断られ、行き着く先はオーダーメイド。
とお店へ向かったのだが⋯。
「今からネモル⋯は、行けなくはないけど疲れるなぁ⋯」
より良い防具を求めて二軒の鍛冶屋へ行ったところ、一軒目は小さい防具を作る自信がないからと断られ、二軒目は高級路線で舵を切っており、素材持ち込みでも値段が高すぎて手が出ない状態。
一件目のお店は実用的な防具がサンプルとして置かれていたが、二軒目のお店に関しては実用的というより、観賞用といった方が正しい見た目のサンプルや出来上がった防具が置かれていた。ダイヤ等の宝石を複数または単一で散りばめた金色の鎧や、全身クリスタルの甲冑とか。
ちゃんと身を守ってくれるのかどうかは分からないけど、高い値段に見合う見た目はしていた。
マラトスで探してこれだし、もっと広いネモルだと大変。行くなら別日だな。
「妥協して買うのもあれだしね」
そう結論づけた時ある光景が頭にちらついた。
それは前世でこのゲームをプレイしていた時の、フレンド達と酒場で飲み食いした懐かしい記憶。思い出される遠距離攻撃が得意だった彼の着けていた装備。
その蘇りとともにあることに気がつく。
「あれ?別に鎧じゃなくてもいいのでは?」
第1生のプレイ時はずっと鎧しか着ていなかったので、防具といったら鎧という考えでそれ以外は思い浮かばなかったが、よくよく考えれば今は魔法使いみたいなもの。ローブ系や効果の付いた服とかの方が相性が良いはずだ。
前世の習慣というか行動というか考え方というか、そういう意識に染み付いたものはなかなか変わらないらしい。無意識に慣れた思考や行動をしてしまう。
まあ、肉体が変わったからといってすぐにそれらが変わってしまうのは怖いけれど。
「ローブとかってどこに売ってるんだろう⋯」
地図を確認するが、それらしいマークはない。
強いていえばTシャツのマークが描かれたところが怪しいが⋯。
「多分これ普通の服屋だな」
Tシャツ型のローブなんて聞いたことないし。そもそもTシャツだからローブですらない。種類が違う。
魔法や魔術を使用する者達用の防具が売っているお店なら、それらしいマークがあるはず。
つまりこの地図に載っていないということは、マラトスには専門店がない可能性が高いということ。
「一応行ってみるか」
ただもしかしたら服屋に置いてあるかもしれないので、確認のため行ってみることに。
地図を仕舞って町長宅の前、大通りを進む。
「ここらにはないなぁ。広場の先か」
地図で見た服屋の位置を忘れ、辺りを見回しながらの進行。
簡単に引きちぎれる繊細な地図を浮かしながらの飛行は神経を使うから嫌。かといって一つ一つ服屋の場所を覚えていられるかといえばそれも無理。たくさん建物があって分かりにくいから。
なのでゆったり観光気分で店探し。
「⋯⋯ふぅ⋯⋯ふぅ⋯⋯はぁ⋯」
そうして周りに目を向けながら進んでいると、左前方からキィキィという音が聞こえた。同時に車輪の転がる音も耳が拾う。
気の惹かれるままにそちらを見ると、車輪の軋む音を僅かに周囲に響かせながら屋台を引く少女を視界に捉えた。
白のレースリボンで結えられた黒髪巻きツインは、汗をかいたためか少し崩れ頬に数本髪の毛が引っ付いている。
動く度に揺れる髪から覗く耳は、両耳ピアスでバチバチ、チェーンタイプもジャラリ。少なくとも5個ずつは付いているように見えた。
「んーっ⋯はぁ⋯ふいぃ⋯⋯あれ、妖精さん⋯?」
白色レースのリボンとハートのチャームが真ん中にあしらわれたしっかり生地の薄いピンク色のリボンが重なった可愛いリボン。それが胸元に付いたリボンと同じ色の長袖ワンピース。襟と袖の部分だけは白い。
裾からは同じ色のこれまたフリルの付いたショートパンツが見えていた。
というかよく見たら、レザーのリボンやビジュー等の装飾がある黒いヒールの厚底靴を履いている。それを履いて踏ん張れるなんてすごいな。
屋台だけでも重そうなのに、所々に吊り下げられた服はさらに重量を増加させている。
商品だろうか。そう思っていると、視線を感じたのか彼女がこちらに顔を向けてきた。
「不躾に見てしまってすみません。重そうだなとつい」
「あー、なるほどっ。あははっ、めっちゃ重いですよこれ。妖精さん当たりです」
持ち手を左手で掴んだまま、右手で黒色の小さい鞄からハンカチを取り出し汗を拭く、myachil♡さん。
Mから始まり、ハートのマークで終わる。頭の上に浮かぶ名前に見覚えがあるようなないような⋯。
「どこかでお会いしませんでしたか?」
「んー、多分ないと思いますけど⋯。どこかですれ違ったとかですかね?」
すれ違う⋯すれ違う?⋯あ、すれ違うじゃないけど思い出した。ネモルの料理ギルドでミキサーの組み立てを手伝ってくれた方が同じような名前をしていました。
名前は見覚えがある気がしたが、顔に見覚えはない。会ったことがないというのならば、きっと人違いということであろう。
「すみません、人違いでした」
「やってる人多いですし、似てる人もいますよね。お気になさらず」
そういうこともありますよねと彼女は頷く。
「遅ればせながら、私の名前はヴェステル。妖精族です」
「わたしはmyachil♡。ハートは読まなくて大丈夫です」
「初めまして」
「はじめましてー」
差し出した私の手をmyachil♡さんが親指と人差し指で掴み握手。
「myachil♡さんはお店をやられてるんですか?屋台をお持ちのようですし」
彼女が引いていた屋台の屋根に取り付けられた看板には、〈ぱる・ぱぴよん〉という店名と思われる文字。意味はさっぱりだが、カラフルで可愛らしい蝶の絵も描かれている。
「はい、最近始めたんです。この先の広場で売ってます。全然売れないんですけどね」
「そちらに掛かっているのも売り物ですか?」
少ししょぼんとしたmyachil♡さんに質問。屋台に吊るされているのは、彼女が着ている服と似た系統のもの。
普通の服もあるが、違和感がないように要所要所に鉄で補強を入れた戦闘用と思われる服も吊るされている。
「そうです。自分で作って売ってるんですけど、他の方のものよりレア度が低いからか手に取ってもらえなくて」
「ん?ご自身で作られているのですか?」
「着たいものがなかなか見つからなかったので作りました」
マラトスでは無理かもと半ば諦めムードで服屋に行き防具を探そうと思っていたけど、これはいい巡り合わせなのではなかろうか。
もしかしたらがあるかもしれない。
「あのー、myachil♡さん」
「?はい」
「小さい防具とか服って作れますか⋯?」
「小さいサイズのですか?できなくはないと思いますけど⋯もしかしてヴェステルさん用のです?」
「はい。かなり小さいものになるんですが、可能でしょうか」
「大丈夫ですよ。オーダーメイドってやつですね。初めてです。小さいのは作ったことないですけど、それでも良ければお作りします」
人間サイズのものしか作っていない人からすれば、大きすぎるものや小さすぎるものは作り方が違うから大変。まして作ったことがない人であれば初めては緊張し躊躇するもの。
挑戦なくして成功なしとはいうが、チャレンジしなくても成功しているのならわざわざ他に手を出さなくてもな。となるのも分からなくもない。断るお店の考えも理解できる。
それ故にオーダーメイドを受けてくれるという彼女の言葉が嬉しい。失敗した分の料金も払うので、是非製作をお願いしたい。
「良かったぁ⋯よろしくお願いします。他のお店では断られてしまって」
「小さいと難しいからですかね?」
「多分そうだと思います」
〘鍛冶ギルド〙
武器や防具、生活用品、農具等を製造する者達が入るギルド。
ものづくりが好きな人達が集まるため、意見交換などでいつも賑やか。夢あるものの実現を目指して日々コツコツ製作中。
加入条件:鍛冶道具を1つ所持していること。
〘職業:見習い鍛冶職人〙
一次職。鍛冶ギルドに加入すると就くことができる職業。
武器や防具、生活用品、農具等をこの職業に就く前よりも上手に作ることができる気がする。
完成したものに効果が付くかどうかは半々の確率、付く効果はそこそこ。
職業にセットしていると、HPとSTRとVITへ僅かなステータス補正がかかります。
就職条件:①鍛冶道具を1つ所持していること。②鍛冶ギルドに入ること。
〘職業:見習い武器職人〙
鍛冶職人派生の職業。武器を作ることに特化した職業で、完成したものに良い効果が70%の確率で付く。
代わりに武器以外のものを製作しても効果は付かない。
職業にセットしていると、HPとSTRへ僅かなステータス補正がかかります。
就職条件:①鍛冶職人の職業に就いていること。②武器を5種類製作していること。③製作した武器をギルド職員に見せ、適性試験をクリアすること。
〘職業:見習い防具職人〙
鍛冶職人派生の職業。防具を作ることに特化した職業で、完成したものに良い効果が70%の確率で付く。
代わりに防具以外のものを製作しても効果は付かない。
職業にセットしていると、HPとVITへ僅かなステータス補正がかかります。
就職条件:①鍛冶職人の職業に就いていること。②防具を3種類製作していること。③製作した防具をギルド職員に見せ、適性試験をクリアすること。
〘職業:見習い武具職人〙
武器職人・防具職人派生の職業。
武器と防具を作ることに特化した職業で、完成したものに良い効果が85%の確率で付く。
代わりに武器と防具以外のものを製作しても効果が付かないどころか、マイナスの効果が付与される。
職業にセットしていると、HPとSTRとVITへ僅かなステータス補正がかかります。
就職条件:①武器職人・防具職人の職業に就いていること。②レア度3の武器を5つ、レア度3の防具を5つ製作していること。③製作した武器と防具をギルド職員に見せること。




