003 『黎明の魔女』
ギリセェェェェェフッ!!!(現在23時58分)
文章作るのムズすぎて笑えない(語彙力不足
転移の光が視界を覆ってから数秒。すぐに光は収まり、私はおそるおそる瞼を開けた。
「うぉ――――ッ!?思ったより変わってる!?」
若干。というには変わり過ぎている街並みを見て、最初に出た感想だった。
街の原型は所々見覚えがある建物あるから変わってはいないようだ。ほら、あそこによくネオアームストロング砲とか言われてた建物が鎮座してるし。
原型が残っているだけで、様相がビックリするくらい変わっているところもある。
「路面電車……ならぬ魔車?に街灯まで……古代遺物ってあんだけ見つけるの大変だったのに……!」
前作では無駄に広かっただけの大通りの中心を路面魔車が走り、夜は窓から漏れ出る光しか光源がなかったが、今では街灯が設置され、常に明るくなっていた。
それら全ては、私の知識が間違っていなければ、一つのカテゴリーに分類されている。
「古代遺物」所謂古代技術として扱われる魔法文明が発達しらこの世界には見合わない機械的なモノの総称だ。
名前からも分かる通り、こんなに当たり前に使えるような代物ではなかったのだけども……
「うん。わからん」
もしかしたら前作で古代遺物に関するサブストーリーが展開されてたり、今作で何かあったから、こんなことになってるのかもしれないが。ぶっちゃけ何も知らないのであまり意味はない。
あの停滞した世界から進んでいる。それ事実があるだけで充分だ。
「んじゃ集合場所に行くかぁ!」
少しばかりしんみりとした雰囲気を吹き飛ばすかのように叫びを上げ、意気揚々と何故か標準で備え付けられてるマップを開く。因みに前作にはなかった!!
ふむふむ。街の大きさも変わってないようだし、集合場所も私が思った場所と違いはなさそうだね。
確かあの時計塔は……こっからじゃ見えぬ。
ならばと、視線を巡らせ、丁度いい足場となる場所に辺りをつけ―――跳躍。
「ほっ!やっ!よっぉぉぉと!」
壁の小さな出っ張りや、窓枠。飛び出した屋根などに掴まり、実に忍者らしく軽快にレンガで出来た屋根へと降り立つ。
着地した屋根にも何やらソーラーパネル的なモノが設置されているが今は無視し、目的の時計塔があるえあろう方向へと視線を走らせる。
「あっちに―――あったあったッ!」
街の東―――ここは南―――の方に見慣れた街のシンボルが見えた。
通称『時計塔』。本来は別の役割を担っているのだが全然使われないせいで、正式名称と共に役割ごと忘れられた悲しきオブジェである。勿論私も覚えてない。
ッと。また余計なこと考えてた。
頭を振り、無駄に思考をすぐさま蹴っ飛ばす。
「身体の調子も確かめたいし、いっちょ全力疾走でいくか!」
加速系のスキルは無いが、この距離を走るなら素の速度でも充分。
集中しろ。最初が肝心だ。一度半端な速度でビビると二度と本気は出せない。
身を低く保ち、肺にあるすべての空気を吐き。
一息。
「――――ッ!!」
己の中の合図と共に、未だ発展すらしていないアバターが今現在の限界速へと辿り着くため、走り出した。
屋根と屋根との間を軽々と飛び、駆け抜けていく。
「右右右左上左上右右左下ァ!!!!」
変動し続ける障害物の嵐を一瞬で処理し、辿るべき道を見て、敷き続ける。
目の前に壁があれば素早く跳躍し、坂があれば勢いよく滑り、街灯があれば尾を巻きつけ更に加速する。
――ビビるな。走り続けろ。
最初が肝心なんだ。今の私だと感覚を戻すのに時間がかかる。
――でもッ!
「やっぱ怖いってコレぇぇぇえええ!?!?」
普通に時速何十キロとか超えてる速度でパルクールするなんて正気じゃねえよ運営のハゲぇ!!!
因みに、パルクールすることになったのは道なりに進むのが面倒くさくて、屋根を伝って行くことに決めたせいである。
つまり自業自得である。
「うぉぉぉおおおおおおお!!」
だがそこは元廃人クオリティ。なんとか恐怖心をへし折り―――ヤケクソとも言う―――見事に限界速を保ち続けていた。
だか私は時計塔にたどり着く直前に気づく。あることを完全に失念していたことに。
「あ、これ死んだわ」
今まで足場代わりにしていた屋根が、消え失せる。
時計塔の周りには広場が存在している。つまり、足場代わりの屋根が一切存在しない。
――さて、そんなところに勢いよく飛び出したらどうなるでしょう?
「おぉぉぉぉちいぃぃるうぅぅぅう!?」
結論。地面の愉快なシミになる。
加速による慣性が重力によって一瞬で消え去り、そのまま石造りの地面へと導かれる。
完全に油断した。足場系のスキルがある感覚で行動していた。
勿論こんな序盤にそんな便利スキルはない。《身代わりの術》はあるが、あれは落下ダメージは肩代わり出来ない。
つまり。完全に詰みである。
「初のデスが開始早々街での落下しとかいやぁぁぁぁぁ!!」
叫んでも結果は変わらない。そう思いながらも、自分の記憶へと強い戒めを結ぶため。私は全力で絶叫した。
それが功を奏した。
「遅いなーって思ったから見に来たのに、カンナちゃんは何やってんのさ?」
突如。私を囲むようにして、魔法陣が四枚展開された。
すれ違いざまに見えたのは、まるで軍隊のような統制の取れた魔法陣だった。
私は、この魔法陣に見覚えがあった。
この魔法陣の名は―――《錬成の陣》。
「うおっ」
ガシィ!とアバターが何かに掴まれる感覚を覚える。
何事かと己の身体を見れば、魔法陣から錬成されたファンタジーな世界観に見合わない、古代遺物とよく似た輝きを放つ、四つの鋼腕の一つに掴まれていた。
にぃっと口角が上がるのが分かる。
だって、私の記憶にこんなモノを使うようなプレイヤーは、一人しかいないのだから。
かつて、宇宙まで作り込まれているとは思われていなかったあのゲームで、たった一人で宇宙軍を編成し、空が只の飾りではなく、実体があると証明した変人がいた。
そのプレイヤーの名は―――
「ヴェリィ!!」
「よっ!受験は上手くいったかな?お姉さん心配してんだぞ〜」
――PN"ヴェリィ"
『黎明の魔女』の異名で呼ばれた、リベリオン・オンライン史上最強の範囲攻撃を持つと謳われた「錬金術師」である。
竜人なら飛べると思うじゃん?あれSTRの値に応じて飛べる距離決まるんだよね。
はい。カンナさんは飛べません٩( ᐛ )و!!
まあいずれ飛ぶでしょ(あまりにも雑