007 『旋風一触』
眠い!!!(睡眠不足
ヴェリィの怒声に弾かれるように、私達は未だ走り続ける馬車から飛び出した。
と同時に。
――――ヴォォォォアアアアアア!!!
魔獣達の雄叫びが、平原に響き渡った。
――やっぱり効果は同じかッ!
「ヴェリィ!この周辺にいるモンスターは何体ッ!?」
だが、あの花にも有効な範囲がある。周りにボスが少ないのであれば、問題は―――
「ざっと十体!だけど、十中八九飛行型も追加されて四体くらいは増える!!」
「なんで初心者エリアにモンスターがそんなに多いんだよッ!?」
「プレイヤーが増えるって踏んで前より多めに配置した運営が悪いかなぁっ!!」
「あんのクソ運営ィ!!!」
既に飛行型の姿が南の空へと見え、地上を駆ける多数のモンスターの姿も見え、一瞬にして百鬼夜行と化した平原を見やりながら、この状況に悪態をつく。
正直言って、今の状況は絶望的だ。
今から始まる百鬼夜行は、飛行型を除けば、初期武器に付与された《不壊》属性による「死ぬまで殴れば死ぬ」戦法でどうとでもなる。多分。
だか、問題はその飛行型だ。
今の私には対空性能は皆無……ではないが、ボスを倒し切るほどの火力はないと断言できる状態だ。
さて、どうする?
どう考えても、一人で相手出来るような数じゃ―――
「空中型は私が相手するから大丈夫。カンナちゃんは興奮しながら突っ込んでくるヤツらを片っ端からぶっ飛ばして!」
「カンナちゃぁん!私が気合で足止めするから、さっさと経験値に変えてやりなさぁぁぁい!」
「ボク達の援護ある上に、レベルアップの周回作業如きで、落ちたりしないよねぇ!」
「―――ッハ!勿論ッ!」
そうだ。私は一人じゃない。
全てを置き去りにきて駆け抜けた力は、今はもうないんだ。だから、一緒に戦える。
長らくパーティなんて組んでやってなかったから、忘れていた。
仲間に、頼るということを。
一度気づけば、視界は開けた。詰みだと思っていた思考が徐々に回復するのが分かる。
ああ、なんだ。
「イージーゲームじゃんか……ッ!!」
気づけば、馬車へと群がる地上型のモンスターと、その上空を旋回する飛行型の姿が見えていた。
総勢一三体。飛行型は四体確認できるので、地上型のモンスターのどれかが討伐されて間もなかったのだろう。
だが百鬼夜行の威容は、決して陰りなどしてなこった、
恐竜種や牙獣種、果てには劣化しているとはいえ竜種まで集結したこの場は、まさに地獄と言えるからだ。
だけどそれは、私たちが一般プレイヤーだった場合のみの話。
「ヴェリィ、飛行型は私が落とす。足場お願い」
「了解」
「アルはヘイトスキルで視線を誘導してくれる?」
「まっかされた!!」
「トメト。私の刀に《爆発属性付与》よろしく」
「あいあいさー」
ヴェリィが《錬成の陣》を。
アルが《聖なる盾》を。
トメィトゥが《寄生植物》である己の蔓を。
そして私が、今となってはもう懐かしい一本の刀を呼び起こす。
この刀の銘は―――"不月"
「ふぅ……」
息を吐き、吸い。身体の『熱』を際限なく引き上げる。
目標は空を仰ぐ、怪鳥と翼竜の二対。
普通ならばあそこに到達する術を、私は持ち合わせてはいない。
だが、道は既に識っている。
「《壱の太刀・――」
ならば、不壊たるこの刃に―――ッ!!
「――――旋風》ぇ!!!」
断てぬモノ無し。
どんな挙動かは次に語る。
明日…というか今日は更新しないかも。寝るから(そろそろ死にはしなくとも倒れる)
衝撃には備えて、リボルバーの弾は何発も装填出来るのだから…