018 『花火師と塔使い』
その光景は、素晴らしい物でした。
久しく見ていなかった彼女の刃は確かに鈍っていました。前作で当たり前のようにこなした超人的な機動も、全盛のあの頃より劣ります。
ですが。
キャラメイクによって作り出されたとは思えない程自然な美少女フェイス。あざといまでに「かわいい」が詰め込まれた華奢なボディ。かと思えば無骨さを強調する竜の角と尾。それに加えて好戦的な笑みと年相応に爛々と輝く瞳!あぁなんて愛らしい。できればこの後、いえ今!顔はだめでも首当たりをぺろぺろし――
「アルぅ?顔面が崩壊してるよぉ?」
「すみません」
あぁいけません。少しばかり、この熱い煩悩が溢れてしまったようです!
「まあ、いいけどねぇ……」
「はぁ……カンナちゃん好きぃ……」
「………」
呆れた目をしたトメイトゥのことなど目に入らない私は、際限なく煩悩を膨れ上がらせます。
まあ、それは阻止される訳ですが。
「おっとぉ」
「《聖なる盾》」
挨拶代わりに叩き込んだ塔数十本の衝撃から復帰した『白龍』から、雪に似て非なる夥しい量の『白』が代わりに叩き込まれます。
咄嗟に出した《聖なる盾》に凄まじい負荷がかかり、盾越しにHPをゴリゴリと削ってきます。継続回復スキルを積んでおいて正解でした。これがなければ即死コースを爆走していたでしょう。
「しかし、相変わらず重いですね……!」
未だ本体は動こうとせず、じっとこちらを見つめるだけの『白龍』に思わず毒づきます。
ですが、ダメージ判定を持つこの雪モドキをまき散らしている間はまだマシです。
暫く経てばこのアホは数メートル級の氷柱をこの雪と同じレベルにまき散らし、更に本体も発狂しながら突撃してきたり、その巨体に付随する尻尾を存分に振り回し地上を壊滅させた挙句、最終的には空を飛び、街ごと凍らせて強制的にゲームを終わらせてきます。
つまりクソです。今日こそミンチにします。
「んぅ……これでいいかなぁ」
と、過去五回ほどの敗北の記憶が蘇り、殺意の再確認をしていると。何やら背後でボゥっと手から火を発生させていたトメィトゥが立ち上がります。
「んじゃ!一発行こうかぁ。三カウント、足りるぅ?」
「十分です……よっ!」
短く言葉を交わし、《聖なる盾》で『白』を押し返した後。特に気合の叫びもなく、まるで散歩にでも行くかのように、トメィトゥが走り出しました。
1。
「ひひっ!」
決して速い訳では無いはずの彼女のアバターが、廃人特有の異常なまでの回避力によりスルスルと『白』の弾幕を抜け、本体へと向かいます。
2。
「うんうん、いいよぉ!もっとがんばってぇ!」
おそらく弾幕の密度が上がったのでしょう。服の裾から蔓が見えた瞬間、彼女の両手に火が宿り必要最低限、自らが進む道にのみ熱を放ちます。
3。
「ほらほらぁ!もっともっと増やさないとだめだよぉ!」
『白龍』も流石にまずいと思ったのか、一定時間後に解放される氷柱による弾丸の追加がされました。相変わらずの威容に殺意が沸きます。
ですがそこはもう。
「はい、ざんねんでしたぁ!」
彼女の射程圏内です。
「《炎の華》ぁ!」
彼女らしいシンプルなスキル名と共に、地上に花火が咲き誇り、爆音と爆炎が一面を焼き尽くしました。
「あはははは!どかーん!」
何故植物の体なのに炎を扱っても燃えないのか、そもそもなんであんなに爆発しているのか、というかんあで生きてるのかという疑問が浮かびますが。うかうかしていられません。
既に術式は描いてあります。あとは落とすだけ。
「《召喚・―――」
そういえば、言い忘れてました。さっきから盾役しかしていないので説得力がないのですが、実は私。本業は―――
「―――螺旋の大千塔》」
―――《召喚士》なんです。
「ミンチになれ。クソトカゲ」
因みに《聖なる盾》君にもクソギミックは積まれてます。




