第五話 復活の予感
1950年6月25日。世界に激震が走った。北朝鮮軍が宣戦布告なしで事実上の国境となっていた38度線を越境したのだ。韓国軍はアメリカ流と日本流が混じっており、また装備の中心は未だ旧日本軍の九九式小銃であり、米韓軍事協定により重火器はほぼなく、戦車は1輌もなく、空軍もほとんど存在しなかった。しかし、北朝鮮軍はソ連流に軍が統一していて、T-34などの戦車も多数配備されており、II-10などの空軍もある程度は充実していた。
南北のパワーバランスの差は歴然で、韓国軍はたちまち敗走。3日後には首都であるソウルが陥落した。韓国軍を支援するためにアメリカ軍や多国籍軍が派兵されたが、肝心のアメリカ陸軍の合計兵数は約六十万人と第二次世界大戦の時と比べると半分ほどにまで減っており、また資金不足により砲弾など諸々の物資などが不足しがちであった。
北朝鮮軍の進撃をなんとか釜山で抑えることに成功したアメリカ軍は、反抗作戦として9月6日に仁川上陸作戦を行ったが、当時の日本はスパイ天国(今もスパイ取締法はない)だったため、情報は北朝鮮側に漏れており、上陸したアメリカ海兵隊は、機関銃の弾幕に死体の山となっていった。ここで1万人ほどを殲滅に成功した北朝鮮軍はより一層釜山への攻勢を強め、韓国軍の敗北がいよいよ濃厚になってくると、島根県に韓国の亡命政府を作るかという議論も出たが、日本はそれをあり得ないと一蹴した。
そして、10月2日。ついに釜山が陥落。韓国政府の首脳らは東京へ亡命した。
朝鮮戦争の結果はただ韓国の敗北というだけではない。朝鮮半島全土が赤色に染まったことで、日本はまだGHQの占領下であり、国防に関しては全てアメリカ軍が担っているのにも関わらず、対共産主義の最前線となってしまったのである。
だが、これは好機でもあるのだ。そう、皇国が蘇る好機なのだ。
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