第8話:プロとしての「冷たさ」
初めて挑戦します(^^)
あたたかく見守ってくれると嬉しいです。よろしくお願いします
※第2エピソードの学び
「見守る」という支援: 手を貸しすぎないことが、相手の自尊心を育てる。
自分の心を守る責任: 支援者が心身ともに健康であることが、最も質の高い支援に繋がる。
一週間後の面談室。ハルトさんは、以前のような無理な笑顔ではなく、どこかスッキリとした顔で座っていた。
「真庭さん。昨日の夜、すごく不安になったんですけど……自分でノートに気持ちを書いてみたら、少し落ち着きました。今まではすぐスマホを手に取っていたけれど、自分で自分をなだめる練習、始めてみます」
その言葉を聞いて、私は鼻の奥がツンとした。
私が「NO」と言ったことで、彼は自分の足で立つための「自分専用の杖」を、自分自身で見つけようとしている。
「ハルトさん、すごいです。それは、ハルトさんが一歩前に進んだ証拠ですね」
面談を終え、事務所に戻ると、いつものように九条さんがコーヒーを片手に書類を眺めていた。私は真っ直ぐに彼のデスクへ向かう。
「九条さん。瀬戸さんの件、夜間の連絡を止めてから、彼自身にセルフケアの意識が芽生え始めました」
九条さんは顔を上げず、フンと鼻を鳴らした。
「当然だ。支えすぎる手は、時に相手の成長を阻害する重石になる。君がようやくその手を離したから、彼は自分の足の筋肉を使わざるを得なくなった。ただそれだけのことだ」
相変わらず、可愛げのない言い方。けれど、私は気づいていた。九条さんが私に「境界線」を教えたのは、私の仕事の効率を上げるためだけではない。私自身がこの仕事の重みに潰されないように、そして利用者が真の意味で「回復」するために必要な、彼なりのプロの矜持だったのだ。
「九条さんは……最初から、こうなることが分かっていたんですね」
「……何のことだ」
「冷たく見えても、一番相手の『未来』を信じているのは、九条さんなんじゃないかって。……そう思いました」
九条さんの手が、一瞬止まった。彼は眼鏡を指で押し上げ、ようやく私を冷ややかな、けれどどこか熱を持った瞳で捉えた。
「……真庭。他人の内心を勝手に推測するのも『ノイズ』の一つだぞ。そんな暇があるなら、次の利用者の資料を読み込め」
彼はそう言って、一冊の分厚いファイルを私のデスクに放り投げた。
乱暴な渡し方だったけれど、そのファイルの表紙には、彼の手書きで私の名前と『次はアンガーマネジメント(感情の制御)を叩き込む』というメモが添えられていた。
私は、そのメモを宝物のように指でなぞる。
プロとしての「冷たさ」は、相手を深く思いやるための「強さ」だった。
私は今日も、彼の背中を追いかけながら、誰かの人生の「聞き手」であり続ける。
(第2エピソード・完)
実体験から書きました。少しでも、福祉従事者の役立つ情報になればと思い執筆してます(^^)
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