第九話 おでん屋
「戦争は戦争を養う」 シラー
〜新聞社〜
「先輩、仕事終わりましたか?」
「ちょうど今終わって帰るとこー」
「もしよかったら、ちょっと飲みに行きませんか?」
「いいねー、最近のビールはすごい良質らしいぜー」
「好景気で新しく飲み屋とかもバンバン出来てますよね」
〜数分後、とある路地〜
「おっ、おでんの屋台だ、美味そ」
先輩が言った。
今日みたいに秋なのにかなり寒い日は、おでんにはもってこいだ。
「おでん、好きなんですか?」
「おでんとか蕎麦とかはさ、歳をとると美味しく感じるもんなんだよ」
「そういうもんなんですかねー」
「ビール2つください」
先輩が注文してくれた。
二つ隣の席にはだいぶ酔っ払っていそうな男が一人で焼酎を飲んでいた。
「なあ、おっちゃん。結局さ、アメリカに戦争を吹っかけたのはバカだったんだよ」
「あー、そういうもんですかね」
既に男の顔はかなり赤く、店のおっちゃんは酔っ払いに絡まれてやや面倒そうだ。
「生産力があんなに違う相手に宣戦布告するなんて愚の骨頂なんだ。全く当時の軍のトップ共は一体何を考えてたんだか」
「へいへい」
先輩がビールをぐびっと飲みながらぼそっと話しかけてくる。
「酔っ払いに好き勝手言わせといていいのか?」
「いいんですよ」
味がよく染みた大根と卵は、柔らかくとても美味しかった。
先輩とは店で別れ、ふと振り返ると粗方復興した東京の街におでんの煙が立ち昇っていった。
今回は割とほのぼのした話でした。
次回からすごいことが起きるかもしれませんとだけ言っておきます。
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