013 『東都・イン・ドラゴン娘』
……スッ(のそりと起き上がる身体
一 週 間 が 経 過 い た し ま し た。
「ひぃい!さぁぁぁああむぅぅうう!!」
「ごめん忘れてたぁ。はいこれ、ホットドリンクだよぉ」
「あざますっ」
差し出された瓶を受け取り、グビッと一気に飲み干す。
あれから数十分後。
一度目の道のりとは違い、平原の東を守護していたボスを瞬殺し、これっと言った問題もなく私達は目的の地域へと辿りついていた。
『東都』かつて此処、フィーディア王国で二番目に栄えていた大都市である
「はぁ寒かった……流石にNPCに氷淵の獄牢とか言われるわけだ……」
白い息を吐きながら、そう呟く。
銀色に染まった世界を見ながら進んで来た感想だ。
馬車の中は結界が張ってあったのか寒くなかったが、外に出た瞬間それを実感した。
「で、その元凶はどこに?」
「こっちだよぉ」
トメィトゥが指さした先では、アルとヴェリィが既に何やらある方向を見つめて話し合っていた。
特に言われるまでもなく彼女の後について行き、先に居た二人と合流する。
「ヴェリィ~バイザールは相変わらずかなぁ?」
「うん。動いてないよ。石像かってくらい一切動いてない」
吹雪の中、謎のゴーグルを被り、何かを見ているヴェリィがそう言った。
報告を聞いて私達はこう思ったことだろう。
――まあ、だろうな。
あの『白龍』のことは、知ってる身であるからして。
「カンナちゃん。一応、一応確認だけど、アレどう見ても君が契約してた龍だよね?」
「どう見てもウチの白龍にしか見えねぇわどゆことだよヴェリィさんや???」
「むしろこっちも知りたいんだよねぇカンナちゃん」
そう、あの龍。どうみても私が契約した口寄せなのだ。
『聖龍』
そう呼ばれていたあの子は口寄せの中でも一番汎用性と利便性が高く、重宝していたのだ。
こき使っていたからこそ。あの龍がかつての『聖龍』だと分かる。が。
「……違うな」
だからこそ、違和感にも気づける。
まず、この銀色に染められた大地だ。聖とつく通り、あの龍は聖属性を司ってたはず。水龍の管轄である雪や氷を操っているのは妙だ。
次に行動だ。あの子はだいぶ暴れん坊だ。暴君といっても差し支えないくらいに気性が荒い。私が契約するまではプレイヤーが何度も轢き殺された。こんな辺鄙な場所に何十年も居座るとは思えない。
そして最後は。
「弱すぎる」
圧倒的に感じたあの重圧を。「死」というゲームでは感じるはずのない恐怖が、これほど近づいているのに感じないのだ。
普通なら年月が経ったせいで弱くなったとか、そういうことを真っ先に考えるんだろうが、生憎と龍種には該当しない。あいつら寿命ないらしいし。
ましてや回復や解呪の代名詞とも言うべき「聖」が付く龍だ。怪我や呪いによる弱体化を考えるだけ無駄というもの。
結論
「なるほど分からん」
「では、もう直接聞くしかないですね」
アルがそう言いながら立ち上がる。
凛々しい顔をした彼女は相応に美しく見える。
「カンチャン!イキマショウ!!」
「顔を整えてから出直してくださーい」
前言撤回。やっぱダメだわこの人。
私と目があった瞬間。顔面の偏差値が一気に墜落するほど緩々になった彼女をみてそう結論づける。
こいつは、変態。おういぇす。
「さてさて。茶番劇はこの辺にして―――行こうか」
ヴェリィの取りまとめる声が聞こえ、全員の意識に緊張が走る。
「アイツの行動パターンについては、さっき聞かせた通り。私達が一番最初に取る手は、防御態勢を取られる前に、認識できない速度での攻撃」
……これがあるかないかで戦闘時間が大幅に短縮されるからね。
「カンナちゃん。開幕の狼煙は、君だよ。その後は前線で頑張ってほしい」
「任されたッ!」
私は勢いよく頷き。
「その後の護衛はアルちゃんに任せる。サポートはするからお願いね?」
「分かりました」
アルは先ほどとは打って変わって澄ました顔で了解の意を示し。
「トメィトゥは……言わなくても分かるよね」
「遊撃だねぇ。派手に吹っ飛ばしてあげるよぉ」
トメィトゥがニヤリと笑って承諾した。
満足げにヴェリィが頷くと、再び私に視線が向けられる。
……ふふん。言われなくともわかるとも。
「「全力だね」」
奇しくも声が重なる。
ちょっと恥ずかしいが、今は無視だ。
軽く笑った彼女たちから視線を移し、今いる崖の縁へと―――走り出した。
このまま行けば私は重力に従い、崖下でポリゴンを散らして街でリスポーンすることだろう。あの白龍を直接見ることも叶わず、だ。
……まあ、そうなる訳がないんだけど。
「ッシ!」
崖の縁へと至り、立ち止まることもなく―――跳躍。
途端に生じる浮遊感。でもそれは一瞬。
「《空転走破》ァ!!」
起動と同時。意図的に踏み出していた足に、空を歩む風が宿り――
「一歩」
私の身体が、弾丸のように前へと飛び出した。
参ります。




