002 『ステ振りは迅速に』
待 た せ た な
意識が暗転し、少しの間を置いて浮上する。
「お」
目が覚めると、約四年前にみた部屋と非常に酷似した場所にいた。
正方形に造られた部屋は、まるで方眼紙のように線が張り巡らされていた。
所謂、キャラメイクをするための場所である。
「相変わらずなんもねぇ~」
――接続完了。
――ようこそ《Rebellion Online Ⅱ》へ。
――前作で使用されていたアバターデータが存在しています。
アナウンス共に前作で使用していたアバターが表示される。
金髪翡翠眼の童顔といったまるでエルフのような顔と、身長百六十センチという背丈と貧弱な胸部装甲。だが身体には龍の角や尾が一体化されており、エルフではないことを明確に表していた
一見すれば貧弱な身体に巨大な龍の角や尾がついてアンバランスに見えるが、重心などを考慮した上でこれが最適だと考え抜いた結果がコレなのだ。
決して、決してドラゴンかっこいいと思ってわざわざ胸まで削って調整したわけでは、断じてない!!
言い訳完了。もう私は無敵だ。
「それ使って」
本当は少し弄りたいところ―――主に胸、今なら乗りこなせるはず―――があるけど、今は一刻も早く乱闘が起きているであろう待ち合わせ場所に向かわねばならない。
だって爆殺狂と変態の取っ組み合いとか絶対面白いじゃん?
――ステータスとスキルを調整してください。
「はいはい――――って、うぇ?DEX追加されてるじゃん!?」
驚きだ。あの数百人規模のお気持ちメール爆撃を喰らってなお修正パッチを入れなかった運営が、改悪ではなく改善をしているだと……ッ!?
何故だ!と考えて数秒。様々な答えが過る。
「マニュアルで絶対に制御不可能なスキルを作った?いや、あの運営意外と褒めたらチョロいからバズった影響で改善のほうに舵を切った……?」
駄目だ。あの運営のことだから全部ありえる。
――ステータスとスキルを調整してください。
ッと。そうだった。今はステータスを決めなくては。
逸れていた思考を引き戻し、目の前に書かれたステータスと睨み合いを始める。
◆Status◆
Name:Kanna
Lv:0
STR(筋力):0
AGI(敏捷):0
DEX(器用):0
VIT(頑強):0
MID(防御):0
LUC(幸運):0
◆skill◆
・none
◆Unique Skill◆
・none
ステータスが表す役割は書いてある通り。DEXが追加されていて前とは少し違うが、今は時間が惜しいので、前作と同様の値だとして……あ、スキルもだね。
「えーっとここはこうして、職業も取得して……げっ、ただでさえ多かったのに五倍くらい増えてる。あとでもう一回調整しよ……」
前作には存在してなかった職業がざっと並び、軽く頭がふらっとする。あぁ。自分に最適な職業を見つけるところから開始かぁ……辛いなぁ……
「まあなんくるないさー」
面倒ごとは未来の自分にぶん投げるのが吉。これ格言だから!!!
それはそうと、各ステータスに振るべきポイントは頭に入っている。幸い初期から振れるポイントは変わってないのでサクッと振ってしまうことにする。
ステータスに合わせて、予め考えていた職業と付随するスキルを選ぶ。
「よし。こんな感じかな!」
構成したステータスを再度確認し、問題がないことを確認してから完了を押す。
――種族を選択してください。
「もう決めてあるけど。一応ランダムも試しておこ」
実はランダムで選択するとた――――――――ッまに通常の選択肢からは選べない所謂レアな種族があるんだけど……
――《天使族》を選択しますか?
「のー」
勿論。そんな都合よくレアな種族が出るわけがないのである。
「まあ悪逆非道の乱数の女神が許すわけないから当然だね。予定通り《竜人族》で行くかぁ」
――キャラメイクを完了します。
――終了する前に最後の確認を行ってください。
「ん」
◆Status◆
Name:Kanna
種族:竜人族
職業:忍者
Lv:0
STR(筋力):0
AGI(敏捷):30
DEX(器用):0
VIT(頑強):15
MID(防御):5
LUC(幸運):0
◆skill◆
・忍者適正
《隠れ身の術》
《身代わりの術》
《分身の術》
・刀術適正
壱の太刀《旋風》
弐の太刀《轟鳴》
◆Unique Skill◆
・竜人適正
《エレキブレス》
「それじゃ行っちゃうか!」
いつの間にか座り込んでいた身体を勢いよく飛び上がらせ、スチャッと着地する。
「行き先は……」
初期リス……ゲーム開始地点は共通みたいだね。
ならば後は飛ぶまで。
開かれたステータスを適当に丸め込んでボイっと捨て、キャラメイク完了の合図を送る。
「うし。それじゃあ始めるか」
そういえば、このゲームについて少し語り忘れていたことがある。
このゲームがこんなにも高難易度な理由だ。
実はこのゲーム。雑魚という存在が基本的には存在しないのだ。
雑魚がいないということは、レベリングをすることなくボスに直接挑まなければいない。
理由は単純明快。
このゲームのコンセプトは圧倒的格上を殺す、それに集約されているからである。
人の理解の外側にいるバケモノたちを狩り、征服し、欲望のまま叩き潰す。
現実離れした奴らの姿から漏れ出る『死』の恐怖。
あの感覚が忘れられなかったから。今、私はここにいる。
「あぁ、楽しみだなぁ」
前はゲームが終わってしまったから、達成できなかったけど。
――今ならできるよね。
「目標は神殺しッ!反逆者の名に相応しい活躍、とくと見ておくがいいッ!!」
――転移地点『王都・フィーディア』に転移します。
拳を握り天高く突き上げ、とごにいるかも分からない神に宣戦布告した直後。転移の光が私を包んだ。
こうして、かつて叶わなかった最大の目標を再び掲げ、私は仮想世界へと舞い戻ったのだった。
明日も複数話投稿かは分かりません_(┐「ε:)_
でも毎日投稿(予定)だから一話は出るぜ!時間は昼か夜だ!(雑