表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

28/32

第28話:鏡に映る、新しい自分

第7エピソードの完結編です。トラウマを乗り越え、ひと回り大きくなった灯と、それを見守る九条の静かな信頼関係を描きます。


※第7エピソードのまとめ

自己効力感の定着: 過去のトラウマを克服する鍵は、逃げることではなく、成長した今の能力で「今の課題」に立ち向かうこと。


セルフ・コンパッションの深化: 過去の無力だった自分を責めるのをやめ、今の自分が成し遂げたことを正当に評価する。



加奈さんが、何度も頭を下げながら事務所を去っていきました。彼女の背中は小さく、かつての「クラスの支配者」の面影はどこにもありませんでした。


 静かになった事務所で、私は自分の手を見つめました。

 もう、震えてはいませんでした。


「……九条さん。私、あの日からずっと、自分のことが大嫌いだったんです」


 私は、片付けを始めた九条さんの背中に向かって、ぽつりぽつりと話し始めました。

「いじめられて、言い返せなくて、逃げるように学校に行かなくなって……。そんな無力な自分を変えたくて、誰かを救えるようになりたくて、必死に勉強してこの仕事を選びました。でも、どこかでずっと『私はまだ、あの頃の逃げ出した子供のままだ』って、自分を疑っていたんです」


 九条さんは手を止め、眼鏡を外してレンズを拭き始めました。


「真庭。人間は、過去の記憶を書き換えることはできない。だが、その記憶が持つ『意味』は、今の行動でいくらでも塗り替えられる」


 九条さんは私の方を向き、その鋭い瞳で私を射貫きました。


「今日、君は自分を傷つけた相手を、自分の役割(プロ意識)で圧倒した。それは復讐ではなく、君が『過去の自分』を救い出したということだ。君はもう、誰かに人生を定義されるような弱い存在ではない」


「……はい」


自己効力感セルフ・エフィカシーとは、根拠のない自信ではない。今日のような『修羅場』を、自分の知識と意志で乗り越えたという事実の積み重ねだ。……これで、君はもう私の指導がなくても、大抵の困難には折れないだろう」


 九条さんはそう言うと、不器用な手つきで私の頭を一回だけ、ポンと叩きました。


「……ま、お喋りの時間は終わりだ。コーヒーを淹れろ。今度は、君の自己効力感のように、濃くて芯のあるやつをな」


「はい!」


 私は給湯室の鏡に映る自分を見ました。

 そこには、過去の影に怯える少女ではなく、誰かの人生の隣に立つ準備ができた、一人の「相談員」がいました。


 外はもう、すっかり春の匂いがしていました。



完結まで、残すところあと2エピソード!

灯の個人的な課題もクリアされ、いよいよ物語は「真のプロフェッショナル」への道、そして九条と灯のコンビの集大成へと向かいます。



実体験から書きました。少しでも、福祉従事者の役立つ情報になればと思い執筆してます(^^)

↓下記の評価ボタンをいただけると嬉しいです。よろしくお願いします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ