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『追放された契約書記官は《真契読解》で信用を取り戻す ――契約を失えば生きられない世界で』  作者: 百花繚乱


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条件に、名前が付く

名前を付けられた瞬間、

それは力ではなくなる。

制度は、そうやって

すべてを管理する。


呼び出しは、書面だった。


《王都契約院・通知》

《特定能力行使者に関する整理》


乾いた文面。


だが、

内容は致命的だ。


アリアが、紙を握りしめる。


「……定義されたわね」


「はい」


俺は、眼鏡を押し上げた。


(来るべきものが、来た)


王都契約院・出張庁舎。


白い壁。

高い天井。

音が、よく響く。


エリオットが、

正面に立っていた。


「君の能力は、

正式に記録された」


一枚の書類を掲げる。


そこに書かれている文言は、

冷静で、残酷だった。


《特定契約解析行為》

通称:真契読解しんけいどっかい


契約内容の潜在条件を

高精度で抽出する能力


行使者は、

契約院の監督下に置かれる


無許可行使は、

越権行為と見なす


「……道具扱いですね」


俺は、静かに言った。


エリオットは、否定しない。


「制度にとっては、

最適な整理だ」


「選択肢は?」


「二つ」


指を立てる。


「一つ。

契約院所属となり、

行使を管理される」


――鎖だ。


「二つ。

能力行使の放棄を誓約する」


――死だ。


俺は、

一拍、黙った。


(どちらも、

俺じゃない)


「第三の選択は?」


エリオットが、

わずかに眉を動かす。


「ありません」


「あります」


俺は、言った。


「監督される側ではなく、

責任を引き受ける側になる」


空気が、張りつめる。


「具体的には?」


「“案件単位”での行使」


俺は、続けた。


「事前承認ではなく、

事後検証」


エリオットの目が、

初めて揺れた。


「使った理由と、

結果をすべて開示する」


逃げ道はない。


だが――

自由も、残る。


「危険だ」


エリオットは、

正直に言った。


「君が、

すべての責任を背負う」


「はい」


即答だった。


「だから、

使う場面を選びます」


沈黙。


長い。


やがて――

エリオットは、息を吐いた。


「……前例がない」


「作ります」


俺は、目を逸らさなかった。


その夜。


仮決定は、

保留になった。


完全勝利ではない。


だが――

処分も、なかった。


宿に戻ると、

アリアが言った。


「引き受けたわね」


「はい」


「怖くない?」


少し、考えてから答える。


「怖いです」


正直に。


「でも、

逃げる方が、もっと怖い」


アリアは、

小さく笑った。


「……そういう人だと思った」


机の上に、

ルーペが置いてある。


名前が付いた。


記録された。


それでも。


「読むかどうかは、

俺が決める」


そう呟き、

眼鏡を外す。

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