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どうも、木⋯⋯の妖精です。  作者: 夏巻き
蜂蜜片手に笑うは骸
91/112

情報収集始めに届く声。

湖面に(つる)を垂らし、空を泳ぐ雲を(なが)める。


「釣れませんねぇ⋯」


myachil♡(ミャチル)さんに防具となる服を依頼してから二日。

現在、風のない晴れ渡る空の下、妖精の森にある湖で釣りの真っ最中。

釣竿は自作。梨の木の枝と植物の蔓を組み合わせたもの。その見た目とは裏腹にそこそこの強度を(ほこ)る。


とはいえ所詮(しょせん)、枝に蔓を巻き付けて結んだだけの原始的な釣竿。何度も使用できるほど頑丈というわけでもない。

最初に作った、パシフィックソーリーを釣る時に使用した一代目は昨日(さくじつ)破損。今使っているのは二代目。同じ素材を使い同じ工程を経て生まれた、武器アイテム釣竿カテゴリーの梨の木の枝の釣竿。


朝から釣り糸ならぬ植物の蔓を湖面に垂らし、釣れる釣れぬと考えもせずに、ボケッとダラッと湖の近くで(くつろ)いでいる。


昨日は本体(木の私)のステータスを確認してから、スイーツ作りで出たみかんの種を植え水やりをし、のんびり釣りを行った。

最初に植えた欠けたみかんの種はまだ芽を出していない。当たり前だが、植えてからそれほど日が経っていないので。


そしてこれが、本体(木の私)のステータス。



=====================

名前︰ヴェステル

年齢︰0歳3ヶ月

種族︰腐血樹(くされぢじゅ)

メイン職業(ジョブ)︰見習い料理人

サブ職業(ジョブ)︰見習い魔法師

レベル︰15

HP(体力)︰69/69

MP(魔力)︰69/69

STR(筋力)︰38

VIT(耐久力)︰39

AGI(俊敏さ)︰45

DEX(器用さ)︰42

LUK(幸運)︰48


〈魔法〉

・鑑定

・ミストウォーターLv.1

・念力

〈種属特性スキル〉

・分体作成

腐血樹粉(くされぢじゅふん)Lv.2


〈装備欄〉

称号︰残忍で残酷な勝利

=====================



予想通りレベルは3つ上がり15。それ以外に変わったことはなし。

ただ、面白いことが一つ判明している。

ちょっと考えれば分かることなのだが、本体(木の私)の枝に剣を立て掛けたりアクセサリーを付けたりすると、分体(妖精の私)みたいにステータスに補正がかかるみたいで⋯。要は、木の状態でも強くなれることが分かった。


などと言いつつ、今のところ本体(木の私)をアクセサリー等で装飾するつもりはない。

なぜかって?そりゃ確かに付ければ強くなることは事実ですよ?

でもちょっと考えてみてほしいんだけど、根元に剣や防具が立て掛けられ、枝に服が巻かれたり吊るされていて、アクセサリーで彩られた木。そんなものが存在していたらどうなると思います?


大抵のプレイヤーやNPCは罠かもしれないと近寄りもしないでしょうが、一部の者はわーいやったーお宝だーっと、寄って(たか)って根こそぎ持っていきますよ。

森の中で飾り立てられた木なんて目立つしすぐに見つかります。命の危険が高まります。

ここの隠しエリアに辿(たど)り着ける者は少ないかもしれませんが、運良く到達できた者からすれば、金銀財宝宝の()に見えるでしょうね。


ですので、やるとしたら妖精の森で戦闘が起こった時。不測の事態でもなければ装飾したりすることはありません。



昨日はそんなこんなをしましたが、今日は水やりをし、釣竿を作ってからの釣り。

自分のためだけに使える時間がたくさんあるからこその贅沢(ぜいたく)な消費。


「今日の釣りはこのくらいにしようかな」


椅子(いす)(ごと)く背中を預けていたゴブリンのぬいぐるみから背を離し立ち上がる。

デフォルメされても可愛いとは言い(がた)い緑色モンスターのぬいぐるみ。宿屋〈(かわず)(そう)〉の娯楽施設にあるクレーンゲームの景品だ。


楽しみにしていたのに、起きるのが遅かったがためにやる時間がなかったクレーンゲーム。

妖精の森に帰る前に立ち寄って、一回20マニーのクレーンゲームを13回チャレンジ。欲しかったものとは違うけど、第1生時には見かけなかったレアものと言っても良い景品をゲットした。


このゴブリン君は私の三倍の体積を持っている。しかし、所有している魔法の鞄(マジックバッグ)入り口(開口部)はそれよりも狭く入れられない。

無理やりねじ込むことはできるけど、魔法の鞄(マジックバッグ)が裂けて壊れでもしたら大変なので、念力で(つか)んで人外2人仲良く夜間飛行をした。


噂で聞いた話だが、あるプレイヤーがベッドを購入して魔法の袋(マジックサック)へ入れようとしたら、魔法の袋(マジックサック)が大きく裂けて爆発を起こし死亡したとかなんとか。

なんでも、魔法の袋(マジックサック)にかけられた闇魔法が形を維持できなくなって暴発、爆発を起こすらしい。


製作方法が同じであろう魔法の鞄(マジックバッグ)がそうなってもおかしくはない。用心に越したことなし。

問題ないのであれば、入るサイズになるまで念力で圧縮するんだけどね。


ちなみに、〈(かわず)(そう)〉のホールや娯楽施設等の一部の場所は無料開放されています。常識の範囲内で利用が可能。







釣果ゼロ(ボウズ)でした」


「ザンネンダッタネ」


ぬいぐるみを持って本体(木の私)に戻り、ナブラ君と会話。

一日目に6匹釣れているし、絶対取るぞ!って感じではやっていないので、たとえ釣れなかったとしても問題はない。

自然だもの、釣れない日もあるさ。


「仕方ありません。そういう日もあります」


「ツレナカッタブン、イイコトアルヨ」


「そうだといいですねぇ」


(はげ)ましの言葉に返事をすると、前方から(まばゆ)い光。


「マタダ」


「輝いてますね」


「コレマブシイヨ」


手庇(てびさし)をし、目を細める。

正面の彼が(まと)うのは白い光。その地面には魔法陣みたいな円形の何か。

瞬間的、ほんの(わず)かな時間、彼は体を光らせる。


前に一回あった、敵襲かと思ったあれ。

昨日も二回体が発光していたが、それ以外に何もなく被害もないため、攻撃ではないのだと一応の納得をした。

本人に聞いても特に体に異常はないらしいし。


「ソレカシテ」


彼は一瞬現れたそれに(まぶ)しいとだけ答え、興味を別のものに移す。

光の正体が何なのか分かっていないのにも関わらず、この関心のなさ、興味のなさ。

もしかして本当はこれが何か分かってて、その上でこの対応をしている⋯?

⋯⋯いや、そんなわけないか。


「いいですよ」


ナブラ君の近くに飛んでゴブリンのぬいぐるみを渡す。

彼は手である枝をウネウネさせ器用に掴みぬいぐるみに巻き付けると、感触を確かめるようにギュムギュム締め付けたり緩めたり楽しそうに触る。

綿の感触が好きなのか、見た目が好きなのか、ぬいぐるみという物自体が好きなのか。こんななりでも私と同じ0歳3ヶ月の子供。気になったものは触らずにはいられないお年頃です。


ホラーな見た目、しかして怖さとは程遠い、むしろ可愛いとさえ思えてくる言動。二つが合わさった彼は、ただ見た目が怖いだけの心優しいモンスター。

ここで暮らす仲間であるから、そういう対応をしてくれているだけかもしれないけど。

仲間でもない知らない人からすれば、殺戮(さつりく)マシーンのような化け物としてしか目に映らないのかもしれない。


だってナブラ君はイベントモンスター。

ハチミツさんこと、NPCセルンの絆イベントの最後に登場する存在。ボスといっても良い。

クエスト内容は恐らく、彼の下にある(眠る)セルンさんの骨を取り返すとかなんとかいうやつだと思う。以前にもそう思ったが、それ以外に彼を倒す理由が見つからないから多分そう。


会ったことも倒したこともない、ネットで流れていた写真と少しの情報から推測(すいそく)したことなので、交渉とかでクリアするタイプのものの可能性もあるが。


「⋯って、そうか。光の正体ってもしやイベント関連?」


「ドウカシタ?」


ナブラ君がぬいぐるみを持ちながらこちらに顔を向ける。ギュムギュムは継続中。


「あの光の正体が分かったかもしれません。もしかしたらの話ですが、絆」


そこまで言いかけて言葉を止める。

絆イベントがどうだのと話したところで伝わるのだろうかと思ってしまった。そのまま伝えても伝わる気がしない。

てか本当にそうなんだろうか。本当にイベント関連のあれなんだろうか。

結論を出すには早すぎる気がする。


今のところあれが攻撃ではないことは分かっているが、絆イベントに繋がるものなのかどうかはさっぱり。

無断で行われるそれは善意でもなければ、危害を加えられることもなく悪意も感じ取れない。何が目的か分からない以上、もう少し情報を集めてから結論付けた方が良い。


むしろ決め付けで対策に乗り出した結果、光の正体はイベント関連ではありませんでしたー。なんてことになれば、それまでの全てはただの無駄骨、徒労に終わり、苦労損。


クエストを受けたプレイヤーがいるのか、既に受注して向かっているのか。それも街に行って確かめた方が良いだろう。

一度頭に浮かんでしまったそれを放置しておくことは危険だし、無視できない。

いつ来るともしれぬこの状況では気も休まらん。


「キズナガドウシタノ?」


「あー⋯すみません。一旦忘れてください」


まずはナブラ君が本当に光の正体について何も知らないのかの確認。知らなくても問題はないが、知っていれば足しになり重畳(ちょうじょう)

仮に絆イベント関連だとすれば、助ける私も相手から敵認定されるかもだけど、彼は同族であり仲間である。何か事が起きる前に助けたい。


「ナブラ君、体の発光について何か知っていますか?」


前はサアという答えだったけど、今回はどう答えるのか。


「ワカラナイ。デモ、イッカイダケメヲアケタラベツノトコロニイタコトアルヨ」


「別の所⋯ですか」


「チイサイヒトガタクサンイタヨ」


返ってきた回答は驚くべきもの。

あれ、それって⋯と、自分が使っていなかったがゆえの無意識の思考からの除外パート2の答えが頭に浮かんだところで、遠くから聞こえる何かの音。


「⋯ッ⋯⋯⋯ィっ⋯⋯」


「⋯⋯っ⋯⋯⋯ッッ⋯⋯」


否、声かもしれない。

姿は見えないが、確かに何かが聞こえる。


「⋯⋯ィ"ッ⋯⋯⋯ぃ"ィ"ァ"っ⋯」


「⋯ぁ"ァ"ッ⋯⋯ぉォォっ⋯⋯」


だんだん大きくなる声は、こちらに近づいてきていることを知らせている。


「何でしょうね」


「コワイネ」


前にもこんなことがあったようなないような、変な感じを味わいつつナブラ君と顔を見合せた。

〘家具アイテム︰ゴブリンのぬいぐるみ〙

★★★☆☆

デフォルメされ少し可愛くなったゴブリンのぬいぐるみ。

宿屋〈(かわず)(そう)〉にあるクレーンゲームの景品で、非売品。

綿がギッチリ詰められているが、パツパツにはならず触り心地も抜群。

外に放置するとゴブリンが近寄ってくる。休憩中の仲間だと思うらしい。明らかに小さいのに。

製作者:エルフ族ニルハント


〘装飾ギルド〙

宝石が好き、アクセサリーで自分を飾るのが好き、単純に装飾品を作るのが好きといった者達が入ることが多いギルド。

ギルド内はアクセサリーで(あふ)れ、悪趣味な高級感(ただよ)うギラギラと輝く場所、ひらふわメルヘンな可愛い場所、髑髏(しゃれこうべ)が飾られおどろおどろしい悪魔召喚儀式みたいな場所等がある。

加入条件:宝石を1つ所持していること。


〘職業:見習いアクセサリー職人〙

一次職。宝石やプラスチック、ガラス等様々な素材を使い、身につける装飾品全般を製作する職人。使用する素材に制限はなし。

装飾ギルドに加入すると就くことができる職業。

ネックレスやブレスレット、ピアス、指輪等のアクセサリーを、この職業に就く前よりも上手に作ることができる気がする。

完成したものに効果が付くかどうかは半々の確率、付く効果はそこそこ。

職業にセットしていると、MP(魔力)DEX(器用さ)LUK(幸運)へ僅かなステータス補正がかかります。

就職条件:①宝石を1つ所持していること。②装飾ギルドに入ること。


〘職業:見習い宝石職人〙

一次職。エメラルドやサファイア等の宝石の研磨やカット、彫刻、加工など宝石自体を扱う職人。

装飾ギルドに加入すると就くことができる職業。

この職業に就くと、宝石の加工等をする際に失敗する確率が下がる気がする。

完成したもののレア度が高ければ高いほど、それを使用したアクセサリーに付く効果もより良いものとなる。

宝石以外の素材を加工してアクセサリーに使用しても、上記のようにはならないので注意。

職業にセットしていると、DEX(器用さ)LUK(幸運)へ僅かなステータス補正がかかります。

就職条件:①宝石を1つ所持していること。②装飾ギルドに入ること。


〘職業:見習いジュエリー職人〙

アクセサリー職人派生の職業。ダイヤモンドやルビー等の宝石、ゴールドやプラチナ等の貴金属などを使いジュエリーを制作する職人。

ジュエリーの設計、制作、修理、貴金属の加工、宝石との組み合わせ等を行う。

ジュエリーを作ることに特化した職業で、完成したものに良い効果が70%の確率で付く。

代わりに宝石を使用しないものを製作した場合、効果が付かなくなる。

職業にセットしていると、DEX(器用さ)LUK(幸運)へ僅かなステータス補正がかかります。

就職条件:①アクセサリー職人の職業に就いていること。②宝石を使用したアクセサリーを5種類製作していること。③製作したアクセサリーをギルド職員に見せること。

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