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『追放された契約書記官は《真契読解》で信用を取り戻す ――契約を失えば生きられない世界で』  作者: 百花繚乱


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信用が揺れる

信用は、成果が出ないと揺れる。

それでも残るなら――

それはもう、信仰に近い。


依頼は、減った。


露骨ではない。

だが、確実に。


「今回は、

他を当たります」


そう言われる回数が、

増えた。


俺は、

笑って頷く。


(当然だ)


王都からの視線も、

変わった。


「最近、

能力行使の記録がない」


監督官の声は、

冷たい。


「使っていません」


「……使えないのでは?」


核心を突かれる。


「回答を控えます」


それが、

精一杯だった。


街では、

噂が回る。


「真契読解が、

枯れたらしい」


「もう、

普通の書記官だ」


普通。


その言葉が、

やけに重い。


アリアが、

資料を持ってくる。


「……難しい案件よ」


「はい」


「断ってもいい」


一瞬、

迷う。


だが――

首を振った。


「受けます」


「……理由は?」


「ここで断ったら、

終わるからです」


正直だった。


案件は、

領と商会の共同投資契約。


金額が大きい。

関係者も多い。


そして――

期限が短い。


(……能力があれば)


考えても、

意味がない。


俺は、

現場を回った。


数字を洗い、

人に聞き、

夜を越えた。


期限前夜。


答えは、

まだ出ない。


頭は、

動いている。


だが――

決め手がない。


(……信じていいのか?

この線を)


不安が、

手を掴む。


そのとき。


戸口に、

あの老人が立っていた。


物流組合の代表。


「……来たのか」


「噂を聞いた」


椅子に座り、

静かに言う。


「能力が、

出ないらしいな」


否定しない。


「それでも、

君に頼みたい」


胸が、

強く打つ。


「なぜです?」


老人は、

即答した。


「君は、

間違えたときに

逃げない」


言葉が、

重い。


「条件を、

一緒に書こう」


老人が、

そう言った。


「完璧じゃなくていい。

だが、

逃げ道は残そう」


俺は、

深く息を吸った。


(……信用か)


能力じゃない。


結果でもない。


姿勢だ。


夜明け。


契約は、

成立した。


保守的で、

慎重な条件。


派手さは、

ない。


だが――

誰も、

無理をしない。


数日後。


大きな問題は、

起きなかった。


成功でもない。


だが――

失敗でもない。


評価は、

戻らない。


それでも。


「……あれで、

よかった」


俺は、

小さく呟く。


宿に戻ると、

アリアが言った。


「まだ、

終わってないわよ」


「はい」


「信用って、

揺れても、

折れなかったら

強くなるの」


俺は、

頷いた。


能力は、

戻らない。


それでも――

仕事は、

続く。


夜。


机の上に、

ルーペがある。


今日は、

触らなかった。


触れなくても、

前に進めた。


(……まだ、

やれる)


そう思えた。

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