蹴りを入れた人

おじさん:武器屋兼鍛冶屋のおじさん。ハードボイルドな大人の魅力

ミカド:何をしていたかは次回

グレン:乙女心がわからないイケメン。厄介である。同じく何をしていたかは次回。

シルク先生:癒し


クレリア:伝説上の鉱物。薄い云々は僕が考えた設定です。

ショートソード:盗賊が装備しそうなナイフ。少し特殊な形をしている。

バスターソード:片手剣。重さで斬る剣の名称だが、このバスターソードは居合剣のように速さで斬る。刀に近いかもしれない。

時空魔法:別名アイテムボックス魔法。空間をいじくれる無属性魔法の類。

鈍感系主人公:女の子が赤くなると必ず怒ってると錯覚してしまうある意味病気。その割には人の感情に敏感。

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