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第5話:「助けて」が言えない若者

初めて挑戦します(^^)

あたたかく見守ってくれると嬉しいです。よろしくお願いします

新しい利用者の瀬戸ハルトさんは、春の陽だまりのような笑顔を浮かべる青年だった。


「すみません、こんな僕のために時間を割いていただいて。真庭さんには、いつも感謝しています」


 面談室で何度も頭を下げる彼を見て、私はかつての自分を重ねていた。

 彼が抱えているのは、過剰なまでの「申し訳なさ」だ。就職活動の準備を進めようとすると、彼は決まって「もっと頑張らないと」「皆に追いつかないと」と自分を追い込んでしまう。


「ハルトさん、無理はしなくていいんですよ。少しずつ進みましょう」

「はい。真庭さんがそう言ってくれるから、僕、頑張れます」


 その言葉に、私は胸を熱くした。

 前の担当者である佐藤さんの時は「沈黙」が武器だった。でも、ハルトさんには「寄り添う心」が必要なのだ。私は彼の力になりたい一心で、自分の連絡先を教え、「何かあったら、いつでも相談してくださいね」と伝えた。


 それが、均衡を崩す引き金になるとも知らずに。


 その日の夜。時計の針が23時を回った頃、スマホが震えた。

『夜分にすみません。今日、面談の後に少し苦しくなってしまって……真庭さんだけが頼りなんです』


 ――私だけが、頼り。

 その言葉が、私の自己犠牲心に火をつけた。私は必死に返信を打つ。翌朝も、出勤前の準備中に彼から届く不安な声に応え続けた。


 一週間後。私の目の下には濃い隈ができ、仕事中もスマホの通知が気になって仕方がなくなっていた。ハルトさんへの返信に追われ、他の利用者の記録作成が大幅に遅れている。


「……おい、真庭」


 背後から、温度のない声が響く。九条さんだ。

 彼は私のデスクに置かれた、未完成のまま放置された書類の山を、冷徹な一瞥で射抜いた。


「この惨状は何だ。君の仕事は、特定の利用者の私設秘書になることか?」


「違います、これは……ハルトさんが不安定で、私が支えてあげないと……」


「支える?」

 九条さんは私のスマホを指差し、鼻で笑った。

「君がやっているのは支援ではない。『共感』という名の病だ。相手の感情に飲み込まれ、境界線を踏み越え、共倒れに向かっている。救助員が溺死してどうする? この無能が」


 九条さんの言葉は、寝不足の頭に容赦なく突き刺さった。

 ハルトさんのために頑張っているはずなのに。どうして、こんなに苦しいんだろう。


 私は、震える手でスマホを握りしめた。通知ランプが、また緑色に点滅していた。

この話のポイント

「共依存」の入り口: 相手を助けたいという善意が、自分を壊す毒に変わる瞬間を描きました。


九条の視点: 彼は冷たいですが、組織全体と灯の心身を守るために「プロとしての境界線」を求めています。


実体験から書きました。少しでも、福祉従事者の役立つ情報になればと思い執筆してます(^^)

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