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第6話:境界線(バウンダリー)の引き方

初めて挑戦します(^^)

あたたかく見守ってくれると嬉しいです。よろしくお願いします


※この話で得られる「知識」

境界線バウンダリー: 自分と他人の責任や感情を分けること。


共感(Empathy)と同情(Sympathy): 相手と同じ感情になるのではなく、相手の状況を「客観的に理解」することの重要性。


依存の罠: 助けすぎることが、相手の成長を止めてしまうリスク。


九条さんの言葉は、氷の塊のように私の頭を冷やした。

 私は、フラフラする足取りで九条さんのデスクの前へ歩み寄った。


「……でも、彼には私しかいないんです。見捨てたら、彼は本当に壊れてしまう……っ」


 必死の訴えを、九条さんは書類をめくる音一つで黙らせた。

「思い上がるな、真庭。君に一人の人間の人生を背負うほどの価値があると思っているのか?」


 その言葉は、昨日の「ノイズ」という指摘よりも深く、私のプライドを切り裂いた。


「いいか。心理学や対人援助の世界には、『境界線バウンダリー』という概念がある。自分と他人の間に引く、目に見えない心の柵のことだ」


 九条さんはホワイトボードに向かうと、ペンを走らせた。二つの円が重なり合っている図だ。


「今の君は、この円が完全に重なっている。相手の悲しみは自分の悲しみ、相手の不安は自分の不安。それを『共感』と呼んで酔っているようだが、それはただの『同情シンパシー』だ。プロに求められるのは、一歩引いた視点を持つ『共感エンパシー』だ」


「共感と、同情は違うんですか……?」


「決定的に違う。同情は相手と一緒に沼に飛び込むことだ。共感は、沼の縁に立ち、ロープを持って『今、あなたは沼の中にいるんですね』と冷静に理解することだ。……真庭、君が今やっているのは、彼と一緒に泥水をすすっているだけだ。それでは、二人とも沈んで終わる」


 九条さんは私を真っ直ぐに見据えた。

「境界線を引かないのは、優しさではない。相手が自分で立ち上がるチャンスを奪い、自分に依存させることで君自身の『必要とされたい欲求』を満たしているだけだ。それは、最悪の支配だぞ」


 支配。

 そんなつもりは、微塵もなかった。でも、私の深夜の返信が、ハルトさんの「自分で考える力」を奪っていたとしたら。


「……私は、どうすればいいんでしょうか」


「簡単だ。プロとしての自分と、プライベートの自分を分けろ。業務時間外の連絡は断て。それができないなら、今すぐ彼の担当を外す」


「そんな……!」


「彼を救いたいなら、まず君が『健全』でいろ。いいか、明日彼にアサーション……自分も相手も大切にする伝え方を使って、境界線を引け。断ることは、拒絶ではない。長く付き合うための『誠実さ』だ」


 九条さんはそう言うと、再び自分の仕事に戻った。

 私は、震える手でホワイトボードの図をメモした。


 冷たいと思っていた彼の言葉の中に、私は初めて「守るための厳しさ」を感じていた。ハルトさんのためにも、そして、私自身がこの仕事を続けていくためにも。



実体験から書きました。少しでも、福祉従事者の役立つ情報になればと思い執筆してます(^^)

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