表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/24

第11話:火に油を注がない対話

初めて挑戦します(^^)

あたたかく見守ってくれると嬉しいです。よろしくお願いします


※この話で得られる「知識」

怒りの底にある「一次感情」への共感: 怒っている相手の「言葉」ではなく「感情の原因」を言い当てることで、相手の守備本能を解く。


自分の心を守る「6秒ルール」の実践: 怒鳴られてもすぐに反応しないことで、感情に支配されずに会話の主導権を握る。

岩田さんの家の呼び鈴を鳴らす。指先が少し冷たいけれど、昨日のような逃げ出したい気持ちはなかった。

 居間に入ると、岩田さんは険しい顔で庭を眺めていた。


「……また来たのか。何度言えばわかる。お前のツラなど見たくないと――」


 岩田さんの声が大きくなる。反射的に心臓が縮み上がる。

(……今だ。1、2、3……)

 私は心の中で、ゆっくりと「6秒」を数えた。

 4、5、6。

 不思議なことに、秒数を数え終える頃には、脳の奥の火花が静まり、岩田さんの怒鳴り声が「助けて」という叫び声に聞こえ始めていた。


「岩田さん」

 私は一歩、彼の方へ歩み寄った。

「何度も来てすみません。でも、昨日の帰り道、ずっと考えていたんです。岩田さんがどうしてあんなに怒ったのかを」


「あぁ!? そんなもん、お前が――」


「お前が、じゃありません」

 私は彼の言葉を、静かに、けれど毅然と遮った。

「岩田さんは、リハビリが嫌いなんじゃなくて、『できない自分』を見るのが、たまらなく悔しいんですよね。誰の手も借りずに、木を削り、家具を作っていたあの頃の自分と今の自分を比べて、情けなくて、叫び出したくなるほど……苦しいんですよね」


 岩田さんの口が、半開きのまま止まった。

 部屋を支配していた熱い怒りが、ふっと霧散していく。


「……お前に、何がわかる」

 今度の声は、怒鳴り声ではなかった。震える、小さな声だった。


「わかります。私だって、自分の不甲斐なさに毎日泣きたくなります。でも、岩田さん。その悔しさは、あなたが自分の人生をそれだけ真剣に生きてきた証拠です。情けなさを怒りに変えて、私にぶつけるのはもうおしまいにしませんか。そのエネルギーを、ほんの少しだけ、リハビリの力に貸してください」


 岩田さんの視線が、不自由な右手に落ちた。

 一秒、二秒。

 やがて、彼は顔を覆うようにして、絞り出すような声を漏らした。


「……バカ野郎。お前、生意気なんだよ」


 その言葉には、もう毒はなかった。

 岩田さんの頬を伝ったのは、ずっと我慢していた「一次感情」……悔しさと、誰かに分かってほしかったという安堵の涙だった。


 私は黙って、机の上にあったハンカチを彼の側に置いた。

 九条さんの言った通りだ。

 沈黙の中で、私たちは初めて、対等な人間として向き合っていた。


次話への展開

いよいよ第3エピソード完結、第12話:自分を許す、相手を許すです。

岩田さんの変化と、灯から九条への「反撃(?)」。そして締めくくりのメッセージへ繋げます。


実体験から書きました。少しでも、福祉従事者の役立つ情報になればと思い執筆してます(^^)

↓下記の評価ボタンをいただけると嬉しいです。よろしくお願いします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ