016 『蹂躙』
ム・ズ・イ☆
「ぃい!」
頑強にモノを言わせ、無理矢理にスライディングに移行し。
雷霆を轟かせ、地上に足を付かせたのは、ほんの数秒だった。
目の前に健在するのは、全長三十メートルは優に超える巨躯を駆る『白龍』の姿。
相変わらずスケールがアホすぎて乾いた笑い共に溢れる高揚感は、なんとも得難いものだと再認識しながら。
「《旋風》!」
風刃一閃。だけども浅い一撃は相手を怯ませることは叶わない。
想定外の硬さに腕の感覚が一瞬飛び、その隙を狙うように空中に現れた氷柱が降り注ぐ。
「あっぶ!?」
この速度に反応するんじゃねぇ!と身体能力に物を言わせ、連続バク宙からの跳躍という曲芸を披露しながら考えた一つは理不尽な相手への文句。
そしてもう一つは、これから辿る順路を見据えた集中し切った思考だ。
まずは初手大技。壊雷&浸焔込みの攻撃だ部位破壊させろーッ!
「膝カックンだヨッ!!」
挨拶代わりの《轟鳴旋風》を、四つん這いになりこちらを見ていた『白龍』の両前足に叩き込み。
「もう一本よこせいっ!!」
前足が削れたことでちょっとばかしビックリした『白龍』の隙を縫い。
「《蓮華》」
刹那の間に八の刺突を成し、それは正しく蓮華が咲くが如し。
ッと!カウントが足りてなぁい!!
「追加で《轟鳴》でぇーす!!」
五重に重ねた斬撃を飛ばし、壊雷&浸焔のカウントを進めれば。
「グゥワ!?」
確定部位破壊&再生阻害の害悪フルコンボが決まるッ!
足三本という身体を支えるインフラを失った『白龍』が怒り咆哮を上げる間もなく、その巨躯を崩したことを視認すると同時に、私の身体は再度《空転走破》の風を纏う。
「気張って行こう」
風を要する二歩。魑魅魍魎が跋扈するこの世界において、比較的小さめに分類される『白龍』の全長を駆けるなど、一秒もあれば十分。
なお横移動に使ったのは一歩のみ。もう一歩は――
「揺れろ脳髄ッ!!」
『白龍』の顎を、思いっきり蹴り上げるためである。
「ガァアアアアアアアア!!!」
「あと目ん玉ぁ!」
《空転走破》二歩による、ミスったら文字通り半身が吹っ飛ぶ反復横跳びで一気に『白龍』の頭上に現れ、渾身の一撃を目玉へと叩き込む。
視界、機動力を奪取。王者らしい偉そうな慢心も引っ込んだ。
よし。ギア上げよう。
「………ッ!!」
一息。
脳みそに叩き込んだ目の前の景色を処理。そして、吸った酸素でソレを実行する。
見て、敷いて、辿る。
やってることはこれだけだ。あとは反射神経と身体の感覚に併せ、人形のように正確無比に繰るのみ。
回避についでだけど……私のコレは、ほぼ全自動みたいなモノだ。あの速度の最中、敷いた『道』を変えるなんて、前作で持ってた『雷焔』のようなイカれポンチスキルが無ければ無理と言うもの。
加えて、約一年のブランクがあると来たものだ。無茶無謀もいいところである。
だけど。そんなガタついて、前とは比べ物にならない程『遅く』なったとしても。
「く――――ッたばれぇ!!!」
失敗する気は、さらさらしなかった。
視える軌道は幾百十。されど辿る順は識っている。
「ゴウゥゥウウウウウウウ!!!」
全ての技が矢継ぎ早に、雷光が戯れるかのように奔り、『白龍』の身に斬痕を一瞬にして刻み込んだ。
数十メートル単位を巨躯を持つ、龍の身体に。
刀だけでは削れ切れないと分かっていたから、全てを壊す雷と、全てを喰らう焔を叩き込んだ。
一秒という時間の間に、幾重の雷光が迸り。
それが、三十という時間を重ねた後。
「っは……はぁはぁはぁ……」
『白龍』は、その原型を残さず。
黒こげの骸へと成り果てていた。
思ったよりあっさり死んだね『白龍』。
おや、そういえば他の三人は何やってるのかな?




