第三話 面接
1949年。町では焼け跡がほとんどなくなり、風鈴の音が心地よく響く夏に、私は新聞社の面接に向かった。新聞社に着くと、自分以外にも多くの若者がいた。額の汗をハンカチで拭っていると、茶色のジャケットを羽織った40代ほどの男が現れ、面接が始まった。
「あなたはなぜ新聞記者を目指しましたか?」
「この国のジャーナリズムに大きな不信感を抱いたからです」
「ほう?」
男は怪訝そうな顔になった。
「一体、不信感とは?」
「マスコミの仕事はただ大本営発表を伝え続けることではありません。五・一五事件の時、新聞はどう主張しましたか?ただの軍事クーデターを起こした反逆者を英雄達と褒め称え、彼らの減刑を主張した。狂ってる。その結果、二・二六事件の後の廣田内閣で軍部大臣現役武官制が復活した。シビリアンコントロールの破壊へ導いたのはマスコミではないのですか?そして今は、戦前の日本は悪逆なる侵略者だったと書いていますよね?そして隅に小さく連合国軍司令部提供と書かれている。今の新聞は、ただ大本営のプロパガンダからGHQのプロパガンダに変わっただけじゃないですか。去年のアメリカ大統領選挙だってマッカーサーが当選するような記事しかなかったのに、蓋を開けたら結果がああいうのですからね。そりゃあ、不信感も抱くものかと」
「君は私たちマスメディアを愚弄しているのかね?」
「……僕は事実に基づいた自分の意見を述べたまでです。事実を認められない人にジャーナリストは務まりません」
「……ハッハッハ」
「え?」
「君は面白いね。明日からここに来てくれ」
「え???」
こうしてめでたく、私は新聞記者になれたのでありました。
評価、感想よろしくお願いします!
ブックマークをしていただけるとすぐにまたこの小説を読むことができます!