憐憫
憐れなのは誰なのか。
私は人が大嫌いだ。信用ならない。
お願いだから1人にしてくれと思う。
私は人の中心にいながらにして、誰よりも孤独だった。
同調するのは一人でいたくないから。
コミュニティに所属したいのは自分は点でなく線なのだと実感したいから。
ここからは立ち入らないで欲しいという明確な線引きが確かに存在するのに、見えないものであるが故に誰かが気づく事はない。
うまく立ち回り、愛想良く躱してきた。
人は鏡とはよく言ったものだと思う。偽った表情や愛でも、上辺の姿を返す鏡。
情をかけた相手が情をくれる事も、私がかけた労力の成果に過ぎない。
たとえどんなに心を尽くした相手でも、人はみなふとした瞬間に裏切る。
私を好きと言ってくる相手ほど信頼できないものはない。その瞳の奥に映る私は表面を取り繕った歪んだ顔のままだ。幾重にも隠された歪んだ私自身を知りもしない愛しい人。
「ありがとう、私も好きだよ」
そう言いながら心の中で相手を誹る。
私のような醜い存在を愛するなんて見る目のないやつだなと相手の価値が下がってゆき、憐憫が滲む。
ああ馬鹿だなあ。
馬鹿であるはずなのに。
こんなにも歪んだ心を持った私を。
好きだと言ってくれるあなたに、いつしか心底愛されたいと願ってしまった。
自分を繕うことでしか愛されないと思っている
こんな私を好きになってくれてありがとう。
憐れなのは私だった。
私は人が大好きなんだ。信用されなくてもいい。
お願いだから1人にしないでと思う。
今日も鏡に映る私は歪んでいる。
それでも愛おしい憐れな人に、憐れな私はまた
「君が大好きだよ」
と伝えるのだろう。
初めての小説です。
読んで頂いてありがとうございました。