015 『りべりおんに#67』
二週間のザホリを取り返すかのような怒涛の更新
「じゃぁ、私達も行ってくるねぇ~」
「支援、感謝します」
「はいはい。遊撃お願いねー」
カンナが始めたての勢いとは思えない速度で『白龍』へと向かってから数十秒。
既に裸眼では観測できなくなったカンナを追いかけるため、ヴェリィとトメィトゥが崖から降りていった。
「さて」
軽く激励をかけ、彼女達をいつもの胡散臭い笑みと共に送り出すと、ヴェリィはおもむろに後ろを振り返り、何も存在してない虚空に向かって声をかけた。
「はーい皆出ておいでー配信始めるよー」
:お、配信ついた!
:予告なしにに急に枠とるからビックリしたわ
:こんばんは
「ごめんねー。やる予定なかったんだけど、なんかやりたくなったからさー。ははー」
呼び出したのはシステムウィンドウ。声をかけたのは、今か今かと待ち続けていた視聴者にだった。
:うーん胡散臭い笑顔。0点!!
:だがそれがいい
:草
:清々しい笑顔だー
: 何の点数なんだ……?
「誰が胡散臭いって?」
:あ、はい……
:さーせんした
:魔女様やっぱり沸点低くない?大丈夫?牛乳いる?
:魔女様社会だとバリバリに働きまくって会社に強制的に休まされるくらいの社畜だぞ。もっと労われ
:このマッドが社畜……?そんなパンナコッタバナナ……
軽く圧をかけ視聴者を黙らせ、配信タイトルに書いてたことについての説明を始める。
「今日は《隔ての地のバイザール》をぶっ飛ばしに来たんだよね。欲しかった役割こなしてくれる子と連絡が取れたからさー」
:バイザールかぁ……
:ヒェッ
:攻略組のトラウマがががががが
トラウマが刺激され騒がしくなり始めたコメント欄は一切無視し、めんどくさくなってきたと感じたヴェリィは、さっさと伝えたいことを伝えることにした。
「今日のメンバーは私、アルちゃん、トメィトゥ、それとカンナちゃんだね」
:あれ?カンナって音信不通じゃなかった?
:アルちゃさん珍しー。いつも天獄に引きこもってるのに
:え、カンナって誰?
:我が推しきたぁ!
:あのトメト許すまじ
:生きてたんかあの子
「なぁんか色々あったけど、今日始めるって聞いてたから連れて来たよー」
:はえー
:初心者を連れてくるとか大丈夫?
:勝ったな風呂食ってトイレ飲んでくる
:あの、ホントに誰?
:前作で音速を超えるイカレ機動を素の思考速度で完全制御してた龍姫様を御存知ではない???
「あれは私には無理だね」
:数百機のロボを同時並行で動かして軍団作ってるイカレ魔女がなんか言ってます
:そもそも完全ファンタジーな魔力を組みこんだ機械の設計をできる時点でイカレてんだよなぁ
:魔女様が強いのはマルチタスクだから……
……説明はした。後は勝手にしたらいいさ。
とても配信者とは思えない思考でコメント欄から目を離し、この作戦における自分の役割―――後方支援の方法について模索する。
カンナの予想外の強化。これを考慮すればファンネルによる近接戦闘への支援や自分自身がアタッカーになることも視野に入れなければならない。あとは弾幕やスタン系のグレネードもいいかも知れない。
事前に考えていた策に次々とほかの策も突っ込んでいた時。それは起きた。
:なんか光ってね?
:すっごい見覚えがあるエフェクトだ
:龍姫きたああああああああああ
遥か天空に、紅の光が奔った。
流星が如き速さで迸る迅雷は、『白龍』の頭上へと駆け抜け……
:えっっっっぐ
:吹雪が一瞬消し飛んでて笑うしかない
:しょしんしゃってなんだっけ
遠方にて輝き、轟いた紅の雷が龍の形を取り、未だ微睡む『白龍』へと飛来した。
認識阻害がかけられた吹雪をも貫通し、認識させるあの雷の出所は、おそらくは獣人カテゴリの『覚醒』スキルを使ったのだろうと予想できる。
……確か《始原回帰》だっけ?
《始原回帰》は、人間をベースとし他の魔物の因子を宿す所詮『獣人』カテゴリのプレイヤーであれば、やり方さえ分かれば誰でも使える技能だ。
因みにその方法は、別に王都の図書館にでも行けば普通に書かれてる基礎知識の範囲であるため、限られた者にしか知ることが出来ない極秘情報という訳でもない。
だが、これを使うプレイヤーは限られた一部の者しかいない。
何故なら―――
:は?ワープ???
:一生線が見える……
:なんで既に上にいるんだよおかしいだろ0.5秒前までいただろぉ!?
:当たり前かのように空を跳ね回るな
:一周回って畏怖じゃなくて笑いがこみあげてきた
:見えてんのあれ???
:白龍君も追いついてはないけど認識自体はしてね?
:人外魔境すぎる
制御なんて出来やしないんだから。
雷光が迸り姿が掻き消えたかと思えば、遥か天空から飛来し。
疾風が宙を踏み抜いたかと思えば、途端に刻まれる斬撃の痕。
空を駆け、大地を踏み抜き、刀を一閃すれば、未だ微睡から目覚め切っていない愚鈍な龍などに、彼女を止められる訳がないのだ。
『カンナ』。かつて存在したあのゲームにおいて、最強の一角に座していた龍姫。
「帰ってきたね。カンナちゃん」
彼女に帰還に、ヴェリィは思わず言葉を零したのだった。
※まだ序盤なので敵も味方もおとなしいです。超次元バトルはまだまだ加速します。




