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よくある異世界転生モノ  作者: 向ヶ丘こよみ
王都学院学園編――僕は友達が少ない
20/37

第19話:ミカド・ユノムールの挑戦状

 闘技会から1週間後。

 レンという友達を作ることに成功した僕は、そこそこ快適な学校生活を送っていた。彼自体結構友達が多い方で、僕にも友達未満の存在を作ることにも成功していた。

 そんなある日のこと。

「へい!シキ!」

「…どうしたレン。昼からハイテンションだな…」

 これから昼飯ということでセルフィのもとに向かうべく、弁当を二つ持って立ち上ったところでレンに声をかけられた。

 一体どうしたというのか。

「俺なーいつも一人でぼっち飯なわけですよ」

「…お前友達ほかにもいるだろうに」

「いやいや。正直言うと表面上の付き合いって奴でよー。あの友情の握手だってお前にしかやってないんだぜ?」

「…ホモ?」

「…雷よ(サンダー)

「うひん!」

 身体全体に、静電気のような痛みが走る。

 こいつ…なかなかやるな…。

「続き話すぞ」

「はい…」

 ちょっと体をびくびくさせながら、とりあえずは聞くことにした。

「でな。さっき言った通り友情の握手はお前にしかやってないわけだ。ならば、ここでお前と昼飯を食わずになにが友達かと!」

「あーまあ、たしかにそうだな。…で?本音は?」

「俺も美少女と飯が食いたい」

「帰れ!」

「実家まで10万キロメートル離れています」

 ずいぶん遠いなあ!

「…まあ、いいや。来いよ。一緒に食おうぜ」

「さっすがー!話が分かるなー!」

 うーん。まあいいか。

 じゃあ、着いてきて、とうきうきしているレンに後をついてこさせた。




「で、だ。なんでアイちゃんがいる」

「アイちゃんでーす」

 いつも飯を食っている食堂のテリトリーに着くと、そこに美少女が二人いた。レン君は鼻血を出すかと思えば、存外普段通りである。

 外見も相まってむっつりキャラかと思いきや意外である。

「私もこの輪に入りたいなーってね。…そこの彼は?」

「ん?あー…こいつは僕の友達」

「レン・タカミチでーす」

「私はアイ・ロックハート。この子はセルフィ・ストライフ。よろしくね」

 そう言い、満面の笑みを浮かべる彼女は美少女そのものである。

 普段とは大違いだ――いったい痛い痛い!

 何故かアイちゃんにつま先を踏み抜かれた。

「うん。よろしく」

 思いっきり平然を装っていたので、誰も何も気にすることなく会話を進めていく。

 あとで治療(ケアル)かけておこう。

「じゃ、飯食おうぜ。僕腹減っちゃった」

「うん。私も。…あ。お弁当今日もありがとうね」

「へー?シキお前ストライフさんの弁当も作ってんのか。仲睦まじいなあ」

 能天気にあははと笑う彼は弁当を取り出し、カパッとふたを開ける。

「あれ?お前もそれ自分の手作りか?」

「うん。まあね」

「へー。タカミチ君も作れるんだ?二人とも女子力高いなあ。どれ」ひょい

「あーからあげ!俺のメインディッシュー!」

「ちょ…アイちゃん…あ。分けてくれるの?ありがと!」

「ストライフさんもありがとじゃないよ!?」

 アイちゃんとセルフィはほぼ同時にぱくっと食べる。

「「こ…これは…!」」

「え!?」

 二人がふるふると震えたかと思うと

「シキ君のには劣るけれど、すっごくおいしいよ!」

「うん!シキ君のには劣るけどね!」

「君たち二人は直に俺の心をえぐりに来るなあ…」

 心臓をおさえ下を向き、滝のように涙を流すレン君。

 普通にかわいそうである。

「あはは。ごめんごめん。でも、私とかセルフィのよりもおいしいわよ?」

「失礼ね。アイちゃんは私よりもおいしくないくせに」

「な…なにおう!いいもん!私は将来彼氏に作ってもらうしー」

「ふふふ…甘いな。ロックハートさん」

 いつの間に立ち直ったのかレンはビシッと指をアイちゃんを指差す。

「近年は弁当を作ってくれる男子なんて意外と少ないんだぜ!」

「「なん…だと!?」」

 セルフィ意外とそういうのに関心あるのね。まあ、女子だもんなあ。

 うんうん。

「実際俺らみたいな男子なんて少ないと思うぜ?俺に至っては小さいころに仕込まれたからこうなってるんだけど」

「ほうほう…」

「な、なるほど…」

「そんな二人はまずは卵焼きから挑戦してみるといい。ほれ。此処に丁度一冊の我が家伝統の秘伝の料理本があります」

 卵焼きか。確かに妥当だな。

 都いう鎌手。お前たした手ぶらで来ていたよな。何処からそれを出したんだ。

「シキに作ってあげたらどうだ?」

「何でそこで僕なんだよ!?そこは『俺が食ってやるから』だろ!?」

「いやー。三人は見知った仲だし。うん」

「えー…」

「まあ、いいじゃん。アリオン君。君のがおいしいんだし」

「多分シキのが参考になるよね?」

 あ…そんなこと言ったら…。

「ごはっ」

 ほらー。今度は血反吐吐き出しちゃったじゃん。

「まぁ女子の手作り弁当食べれんのは吝かじゃねえけど…」

「……シキも所詮男子か…」

「るせー。ささっと飯食おうぜ。この後はシルク先生の歴史の授業だろ?遅れたら泣かれるぜ」

「うっ…そ、そうだな…早めに喰おう」

「あ。そういえば知ってる?シキ」

 僕とレン君が大急ぎで飯にくらいついているところでセルフィが思い出したかのようにそう言ってきた。

「来月の頭に新入生の研修旅行があるんだってさ」

「へえ?そうなんだ…うーん…今のところシルク先生からは何も聞いてないけどなあ」

「多分この後説明されるんだろ?もぐもぐ」

 レン君はご飯をほおばりながらそう言った。

「セルフィたちはいつそれ訊いたんだ?」

「今朝だよ。だからシキ達も今日聞くんじゃない?」

「そうだな…」

 あ、やべ。こんなだべってる場合じゃねえな。僕も早くご飯食べないと。

 本当にシルク先生に泣かれることになる。

「あ、あのさ。クラスが別でも研修旅行で回る班が決められるんだけどね?」

「もぎゅっもぐ。んぐ」

 ご飯を頬張りながら首を縦に振る。

「けふう。ごちそう様」

「んぐっ!(はやっ!)」

 驚異の早さだ。さすがぽっちゃり。

 うおっ。睨まれた。

「ほれほれ。そろそろ時間だぜ。…あ。続きをどうぞ。ストライフさん」

「う、うん。だ、だから私たちとまわらない?」

「もひほんいいへ」

「飲み込んでから喋れよ……『もちろんいいぜ』だってよ」

 何でわかったレン。なんか寧ろ怖いな。

「あ、タカミチ君もどう?」

「あ、じゃあ、一緒させてもらおうか――」

「HEYセルフィさん!」

 いきなりどこかで聞いたような声が響いた。と、いうか個人的に一生聞きたくなかった声――ミカド君だった。

「うわ…ミカド君。何しに来たの…」

 アイちゃんは思いっきりドン引きしている。ふむ。顔で判断をしない子なのか。性格いいなあ。

 と感心していると、その言葉に臆することなく、ミカド君は話し続ける。

「おお。ロックハートじゃないか。何でここにいるんだ?」

「何でって…セルフィとハードブレイク君とタカミチ君とご飯食べてたのよ」

「……ふん。また君か腰抜けシキ君とえっと…デブ」

「あ”?」

 ミカド君がレン君のことをデブと言った瞬間、レン君が凄んでくる。これからはレン君のことをデブと言わないように気を付けなければ…。

 ミカド君も表情が固まって脂汗をだらだらと流している。あ。どころかセルフィとアイちゃんすら冷や汗ダラダラだ。

「と、とにかくだ!その研修旅行。俺がセルフィさんを誘うんだ!お前はどっかいけ!」

「もぐもぐ…んぐ。ごちそうさま…」

「…おい」

「セルフィがいいなら僕は別にかまわないけど」

「えっ!?わ、私?私は――「ほらみろ!セルフィさん困ってるじゃないか!」――ええ…」

「いや…今思いっきりセリフかぶせてたじゃない」

「ロックハートは黙っていろ!」

「はいはい」

 なかなかカオスな光景で、皆こちらに注目してしまっている。

 周りのみんなはほとんどミカドとアイちゃんとセルフィに注目しているから僕たちは目立つことはないみたいだ。

『あ。あれ反則君と腰抜け君じゃない?』

 前言撤回。僕達も注目されているようだ。悪い意味で。

「あ。なら皆で行こうよ!」

「「それはだめだろ!?」」

 僕とレン君の声が被る。

「え?なんで?」

「この状況で何でと言えるストライフさんは色々おかしいよ!?」

「えー?」

 うーん。何か解決方法はあるだろうか。

「と、いうことで、勝負だ!シキ・アリオン!」

「えー…」

「今回はこの前と違って技制限などない、公平なバトルだ!」

 うむ…これがこの世界なら当たり前なんだろうか?それともただミカド君が血気盛んなだけなんだろうか?

 いや、うーん。そうでないと思いたいのだが。

「と、いうわけで外に出ろ!シキ・アリオン!」

「えー…この後すぐ講義だし…」

「え?あ。ごめん。じゃあ、放課後でいい?」

「お、おう」

「じゃ、じゃあ放課後スタジアムに来い!俺が予約しておいてやる!」

「逃げんなよー!」と、言いながらミカド君は去って行った。

 ミカド君は案外いいやつなのかもしれない。……いや、うん。それはないか。

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