イタズラは甘い罠ですか?
「ママったら、ハロウィンのことコスプレの日なんて言うのよぅ」
「間違ってないよねw」
私が嘆くと、チャット画面のコメントが短く表示された。竜星からの返信だ。
「でも、仮装だけの日じゃないやん」
「はいはい、マキは次のコスプレは何にするのさ」
「ん〜、ハロウィンにあるコスプレイベントは申し込んであるけど、魔女やシスターとかは違うかな」
この前買った人気VTuberの衣装を思い出す。10月末にはちょっと寒いかな。もうカイロを使ってもいいかもしれない。
「私も申し込んでる。合わせる?」
「え? 本当? なんにする?」
「VTuberとかじゃないの?」
「もしかしてクローゼット覗いたぁ?」
SNSなら爆笑スタンプが押されるところだ。ゲーム内チャットだと、そういった機能はない。バトルのときはボイスチャットも使うけど、今はのんびり気分。
竜星とは三ヶ月前のコスプレイベントで知り合った。背が高くて騎士のようなキャラクターの姿がとても似合って、ドキドキして写真を撮らせてもらってからの友達。
それから、竜星がコスプレしていたキャラの出てくるゲームを始めた。バトルも面白いけれど、ゆっくり家を建ててインテリアを凝ったりできる。
「ゲームのハロウィンはどうするの?」
ガチでバトルしている竜星はステータスが高くないイベント装備はつけないかも。でも、そんな考えを見透かしたようにコメントが入る。
「当日を楽しみにしてて」
「とうじつ〜?」
急に、ワクワクとした気持ちが跳ね上がる。何かがある、それだけで楽しみになった。
今年のハロウィンは土曜日だからリアルイベントも、その日に重なっている。その日を楽しみに、仕事を頑張るのだった。
待ちに待った当日、ゲームにログインする。
何か変わったことはないかなと家を出ると、家の周りにはかぼちゃがたくさん積まれていた。狭くなった通路をなんとか通る。
「な……! なんでぇ!?」
家のまわりのオブジェは置いた人以外動かせない。アイテムの盗難防止のための仕様なんだろうけど、えっ、えぇ〜!?
やっぱり私ではかぼちゃが動かせなかった。いたずらがハロウィンらしい。
「やったなぁ〜」
楽しくなって竜星の家に行く。私は何を置こうかなと思って、集めていたラブリーなガーデンテーブルセットを置いた。花模様のロマンチックなやつだ。
モノクロでコーデした室内のセンスのように、シンプルにまとめられた竜星の庭には全く似合わない。
「あぁ、そうだ!時間がない」
思い出してログアウトし、メイクをした。付けまつげをして、カラコンも入れる。それから、ネットを付けてウィッグをかぶった。
帰りの着替えは持っているけど、コスプレしたまま出かけることにした。こういう時には車は便利。
「やっぱりコスプレの日じゃない」
ママの言葉に苦笑しながら家を出て会場に行くと、すでにたくさんの人が来ていた。何とか落ち合うと、竜星がカゴを持ち上げて見せる。
「トリック・オア・トリート!」
「わっ、どうしたの? 配るの?」
「せっかくだからね、他のレイヤーさんと交換しようかと思って」
さすが気遣いが違う。竜星しか友達がいないから、思いつかなかった。しょんぼりしてると竜星が言う。
「トリック・オア・トリート!」
腰を低くして、頬に指をトントンと当てる仕草をする。まさか!
「マキからはお菓子を貰えないみたいだからね」
仕草がイケメン過ぎてこっちが照れる!にっこり笑って見せる竜星に、覚悟を決めた。
ちゅっ
頬にキスすると周りがどよめいた。私達は今、キャラクターの格好をしている。ちゃっかり写真に収めたカメラマンさんがデータをくれることになった。
これは、どう捉えたらいいのかしら。男装レイヤーの竜星と何かが始まるのか、始まらないのか。いや、いや。真っ赤になって、しばらく大変だった。
ハッピーハロウィン!
ここまで、読んでいただきありがとうございます!
竜星ってハンドルネームだったのか? とか、女性?っとか、少しでも驚いていただけたら嬉しいです。
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