安楽死アプリ
三年前、安楽死アプリが開発された。
タップすると脳内のチップが作動し、苦痛を感じず安らかに死ねるという代物である。
アプリのリリース当日、七十六万人の国民が安楽死を選択した。
その後も次々と後を追う者が現れて、人口はあっという間に半分以下になってしまった。
しかしそれでも社会は回っている。
むしろ高齢化社会が解消され、部分的には発達している点もあるくらいだ。
とにかくそんな社会で、私は病で寝たきりだった。
病室には毎日のように子や孫が押しかけてくる。
全員、口を揃えて安楽死アプリを勧めてくる。
さっさと私が死ねば、莫大な遺産を相続できると思っているのだろう。
ベッドを囲む欲塗れの顔を見回し、私は心底から軽蔑していた。
だからある日の晩、私は遺書を書いた。
そこには、すべての財産を幼い曾孫に託すと記した。
これで煩わしい遺産争いが解決する。
私はそう思った。
翌日から、私に安楽死アプリを使わせようとする者はいなくなった。
代わりに彼らは、曾孫に安楽死アプリを勧め始めた。
笑顔の仮面で欲望と悪意を必死に隠し、無垢な命を潰そうとしていた。
翌日、私は曾孫を除いた親戚の脳内チップを安楽死アプリに登録し、勝手に作動させた。




