第五章 同僚編 殿下の瞳は犯罪級
本来は5000文字くらいなのをぶった切って2000と3000に分けてみました。
うーん・・・少ない。
「はーそんな事が……」
あの事件のあとの事を、食事をとりながら聞いたリアは、顔を真っ赤にしていた。
聞けば、ほぼずっと全裸だったというではないか。
涎垂らして抜け殻みたいだったとか、七色の炎に包まれていたとか――。
数年後にはきっと黒歴史になっていて、思い出すたびにベッドで足をバタつかせてる未来が見える。
そして、この指輪をくれた赤毛の冒険者は報酬を受け取って早々、西へ旅立ったと聞いた。
名は『ミルユル・メルニア』と。
冒険者ギルドが把握している情報は少なく彼女の仲間も、翌日には旅立っており、情報を得られなかった。
しかし、赤毛の冒険者の持ち物だった物が二つ手元に残った。
ひとつは『月影の指輪』ともうひとつは『白い制服のワンピース』。
この制服には見覚えがあった。
生前、親友が地元で、『かわいい』と言っていた制服だった。
リアとしては、今になってそれが制服のことか、女子高生のことかは疑問が残るところだった。
(……ってことは、私以外にも転生者が? まさか……いや……ありえるか。実はあいつ本人が赤毛の冒険者とか?いやいや、そんな都合のいい話ある? ……でも一応、調べてもらお。誰だったとしても会ってみたいしね)
これが後に、勘違いが勘違いを呼び、メルニア指名手配事件につながるのだった。
誘拐犯達は三名を残して死亡。
あらゆる手段を用いて調査が進んでいるという。
あらゆる手段のうち、その一端を紹介しておく。
アイジア王国には、大陸を統一した歴史があり、大陸規模のギルドの本部もまたアイジアにある。
そしてそれらの巨大組織は当然ながら、国の息がかかっている。
特に準軍事組織である冒険者ギルドの総長は王族の一人であり、リアの叔父の一人だ。
もちろん、ギルドは表向き中立を謳っているが、アイジア王国の出向機関だということは、知る人ぞ知るところだった。
そんな冒険者ギルドはさまざまな人材を有しており……調査はスムーズに進むだろう。
場合によっては、事件の首謀者は寿命を早めることになるだろう。
夏の朝の風が吹き抜けていき、彼女達を和ませた。
朝食を摂り終えてお茶を楽しんでいたときのこと。
「ところで、あんたら付き合ってんの?」
夢魔族の目隠し巫女・梓月がぶっ込んできた。
お茶を吹き出す、リアとルミナ。
「あ!?いやその!?」
「殿下の浮気で破局寸前ですけどね」
「ちょ!?え!?」
「リアちゃんさぁ……浮気は良くないよぉ?」
「いやっ浮気とかそんな!」
「夢魔族の私が言うのもなんだけどさぁ、これでも巫女だから言うけどさぁ、浮気は良くないよ?」
身に覚えのない事で詰められていくリア。
何かがおかしい。
そう感じてはいたが、それが何かを考える余裕がなかった。
「殿下……私だけを見てください。梓月と、喋らないでください!」
普段の彼女なら絶対に口にしない言葉だった。
そんなルミナの言葉に、短い付き合いしかない――それでも濃い関わりのある、梓月は違和感を覚えた。
普段のルミナなら言わないようなセリフだ。
改めて二人を観察した梓月は、とんでもないことに気がついた。
「ちょ!?リアあんた、魔眼が!」
そう、月影の指輪で収まっていたリアの魔眼【魅了の魔眼】が体調の回復と共に力を増していた。
今までは指輪で精神を落ち着かせ、それによって能力の発動を抑制されていたが、その許容範囲を超えつつあるのだ。
それが分かった以上、同程度の性能の、いやこれ以上の道具を用意しなければならなかった。
しかし、城の鑑定士によれば、今身につけている『月影の指輪』は非常に強力である上に非常に稀な代物で、しかも使われている石が星闇石という、古代の遺跡からしかし発見されないこれまた非常に希少な石で、つまりこれの代わりになる物は、世界中を探しても『そうはないだろう』とのことだった。
通常なら目を閉じるだけで発動は防げる。
だがリアの場合、それでも力が漏れ出していた。
これは力に目覚めたばかりで、制御が出来ていなからだろうと考えられた。
そこで、梓月からの提案で、彼女達 夢魔族が着用する【黒のレースの魔封布】を参考に王太女に相応しい意匠の【白のレースの魔封布】を作成することが提案された。
これと月影の指輪の力で、能力は抑えられて、めでたしめでたし。
三人はそう思っていた。
しかし――ことはそう簡単な話ではなかった。
午後になって、事件解決に尽力した近衛騎士達の謁見の際、ついうっかり目を開けてしまい、騎士達が魅了される事件が発生。
リアの隣にいるルミナへの嫉妬から、あやうく乱闘となるところだった。
この騒ぎを聞いて父王をはじめ国の首脳陣である面々が集められた。
そもそも【魅了】は国によって厳しく管理されている。
周囲で何か事件があったときには必ず疑いをかけられるほどだ。
どれだけ恐れられているかがわかるだろう。
そして、夕食も終わった頃、『王太女の魔眼の扱いについて〜目覚めた特殊能力で国家存亡の危機な件~』という一見ふざけたように見えて、大真面目な会議が開かれることになった。
それを聞いたリアはつっこんだ。
「ラノベのタイトルかよ!」
生前は読んだラノベを思い出すリアだった。
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